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健診と保健指導のエビデンスを集積 【厚労省研究事業】

キーワード: 高血圧 糖尿病 肥満症/メタボリックシンドローム 脳梗塞/脳出血 COPD(慢性閉塞性肺疾患) 健診・保健指導

 厚生労働省は7月25日に、第64回厚生科学審議会科学技術部会を開催し、2010年度の厚生労働科学研究費補助金の成果に関する評価案を公表した。健診と保健指導に関する大規模な研究も含まれている。

 厚生労働科学研究費補助金の研究事業は、行政政策研究分野、厚生科学基盤研究分野、疾病・障害対策研究分野、健康安全確保総合研究分野の4分野に大別される。

 2010年度は1533課題の研究を実施し、予算額は約472億円だった。このうち、個別の疾病・障害や領域に関する治療や対策を対象とする「疾病・障害対策研究分野」の予算額は293億円(62%)だった。

 集計課題数は「生活習慣病・難治性疾患克服総合」がもっとも多く150件で、学会発表の平均は97.0件、普及・啓発活動の平均は4.6件といずれも最多だった。

 特定健診・特定保健指導に関連する主な研究事業は次の通り――

医療保険者による特定健診・特定保健指導が医療費に及ぼす影響に関する研究
主任研究者:岡山 明(財団法人結核予防会)
230万人の医療費データベースと、60万人の特定健診受診者の医療費を分析できるデータセットを作成。健診受診状況と医療費の関連や、現在治療中の患者の年齢階級別の医療費を分析。高血圧、糖尿病の治療中の患者を、肥満度や運動実施状況別に医療費を比較し、生活習慣と医療費は密接な関連があり、保健指導によって医療費を改善できることをあきらかにした。
[政策科学総合研究(政策科学推進研究)]

肥満関連疾患のアジアと米国における遺伝疫学的検討とその対策に関する研究
主任研究者:川上正舒(自治医科大学)
ベトナムでの肥満関連疾患に対する疫学調査と遺伝子学的検討、食事内容とインクレチン分泌、脂質と総死亡の関連、2型糖尿病での冠動脈疾患の危険因子、高齢者での筋肉量の低下とメタボリックシンドロームとの関連、尿アルブミン排泄量と内臓肥満との関連などを調査。
[地球規模保健課題推進研究(国際医学協力研究)]

健康づくり支援環境の効果的な整備施策および政策目標の設定に関する研究
主任研究者:下光輝一(東京医科大学)
本研究は生活習慣病の予防を、医療機関での臨床ではなく社会・環境面からとらえようとした研究。患者の生活環境に注意を向けることにより、臨床での生活習慣指導の質が改善し、患者の健康行動に関する理解が深まると考えられる。健康づくり支援環境の整備施策および政策目標に関する提言をまとめた。
[循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究]

健康づくりのための休養や睡眠の在り方に関する研究
主任研究者:兼板佳孝(日本大学)
休養と睡眠のあり方を疫学研究の立場から検証、3年間の研究により睡眠障害や休養不足がうつ状態などの精神疾患や生活習慣病などの身体疾患と密接に関連することなどの知見を得た。睡眠障害は心身の疾患の発症を促進し、不眠症の治療は気分状態や生活の質をも改善させることや、睡眠時無呼吸症候群がメタボリックシンドロームと密接に関連することをあきらかにした。
[循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究]

わが国の今後の喫煙対策と受動喫煙対策の方向性とその推進に関する研究
主任研究者:大和 浩(産業医科大学産業生態科学研究所)
受動喫煙防止対策は、喫煙室などを設置する空間分煙ではなく、建物内の全面禁煙が必要であることや、屋外であっても喫煙場所を非喫煙者の動線から離す必要があることをあきらかにし、飲食店などのサービス産業は危険なレベルの受動喫煙で汚染されていることを示した。タクシーや鉄道の全面禁煙化や、大学病院や地方自治体の建物内禁煙化のきっかけとなった。
[循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究]

わが国の成人の喫煙行動及び受動喫煙曝露の実態に関する全国調査
主任研究者:尾崎米厚(鳥取大学)
2度の全国調査を実施し、成人の喫煙行動の特徴と課題をあきらかにし、タバコの値上げの政策評価も実施。タバコの値上げ前後の成人の喫煙行動の変化を調査し、診療や健診で喫煙歴の問診がされていないケースが多く、女性を中心に禁煙の勧めを受けていないこともあきらかにした。
[循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究]

未受診者対策を含めた健診・保健指導を用いた循環器疾患予防のための地域保健クリティカルパスの開発と実践に関する研究
主任研究者:岡村智教(独立行政法人国立循環器病研究センター)
健診未受診者約2万5000人を調査し、未受診の理由(医師受診中37%、自覚症状がなく健康である25%、時間の都合がつかない18%)をあきらかに。「自覚症状がなく健康である」をターゲットとした地域介入プログラムを開発し、複数の市町で健診受診率を上昇させるための地域介入を実施。健診受診者の循環器疾患死亡リスクは、未受診者よりも低いことを確認した。また眼底など詳細な検査項目の内容を頸部超音波検査等に変更しても、未受診者の受診率にはあまり影響しないことも示した。
[循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究]

行動変容理論に基づく効率的かつ効果的な特定保健指導手法の疫学的エビデンスとITを援用した開発
主任研究者:梶尾 裕(独立行政法人国立国際医療研究センター病院)
現在進行中の特定保健指導の問題点を、行動変容理論やIT利用の立場から明らかにして、より有効な指導形態の改善の方向性を示した。さらに、一連の生活習慣改善指導の評価方法の検討と合わせて、行政面において、生活習慣病関連の疾患の予防や治療の手法の均てん化を政策決定する際に、重要かつ有用な情報を提供した。
[循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究]

