2011年10月13日
「健康日本21」の最終評価 目標達成は17%
キーワード: 高血圧 脂質異常症(高脂血症) 二少(少食・少酒) 糖尿病 「無煙」喫煙は万病の元 三多(多動・多休・多接) 健診・保健指導
厚生労働省の作業チームは、2000年度から進めている国民の健康づくり運動「健康日本21」の最終評価をまとめた。59項目の課題のうち、日常生活での歩数が減るなど9項目で悪化していた。
6割の項目で改善 糖尿病・循環器病は増加
健康日本21は、生活習慣病の発生を減らすことなどを目的に、国が2000年度に開始した。食生活や運動などの数値目標を掲げ、来年度に終了する。13年度からの新たな国民健康運動の計画づくりのため、今回が最終評価となった。
1997年と09年の国民健康・栄養調査などの結果を比較すると、20〜60代の肥満者の割合は、女性は減ったものの、男性は当初の24.3%より悪化し、31.7%となった(目標は15%以下)。
運動の面では「運動を心がけている」とする人は増加した。しかし実際の運動量の増加にはつながらず、日常生活での歩数の1日平均(15歳以上)が、男性は8202歩から7243歩に、女性は7282歩から6431歩に減った。社会の高齢化を背景に、エレベーターやエスカレーターなどを利用する頻度が増えているとみている。
その他、全59項目のうち目標値に達したのは、80歳以上で歯が20本以上ある人の割合など10項目で、全体の17%にとどまった。目標には達しなかったものの、2000年度と比較し改善したのは25項目あった。14項目は変化がなかった。
糖尿病
- 糖尿病健診の受診と受診後の指導を受けている人の割合は改善した。
糖尿病有病者数は増加傾向にあるが、年齢調整有病率に有意な上昇はなく、むしろ糖尿病予備群の増加が問題である。
30歳代男性では、糖尿病検診での異常所見者の事後指導受診率が、過去10年間で40〜60%と増加してきたが、目標には届いていない。この世代では肥満者の増加が大きいので、今後の健康増進対策の強化が必要となる。 - 糖尿病有病者数は、2010年時点の目標値(1000万人)を下回り、糖尿病の治療を継続している人の割合は改善した。
糖尿病治療の継続率は45%から56%と上昇しているが、今後どのような患者が治療を中断しているのか調べる必要がある。 - 糖尿病合併症については、2010年の目標を超えて悪化した。
糖尿病による新規の人工透析の導入患者数は、1997年〜2007年には増加したが、2008年からは横ばい状態にある。失明者数はいぜんとして増加傾向にある。原因を解明する必要がある。
- 血圧平均値、高血圧有病率の改善がみられるが、有病率は高齢者を中心に依然として高く、国民全体での予防対策の強化が必要。
今後、肥満の増加に伴う血圧上昇が懸念され、肥満対策が重要となる。また、食塩摂取量はどの年齢層でも低下しているが、目標の10g未満/日に達していない。 - 平成16、平成21年において服薬者を高脂血症に含めた有病率をみると、年齢調整有病率は男女ともベースラインより有意に上昇した。年齢階級別に見ると男女とも60歳以上での上昇が著しい。
高脂血症有病率低下のため、飽和脂肪酸摂取低減などに関する普及啓発、栄養成分表示などのポピュレーション対策が必要。 - カリウム摂取量は低下傾向にあり、野菜・果物摂取増加等の対策が必要。
- 循環器疾患死亡率は低下傾向にあるが、罹患率のモニタリングが必要であり、疾患登録システムの構築などが求められる。
- 栄養状態、栄養素・食物摂取については、40〜60歳代女性の肥満、食塩摂取量などで改善がみられたが、脂肪エネルギー比率や野菜の摂取量などについてはあまり改善がみられなかった。
- 自分の適正体重を維持することのできる食事量を理解している人の割合、メタボリックシンドロームを認知している割合など知識や態度レベルでは改善がみられたが、朝食欠食や野菜の摂取については行動レベルの変容にまで至らなかった。
- 行動変容のための環境づくりについては、ヘルシーメニューの提供や学習・活動への参加について改善がみられた。
- 意識的に運動を心がけている人の割合は増加したが、運動習慣のある人の割合は変わっていない。運動の重要性は理解しているが、行動に結びついていないと現状が浮き彫りになった。
- 1日の平均歩数は減少した。身体活動が減少していることを示唆しており、その原因として運動以外の生活活動の減少が考えられる。
- 高齢者では、外出に積極的な態度をもつ人の割合は特に、80歳以上で悪くなっていたが、何らかの地域活動を実施している者、安全に歩行可能な高齢者については、ほぼ目標を達成している。
糖尿病 | |||
目標 | 1997年 | 2004年 | 2009年 |
