2009年09月16日
高血圧を放置していると「物忘れ」が増える 米研究

高血圧を放置していると、動脈硬化が進行しやすくなり、心臓病や脳卒中を発症する危険が高くなる。それに加えて、高血圧のある中高年では、記憶障害や認知障害も増える傾向があるという研究が、米国で発表された。研究者らは「こうした病気を防ぐために高血圧の治療は重要だ」と強調している。
高血圧の治療で認知障害を防げる可能性
研究は、地域住民を対象に脳卒中の危険因子を調べる目的で行っているコホート試験「REGARDS研究」に参加している、脳卒中の既往歴のない45歳以上の中高年約20万人を対象に行われた。参加者に記憶テストを行い、収縮期血圧 140mmHg/拡張期血圧 90mmHg以上であるか、高血圧の治療を受けている場合に高血圧と判定した。
その結果、参加者のうち9844人(49.6%)は高血圧の薬物治療を受けており、1505人(7.6%)に認識障害がみらることが分かった。拡張期血圧(最低血圧)が高値である人では、正常値の人に比べ、認知障害や記憶や思考能力に関する障害が認められる割合が高くなる傾向があることが示された。
最低血圧が10mmHg上がるごとに、記憶障害の割合が7%高くなった。年齢、喫煙習慣、運動レベル、学歴、糖尿病、高コレステロール血症といった認識能力に影響する可能性のある因子の影響を調整しても、この傾向は変わらなかった。
研究者らは、高血圧と認知障害の関連を解明するためにより多くの研究が必要としながらも、拡張期血圧が高い状態であると、脳の細動脈がダメージを受けやすくなると指摘している。「高血圧を予防し治療することで、認知障害を防げる可能性が強い」と、アラバマ大学バーミンガム校のGeorgios Tsivgoulis医師は話す。
米国国立衛生研究所(NIH)では、積極的な血圧コントロールにより認識低下などの深刻な健康障害を減らせるかを確かめるために、大規模な試験を準備しているという。
この研究は8月25日に発行された米神経学会誌「Neurology」に発表された。
脳卒中の予防がもたらす恩恵
REGARDS研究では、脳卒中が起こる危険を予測するために開発された「フラミンガム脳卒中リスク指数(FSRF)」を使い、認知機能の障害との関連も調べられた。その結果、今後10年で脳卒中をおこす危険の高い人では、危険の少ない人に比べ、認知障害や記憶障害の割合がほぼ2倍に高くなるという結果になった。
米国脳卒中学会によると脳卒中の危険因子は大きく2つある。ひとつは加齢(歳をとること)、遺伝、性別、脳卒中の既往歴といった、改善できる余地の少ないものだ。しかし、もうひとつは不健康な食事、運動不足、肥満や過体重、喫煙習慣といった生活習慣や、高血圧、糖尿病(高血糖)、高コレステロールなど、治療や対策をしていれば改善できるものだ。
上半身肥満(内臓脂肪型肥満)に高血圧、高血糖、高中性脂肪、低HDLコレステロールといった要因が加わるメタボリックシンドロームも、脳卒中の危険を高めることが知られている。メタボリックシンドロームへの対策も重要となる。
High Blood Pressure Linked to Memory Problems in Middle Age(米国神経学会リリース)Stroke risk factors may signal faster cognitive decline in elderly(米国脳卒中学会リリース)
Abstract
(Terahata)