一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病とその予防
主な生活習慣病
ニュース

高血圧の原因遺伝子:東アジア人共通の遺伝子を同定

キーワード: 高血圧 糖尿病 動脈硬化 心筋梗塞/狭心症 「少酒」お酒はほどほどに 健診・保健指導

 日本人を含む東アジア人に共通する高血圧の原因となる遺伝子を同定したと、国立国際医療研究センターの研究グループらが発表した。東アジアの5万人以上を対象とした国際共同研究による、大規模全ゲノム関連解析の成果。
遺伝と生活習慣がからまり高血圧症を発症
 高血圧は日本をはじめ、世界でもっとも多くみられる疾患で、世界の成人の4人に1人が高血圧とみられている。高血圧は自覚症状をあまりともなわないが、脳卒中や心筋梗塞といった心血管症や動脈硬化症の原因となる。腎臓にも負担がかかるので腎臓病の原因にもなる。

 高血圧の発症に、食生活、運動習慣、嗜好品、ストレスなどの生活習慣が影響する。食事や運動を中心とした生活習慣改善が効果的だが、全ての人が実行するのは簡単ではない。また、高血圧症の薬物療法も行われており、効果的な降圧薬が治療に使われているが、多くの患者で十分な血圧コントロールを得られていない現状がある。

 全体の9割以上が原因不明な「本態性高血圧症」で、多くの患者で遺伝が高血圧の発症に関わっているとみられている。これまでの研究で、高血圧の原因となる遺伝子(責任遺伝子)は数多くみつかっているが、さまざまな生活習慣が複雑にからみあい発症するので、親から受け継ぐ“高血圧体質”の基盤となる責任遺伝子についてはよく分かっていない。

 高血圧の責任遺伝子が分かれば、1人ひとりに合わせた療養指導や治療を行えるようになると考えられている。そのため、責任遺伝子を同定しようとする研究は世界中で行われている。

東アジア人のゲノムを解析 高血圧に関連する13種類を発見
 今回、研究チームは、東アジア人に特有の遺伝子をみつけるため、日本人、韓国人、中国人を対象とした多施設国際共同研究を開始した。これは、高血圧、糖尿病、肥満などのなりやすさを遺伝子レベルで解明するための研究で、日本、韓国、中国、台湾、シンガポールなどの研究チームで構成されている。

 5万人以上の東アジア人の全遺伝情報を解析し、高血圧に関連する13種類の遺伝子を特定した。このうちの5種類は白人ではみつかっていないという。また7種類は東アジア人で統計学的に有意性が確かめられた。残りの1種類は酒に強いか弱いかを決める遺伝子で、飲酒後に生じる悪酔いの原因物質アセトアルデヒドを分解する酵素を作る「ALDH2」だった。

 東アジア人で遺伝性がもっとも強いのは、ALDH2の活性を規定する遺伝子多型であることも分かった。日本人では4割近くが不活性型で、活性型の人は不活性型と比べて、血圧が上昇する傾向があり、血糖、BMI(体格指数)も上昇しやすいことが示された。

 これだけだと心血管症のリスクが高まるようにみえるが、一方で活性型では、LDL(悪玉)コレステロールの低下と、HDL(善玉)コレステロールの増加傾向が示され、総合的には動脈硬化が抑えられリスク低減効果の方が大きいという。

 ALDH2多型の遺伝的効果は、飲酒によって強まる。不活性型の多い日本人ではアルコールの飲みすぎが動脈硬化の進展につながりやすいとみられる。

 研究者は「両親からひとつずつ受け継いだALDH2の対立遺伝子がともに活性型の人は、体質的に飲酒が可能で、適量レベルであれば、血圧上昇効果があっても心筋梗塞に対して予防的効果がある。ただし、実際には、血圧だけでもALDH2以外に数多くの遺伝子が関わるので、総合効果の点で“遺伝要因と生活習慣(飲酒)、心血管病の関わり”をよくみたうえで、療養指導などを行う必要がある」と説明している。

 この研究は、国立国際医療研究センター研究所の加藤規弘・遺伝子診断治療開発研究部長らの研究グループによるもので、英国の科学誌「Nature Genetics」オンライン版に5月16日付で発表された。

 今回の研究成果は主に次の3点――

  1. 東アジア人を対象に、高血圧に関する大規模全ゲノム関連解析を行い、新規のもの5つを含む計13の遺伝子座を同定した。
  2. 欧州人と東アジア人の間で共通する部分も多いが、人種に特異的な遺伝子もある。そのうちの一部は、環境への適応のために生じた自然選択によるものとみられる。
  3. 遺伝子と環境の間に相互作用があるとみられる。この「遺伝-環境相互作用」に関わる明確な事例が示され、患者1人ひとりの生活習慣に影響されながら、心血管病の発症リスクは複合的に規定されることが実証された。

初めて東アジア人の高血圧関連遺伝子を同定(国立国際医療研究センター 2011年5月16日)
Meta-analysis of genome-wide association studies identifies common variants associated with blood pressure variation in east Asians
Nature Genetics, 2011 DOI:doi:10.1038/ng.834

健康を脅かす上位リスクは高血圧、喫煙、糖尿病 WHO報告(糖尿病NET)

[Terahata]