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糖尿病健診を受けている人の数 | |||
4573万人(参考値) | 5850万人 | 6013万人 | |
直近の受診率は、男性が女性より高く、男性では40歳代と50歳代で70%を超える。女性では40〜60歳代で60%前後。 一方、若い世代では受診率が低い傾向がある。男性では20歳代、女性では20〜30歳代で40%台と低い。女性ではやせ、男性では肥満が問題となる世代なので、改善のために受診率の向上をはかる必要がある。 | |||
糖尿病健診の受診後に指導を受けている人の割合 | |||
男性 | 66.7% | 74.2% | 80.6% |
女性 | 74.6% | 75.0% | 79.4% |
男性は有意に増加したが、女性は変わっていない。 事後指導を受けた人とは、「糖尿病教室に行った」、「糖尿病のパンフレットをもらった」、「医療機関を受診するよういわれた」の3項目のうち、どれかを選択した者。 | |||
糖尿病有病者の治療の継続率 | |||
45.0% | 50.6% | 55.7% | |
治療継続率は有意に増加した。治療中断者の内容を、年齢、性、血糖コントロール不良者別にみることが必要。 | |||
合併症を発症した人の数 | |||
糖尿病腎症(透析導入) | 1万729 | 1万3920 | 1万6416 |
糖尿病による失明 | 約3000人 | なし | 2221人 |
糖尿病により透析の導入となった数は増加したが、透析導入の全患者数は2008年にやや減少に転じ、2010年の速報でも低下している。 糖尿病により視覚障害となった数は、ベースライン値に比べ減少傾向にある可能性がある(参考:2679人、平成18年度社会福祉行政業務報告) 糖尿病を主原因として、年間2000人以上が新規に視覚障害となっている。 | |||
循環器病 | |||
1997年 | 2004年 | 2009年 | |
高脂血症の人の割合 | |||
男性 | 9.7% | 17.4% | 15.7% |
女性 | 16.1% | 22.1% | 22.5% |
男女とも50歳以上で有病率の悪化傾向がみられ、特に女性の有病率が高い。中高年以降の高コレステロール血症の予防対策の強化が必要。 | |||
栄養・食生活 | |||
目標 | 1997年 | 2004年 | 2009年 |
肥満のある人(BMI25以上)の割合 | |||
20〜60歳代男性 | 24.3% | 29.0% | 31.7% |
40〜60歳代女性 | 25.2% | 24.6% | 21.8% |
20〜60歳代男性の肥満者の割合は増加した。40〜60歳代女性の肥満者の割合は減少した。 | |||
食塩摂取量 | |||
成人 10g/日未満 | 13.5g/日 | 11.2g/日 | 10.7g/日 |
1日の食塩摂取量は減少しているが、目標値には達していない。目標は1日10g未満。 | |||
野菜摂取量 | |||
292g/日 | 267g/日 | 295g/日 | |
野菜摂取量の目標は、成人1日350g以上。 | |||
自分の適正体重を知り、体重コントロールをしている人の割合 | |||
男性(15歳以上) | 62.6% | 60.2% | 67.7% |
女性(15歳以上) | 80.1% | 70.3% | 76.3% |
量・質ともに、きちんとした食事をする人の割合 | |||
成人 | 56.3% | 61.0% | 65.7% |
外食などで栄養成分表示を参考にする人の割合 | |||
成人男性 | 20.1% | 18.0% | 23.9% |
成人女性 | 41.0% | 40.4% | 50.6% |
適正体重を維持する食事量を理解している人の増加 | |||
成人男性 | 65.6% | 69.1% | 75.6% |
成人女性 | 73.0% | 75.0% | 78.7% |
身体活動・運動分野 | |||
目標 | 1997年 | 2004年 | 2009年 |
意識的に運動を心がけている人の割合 | |||
成人男性 | 51.8% | 54.2% | 58.7% |
成人女性 | 53.1% | 55.5% | 60.5% |
成人男性、女性とも増加しているが、目標に達していない。 | |||
1日の歩数 | |||
男性(15歳以上) | 8202歩 | 7532歩 | 7243歩 |
女性(15歳以上) | 7282歩 | 6446歩 | 6431歩 |
歩数は男性、女性とも減少している。運動習慣のある人では歩数が増える傾向(男性:7887歩 女性7532歩)がみられる。 |
(Terahata)