特定保健指導プログラムの成果を最大化及び最適化する保健指導介入方法に関する研究
主任研究者:今井博久(国立保健医療科学院)
中長期成人に対するメタボリック症候群の保健指導について、全国50万人規模のデータを収集し解析。施策がメタボリック症候群の予備群と該当者に有意な改善の効果があることあきらかにし、効果的な保健指導の内容を定量的に評価。6ヵ月間の保健指導介入により血圧値、血糖値、中性脂肪を臨床的に改善する知見を得た。
[循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究]

大規模コホート共同研究による生活習慣病発症予防データベース構築とその高度利用に関する研究
主任研究者:上島弘嗣(滋賀医科大学)
喫煙と総死亡との詳細な関連を19万人、追跡人年約200万の総死亡データベースから検討、欧文学術論文の発表で評価を得て、日本腎臓病学会会長賞も受賞。喫煙による人口寄与危険割合(PAF)は男性24.6%、女性6.0%、その年間過剰死亡者数は12万1,854人と推定。性・年齢階級別PAFは男性60歳代の47.7%、女性50歳代の12.2%が最高で、高齢者のPAFは70歳代男性15.4% 、女性8.0%、80歳代男性3.5% 、女性1.5%とした。
[循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究]

各種健診データとレセプトデータ等による保健事業の評価に関する研究
主任研究者:水嶋春朔(横浜市立大学大学院)
各種健診データとレセプトデータなどによる保健事業の評価のためのデータ分析手法の開発では、特定健診・特定保健指導事業の枠組みの中で、「特定保健指導」、「それ以外の保健指導」、「医療との連携」、「未受診者対策」などのそれぞれで、生活習慣病有病者・予備群をどの程度予防できるのかを予測する方法を提案し、実際のデータへの適用を試みた。
[循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究]

女性外来と千葉県大規模コホート調査を基盤とした性差を考慮した生活習慣病対策の研究
主任研究者:天野恵子(千葉県衛生研究所)
1検査値の標準化を行い、千葉県民基本健康診査データ36万8,052件の解析より、検診測定値での性差・年齢差があきらかにし、保健指導においては受診者の性差・年齢差を考慮することが必須であることを示した。女性外来では年齢を問わず受診者の2〜3割をメンタルヘルスが占めており、その治療結果が良好であることや、薬物動態に性差があり、医薬品の使用実態、副作用にも性差があることを解明。
[循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究]

動脈硬化性疾患の危険因子の性差と予防に関するコホート研究
主任研究者:内藤博昭(独立行政法人国立循環器病研究センター病院)
女性の循環器疾患コホート研究であり、女性と男性の冠動脈石灰化の相違点や、冠リスクの性差についても検証。低侵襲性の冠動脈CT検査の陰性的中率が高く、特に閉経後の女性の検査として有用であることをあきらかに。女性の冠動脈石灰化は50歳から狭窄は60歳代から年齢とともに高くなり男性に近づくことも確認した。
[循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究]

健康寿命の年次推移、地域分布と関連要因の評価に関する研究
主任研究者:橋本修二(藤田保健衛生大学)
健康寿命について、年次推移と地域分布および関連要因のミクロ面とマクロ面からの評価を行い、これらの検討結果を総括した。
[循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究]

成人期における歯科疾患のスクリーニング体制の構築に関する研究
主任研究者:森田 学(岡山大学)
従来の成人を対象とした歯科健診の質問項目を、ROC曲線、敏感度、特異度などの算出により抽出。市町村での歯科保健事業で、歯科疾患有病者をスクリーニングするためのマニュアルを開発。また、市町村に歯科専門職が配置されていない場合で、他職種の保健担当者が使用可能な保健指導マニュアルを作成した。
[循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究]

急性心筋梗塞、脳卒中の急性期医療におけるデータベースを用いた医療提供の在り方に関する研究
主任研究者:小林祥泰(島根大学医学部附属病院)
病院前脳卒中救護スケールに救急隊自身の脳卒中病型診断を加えて、病院から確定診断と退院時予後をフィードバックすることにより、出雲消防署や倉敷消防署においても救急隊の脳卒中病型正診率の有意な向上と搬送時間短縮が認められた。脳卒中データベースの改良により、超急性期脳卒中の実態に関するデータが蓄積されるようになり、急性期データベースと病院前脳卒中救護データベースおよび地域連携パスとの連携も可能となったことで、発症からリハビリテーション、在宅療養までの全体を網羅するデータベースに進化した。
[循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究]

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の啓発ならびにリスクファクター低減策としての喫煙率低減を目指した定量的分析に関する研究
主任研究者:小倉 剛(財団法人結核予防会大阪府支部)
全国の4集団8万7000例以上のIPAG-COPD質問票への回答を解析しハイリスクの頻度を検討。また、4万7000例以上の人間ドック健診受診者で、IPAG質問票がCOPDスクリーニングに利用しうることをあきらかにした。現喫煙者に対し、喫煙に関わる具体的な5因子とその組み合わせをweb上で調査し、禁煙企図に対する影響度をあきらかにした。COPDの1次、2次予防は重要で、禁煙誘導とCOPDとそのハイリスク者の早期発見が必須であり、禁煙企図を増強する教育的、具体的な介入を進めることが重要。
[循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究]

厚生労働省研究事業
第64回厚生科学審議会科学技術部会(厚生労働省)

(Terahata)

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