関連トピック

疾患 ▶ 糖尿病

2021年01月28日
【健やか21】「COVID-19 ワクチン接種を考慮する妊婦さんならびに妊娠を希望する⽅へ 」の提言(⽇本産婦⼈科感染症学会・⽇本産科婦⼈科学会)
2021年01月15日
【新型コロナ】医療現場での感染リスクと予防効果を解明 医療者への感染を防ぐために 健診・保健指導にも応用
2021年01月15日
【Withコロナ時代】運動・スポーツを通じて健康二次被害を防ぐポイントは? スポーツ庁がガイドラインを公表
2021年01月15日
日本人に「低炭水化物ダイエット」は効果がある? 肥満やメタボの食事療法としては勧められる?
2021年01月15日
「肥満」の原因は自分だけのものではない 子供時代の虐待体験も成人後の肥満に影響 2万人を調査

疾患 ▶ 高血圧

2021年01月15日
【新型コロナ】医療現場での感染リスクと予防効果を解明 医療者への感染を防ぐために 健診・保健指導にも応用
2021年01月15日
【Withコロナ時代】運動・スポーツを通じて健康二次被害を防ぐポイントは? スポーツ庁がガイドラインを公表
2020年12月24日
【新型コロナ】年末年始は「真剣勝負の3週間」 みんなで危機感を共有しコロナ収束の突破口に
2020年12月24日
【新型コロナ】医療機関の受診控えで健康リスクが上昇 日本医師会は安心マークを発行「感染防止を徹底しているから、安心して来て」
2020年12月14日
【新型コロナ】新型コロナとインフルの同時流行に備えて 発熱したら電話で「かかりつけ医」に相談 上手な医療のかかり方プロジェクト

テーマ ▶ 健診・保健指導

2021年01月22日
【健やか21】日本医学会連合が新型コロナ「重症化リスクをお持ちの皆様へ」注意喚起
2021年01月15日
【健やか21】「子どもの食育を考えるフォーラム」がWeb開催(日本小児医療保健協議会)
2020年12月18日
【健やか21】母子手帳の有用性が示唆―自閉スペクトラム症などの早期発見に(弘前大学)
2020年10月30日
【健やか21】4人に1人は食習慣・運動習慣を「改善するつもりはない」
2020年10月23日
【健やか21】「コロナ禍における自殺の動向に関する分析(緊急レポート)」の報告(中間報告)について(いのち支える自殺対策推進センター)

疾患 ▶ 心筋梗塞/狭心症

2020年12月24日
【新型コロナ】年末年始は「真剣勝負の3週間」 みんなで危機感を共有しコロナ収束の突破口に
2020年12月24日
【新型コロナ】医療機関の受診控えで健康リスクが上昇 日本医師会は安心マークを発行「感染防止を徹底しているから、安心して来て」
2020年12月14日
【新型コロナ】新型コロナとインフルの同時流行に備えて 発熱したら電話で「かかりつけ医」に相談 上手な医療のかかり方プロジェクト
2020年12月14日
【新型コロナ】ワクチンがついに実用化 海外では有効性の高いワクチンが利用可能に ワクチン接種には課題も
2020年11月26日
納豆などの「発酵性大豆食品」が循環器疾患や脳卒中のリスクを低下 日本人8万人を調査

疾患 ▶ 動脈硬化

2020年12月14日
肥満や糖尿病に「コーヒー・緑茶・アルコール」は良い・悪い? どれくらい飲むと健康効果を期待できる?
2020年11月26日
納豆などの「発酵性大豆食品」が循環器疾患や脳卒中のリスクを低下 日本人8万人を調査
2020年10月26日
毎日の歩数が多いほど死亡リスクは低下 1日の歩数を1000歩増やすだけでも効果
2020年10月26日
肥満やメタボは認知症リスクを上昇 体重コントロールで脳機能を改善 食事と運動で対策
2020年09月11日
「緑茶」に肥満・心臓病・脳卒中・認知症の予防効果 お茶を飲むシンプルな生活スタイル

一無・二少・三多 ▶ 「少酒」お酒はほどほどに

2021年01月15日
女性の7割が月経前に身体不調を経験 4人に1人は仕事や家事に支障が 「妊娠前(プレコンセプション)ケア」が必要 女性ビッグデータ調査
2021年01月15日
働く人がうつ病になると 「就労の継続への不安」「新型コロナは心身にストレス」 うつ病患者対象の全国調査
2020年12月18日
【新型コロナ】日本のワクチン開発はここまで進んでいる 日常での感染防止をしっかり続ける必要が
2020年12月14日
【新型コロナ】がん検診の受診者が減少 このままだと死亡リスクが上昇 コロナ下でも「がん検診は必要」
2020年12月14日
肥満や糖尿病に「コーヒー・緑茶・アルコール」は良い・悪い? どれくらい飲むと健康効果を期待できる?
全国生活習慣病予防月間
明治PA3
新着ニュース

トピックス&オピニオン
新型コロナウイルス関連

Dr.純子のメディカルサロン こころがきれいになる医学
保健指導リソースガイド
国際糖尿病支援基金
糖尿病ネットワーク 患者さん・医療スタッフのための糖尿病の総合情報サイト
糖尿病リソースガイド 医師・医療スタッフ向け糖尿病関連製品の情報サイト
日本健康運動研究所 健康づくりに役立つ情報満載。運動理論から基礎、応用を詳細に解説
セルフメディケーション・ネット セルフメディケーションの基礎から薬の知識までさまざまな情報を提供
日本くすり教育研究所 小・中学校で「くすり教育」を担う指導者をサポート