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マグネシウムと生活習慣病 日本人の食生活はマグネシウム不足

キーワード: 高血圧 脂質異常症(高脂血症) 糖尿病 肥満症/メタボリックシンドローム 三多(多動・多休・多接)

 日本人の生活では、食生活の“半欧米化”によって、マグネシウムの摂取不足が慢性化しています。マグネシウムの不足は、2型糖尿病やメタボリックシンドロームなど生活習慣病の発症と密接な関係があります。東京慈恵会医科大学教授の横田邦信先生に、マグネシウムと生活習慣病の密接な関係についてお伺いしました。
――なぜ糖尿病は戦後、激増したのでしょう?
横田邦信先生
 2型糖尿病の有病率は戦後激増し、現在もその傾向は衰えていません。なぜでしょう? そのヒントになるのが下の図です。
図 わが国における戦後の2型糖尿病有病率と生活環境の推移
わが国における戦後の2型糖尿病有病率と生活環境の推移
 穀物(特にマグネシウムが豊富な大麦・雑穀など)の摂取量が激減した時点と、糖尿病が増え始めた時点が一致することが注目されます。糖尿病の発症要因は脂肪摂取量の増加と運動不足による肥満が定説となっています。

 多くの生活習慣病の病態の根底に、インスリン抵抗性(インスリンの効きが悪い状態)という共通因子があります。何らかの原因で生じたインスリン抵抗性に対して、日本人はもともと農耕民族でインスリン分泌能が欧米人に比べて弱く、インスリン分泌の代償不全を起こし、容易に糖尿病を発症すると考えられます。

――日本人は慢性的なマグネシウムの摂取不足をきたしているとお聞きしましたが、長期にわたるマグネシウムの不足が、2型糖尿病などの生活習慣病のリスクを上昇させているのでしょうか?
横田邦信先生
 インスリン抵抗性の共通因子の成因のひとつに、腹部肥満とは独立してマグネシウム(マグネシウム)の慢性的な摂取不足が大きく関わっていることが近年明らかにになっています。また、マグネシウム摂取不足は糖尿病発症とも深く関連していると考えられます。

 マグネシウム摂取量が少ない群からの糖尿病発症が有意に多いという報告や、マグネシウム摂取量が多いと糖尿病発症リスクが10〜20%減るという報告があります。さらに、マグネシウム摂取量が多いと炎症性マーカ濃度(IL-6、高感度CRP)が低いことが報告され、動脈硬化との関連でも注目されています。

 原因としては、腹部肥満に基づくインスリン抵抗性の他に、慢性的なマグネシウム摂取不足によるインスリン抵抗性がありますが、特に、戦後、マグネシウムの慢性的摂取不足に陥っていることが大きく関わっているとみられます。これが日本人はあまり太っていなくても糖尿病になりやすいことを説明できる“マグネシウム仮説”なのです。

 マグネシウムは神経、筋肉の伝達にも関与しており、不足すると“こむら返り”が起きやすくなります。こむら返りは痛みを伴う筋肉の痙攣のことで、運動時に起こるほか、糖尿病や肥満の患者さんでみられます。血行障害や十分な栄養を補給できなていないことが原因である場合には、マグネシウムを補充すると有効なことが知られています。

図 日本人2型糖尿病発症とMgの関係(マグネシウム仮説:横田)
日本人2型糖尿病発症とマグネシウムの関係
――マグネシウムはどのような働きをしていますか? また、日本人ではマグネシウムはどれくらい不足していますか?
横田邦信先生
 マグネシウムは体に必要なミネラルの一種であり、健康維持に欠かすことのできない必須な栄養素といえます。

 成人では、体内に約20g〜30gが存在し、その60〜65%が骨や歯の構成成分となっており、残りは筋肉や脳・神経にあります。多くの種類の酵素を活性化する働きがあり、細胞内外のミネラルバランスを調整する働きは特に重要です。筋肉の収縮や神経情報の伝達、体温・血圧の調整にも使われています。

 日本人で推奨されているマグネシウムの1日摂取量は30〜49歳の男性で370mgです。一方で、厚生労働省が実施した「平成20年国民健康・栄養調査」によると、マグネシウムの平均摂取量は30〜49歳の男性では243mgとなっています。平均120mg以上のマグネシウムが毎日不足していると推定されます。

――マグネシウム不足の原因は何でしょうか?
横田邦信先生
 日本人のマグネシウム不足の原因として考えられるのは「食生活の“半欧米化”」と「精製塩の過剰摂取」です。

 戦後、日本人の昔からの伝統的な食生活が大きく変化し、特に大麦や雑穀などの全粒穀物の摂取が減りました。逆に高脂肪、高カロリーの摂取が増え、結果としてマグネシウムの摂取量が減少したと考えられます。

 また、日本では1972年に塩田法が廃止されるまでは、精製されていない粗塩(あらじお)が多く使われていました。粗塩にはマグネシウムをはじめとするミネラルが多く含まれます。また、ライフスタイルの変化に伴い、外食やファストフードを利用する習慣が増え、日本人は塩分を摂り過ぎています。塩分の過剰摂取により、体内からのマグネシウムの排泄が増え、マグネシウムはさらに不足気味になりました。

――マグネシウムを十分に摂るためにどうすれば良いのでしょうか?
横田邦信先生
 マグネシウムの不足を防ぐために、日頃の食生活でマグネシウムを多く含む食品を意識して摂る、すなわち伝統的な日本の和の食材を中心とする食生活に改善すると効果的です。

 また、日本人の食卓には食塩を含む食品がたくさんあるため、ついつい食塩を摂りすぎてしまいがちです。普段の食事の塩分を減らし、塩分を控えることを心掛ける必要があります。加えて、運動を習慣的に行うことが、2型糖尿病やメタボリックシンドロームの予防・改善につながります。

 マグネシウムは健康長寿に必須・主要なミネラルです。食生活で意識してマグネシウムを摂るために、私は「そばのひ孫と孫は優しい子かい?納得!」という標語を提唱しています。

マグネシウムが多く含まれる食品
マグネシウムが多く含まれる食品
 また、マグネシウムはストレスが加わると尿中にたくさん排泄され、さらに不足気味になります。上手にストレスをコントロールすることも大切です。

 食事だけからの補充が難しい場合は栄養機能食品(マグネシウム)など健康食品やサプリメントを利用することもひとつの手段です。実際、マグネシウムの補充がインスリン抵抗性を改善して血糖のコントロールを良くし、高血圧、脂質異常症にも大きな効果を発揮することを実証した臨床研究もあります。

 マグネシウムと生活習慣病に関しては、「MAG21研究会」のホームページでも詳しく解説しています。

――本日はいろいろ教えていただき、ありがとうございます。
文献
  1. Lopez-Ridaura R, et al., Diabetes Care 27:134-140, 2004
  2. Larsson SC,et al., J Intern Med 262:208-214, 2007
  3. Song Y, et al., Diabetes Care 27:59-65, 2004
  4. Kim DJ, et al., Diabetes Care 33:2604-2610, 2010
  5. 横田邦信:2型糖尿病発症−インスリン分泌とインスリン抵抗性へのマグネシウムの関与. 分子糖尿病学の進歩−基礎から臨床まで−2006. pp108-116, 金原出版, 東京, 2006
  6. Rodriguez-Moran M, et al., Diabetes Care 26:1147-1152, 2003
  7. Yokota K, et al., J Am Coll Nutr 23:506S-509S, 2004
  8. Guerrero-Romero F, et al., Diabetes Metab 30:253-258, 2004
  9. He K, et al., Circulation 113:1675-1682, 2006

(Terahata)

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