2011年03月09日
骨粗鬆症スクリーニングの新しいガイドライン 米国予防医療作業部会
キーワード: 二少(少食・少酒) 「無煙」喫煙は万病の元 「少酒」お酒はほどほどに 三多(多動・多休・多接)

米国人を対象とした骨粗鬆症のスクリーニング検査について、米保健厚生省(HHS)の予防医療作業部会(USPSTF)が新しいガイドラインと声明を1月に発表した。対象を骨粗鬆症の危険性の高い65歳以上の女性だけでなく、喫煙や飲酒などの危険因子のあるより若い女性にも拡大した。
骨粗鬆症の危険要因は「加齢」「低体重」「喫煙」「飲酒」
骨粗鬆症は骨組織がスカスカになり弱くなって骨折しやすくなる病気。加齢にともない患者数は増えていき、一般的には男性より女性でより多くみられ、特に白人で他の人種に比べ頻度が高い。
声明では、2012年までに50歳以上の米国人のうち、約1200万人が骨粗鬆症になると予測している。閉経後女性は生涯のうちに、半数以上は骨粗鬆症に関連する骨折が発生し、15%が股関節骨折を経験するという。
骨粗鬆症性の骨折(特に股関節部骨折)は、慢性的な疼痛をともない、生活の質(QOL)の低下や、死亡率の上昇を引き起こす。股関節部骨折は男性では女性ほど多くないが、股関節部骨折を起こした男性のは3分の1は1年以内に死亡するという報告もあり、骨折の防止に向けた対策は重要だ。
ガイドラインでは、骨粗鬆症性のスクリーニングの対象を、65歳以上の全女性と骨折リスクの高い閉経後女性に拡大した。根底にあるエビデンスについて医師が検討するだけでなく、患者の状況に応じて決定することを提案している。
この勧告はUSPSTFの2002年のガイドラインを改訂したもの。医学誌「Annals of Internal Medicine」オンライン版に1月18日付で掲載された。
骨折の危険性は一般的に、年齢が高くなるにつれ増していく。それ以外にも「“低体重(低BMI)”、“喫煙している”、“毎日の飲酒”、“両親に骨折の既往がある”といった生活習慣が骨粗鬆症の危険因子となり、骨折のリスクを高める。最近の研究では、60歳未満の女性が治療をうけることで骨折の減少につながることも示唆されている」とUSPSTF議長のNed Calonge博士は話す。
骨粗鬆症の検査・治療が効果的
男性については、骨粗鬆症の検査の適切な時期について、今回は十分なエビデンスを得られなかった。また、骨粗鬆症の治療は効果があり、治療の開始してから18〜24ヵ月以内に効果を得られることが示された。そのためガイドラインでは、特定の年齢で骨粗鬆症のスクリーニングを制限するべきではないとしている。
「米国で65歳以上の人口は増加している。骨粗鬆症のスクリーニングは、骨折の危険が高く治療により予防を期待できる女性でとりわけ重要だが、それ以外の危険因子のある患者についても、臨床医は骨粗鬆症のスクリーニングについて知っておくべきだ」とCalonge博士は話す。
骨粗鬆症のスクリーニングには骨密度の測定が含まれ、米国でも医療保険が適用される。USPSTFによると、股関節と腰椎の骨にX線をあてて吸収率から骨量(骨密度)を測定する「二重エネルギーX線吸収(DXA)法」検査と、踵の定量的超音波検査がスクリーニングとして一般的に使用される検査であり、最近ではDXA検査のみで診断されることが多い。
骨粗鬆症による骨折の予防治療には、十分なカルシウムの摂取、ビタミンDの摂取、骨量を増やすために体重を負荷して行う運動、薬物療法があるという。骨折の危険性の高い閉経後女性では、薬物治療(ビスホスホネート、副甲状腺ホルモン、ラロキシフェンやエストロゲン)に効果があることが示された。
Routine Osteoporosis Screening Recommended for All Women over Age 65(米国保健厚生省、1月17日)Screening for Osteoporosis(米国予防医療作業部会)
Screening for Osteoporosis: U.S. Preventive Services Task Force Recommendation Statement
Annals of Internal Medicine, 2011;154:356-364
(Terahata)