2012年04月03日
2013年度特定健診「腹囲は従来通り、高血圧などあれば対象に」
キーワード: 健診・保健指導
厚労省検討会が中間取りまとめ
2011年12月に開始された「特定健診・保健指導の在り方に関する検討会」(座長:永井良三・東京大学大学院教授)は、3月28日の開催で5回を数え、中間取りまとめが公表された。必ずしも心血管疾患などのリスクと関連しないとされるウエスト周囲径(男性90cm以上、女性85cm以上)については、従来通り特定保健指導対象者選別の第1基準とされた。しかし、腹囲が基準値に満たない者でも、リスクがあれば保健指導の実施や確実な医療機関への受診勧奨につなげるような対応策を盛り込むとの案で合意した。
2011年12月に開始された「特定健診・保健指導の在り方に関する検討会」(座長:永井良三・東京大学大学院教授)は、3月28日の開催で5回を数え、中間取りまとめが公表された。必ずしも心血管疾患などのリスクと関連しないとされるウエスト周囲径(男性90cm以上、女性85cm以上)については、従来通り特定保健指導対象者選別の第1基準とされた。しかし、腹囲が基準値に満たない者でも、リスクがあれば保健指導の実施や確実な医療機関への受診勧奨につなげるような対応策を盛り込むとの案で合意した。
腹囲はスクリーニング手段として重要
これまでの検討会で議論されたのは、(1)現在の特定健診・保健指導の枠組み、(2)腹囲基準の在り方、(3)現在、特定保健指導の対象となっていない者への対応、(4)特定保健指導の在り方、(5)健診項目――の5点。今回は(1)〜(3)について早急な見直しを求める意見が相次いだ。
議論の焦点となったのは、腹囲を断層化の第1基準とするのが妥当であるかだ。基準に満たない者でも心疾患、脳卒中など心血管病のリスクがあり、国際糖尿病連合(IDF)が示したメタボリックシンドロームの判定基準では腹囲は要素の1つでしかない。特に女性では腹囲測定に抵抗感がある者が多く、健診受診率が低下するおそれもある。
しかし、検討会では「腹囲はスクリーニングの手段として重要であり、生活習慣への介入に先進的に取り組んでいる以上、必ずしも国際基準にとらわれる必要はない。内蔵脂肪に着目した現在の枠組みは現場では使いやすい」との見解が示され、今後も協議を続けるにしても、第1基準としての腹囲やその数値は現行のままとした。
また、「特定保健指導の対象となっていない者への対応」については、腹囲またはBMIが基準値に満たない特定保健指導対象外であっても、高血圧、高血糖、高脂質、喫煙などのリスクがあれば、保健指導が必要との共通認識がある。
そのため当面の対応策として、学会のガイドラインや検診結果に基づくリスクなどを勘案した「血糖、血圧、脂質の検査値および喫煙に応じた対応(案)」には、「肥満なし」の項目が挙げられていた。検討会では、リスクに応じた対応の指針となる必要な措置の対照表を標準プログラムに盛り込むことについては、おおむね了承が得られた。
肥満、非肥満に関わらず、リスク保有者を対象とした健診受診や生活習慣改善の重要性を啓発するポピュレーションアプローチの役割は重要であり、保健指導の義務付けや、確実な受診勧奨を行う対応が必要との意見が出された。


「肥満なし」でもリスクがあれば保健指導の対象に
「血糖、血圧、脂質の検査値および喫煙に応じた対応(案)」について、島本和明氏(札幌医科大学学長)が指摘したのは、肥満がないBゾーンと判定された者だ。これらの者は血圧値や血糖値が正常高値を示すため、放置された場合に疾患発症につながることもある。「4,000万人の高血圧患者のうち収縮期140〜159mmHg、拡張期90〜99mmHgの?度高血圧が3分の1いる。日本高血圧学会のガイドラインでは低リスク群であっても3ヵ月以内の生活習慣改善を指導している。情報提供にとどめるのではなく、特定保健指導と受診勧奨が勧められる」とした。
門脇孝氏(東京大学大学院糖尿病・代謝内科教授)からは代案が示された。「特定健診・保健指導は本格的な生活習慣病になる前に予防することが目的だ。日本人では非肥満からの発症が約半分ある。糖尿病の予備群であっても肥満がない者でも、食事や運動の介入は有効となる。そういう者も2型糖尿病を予防するような生活習慣の保健指導の対象にすべきではないか。肥満があれば従来通りの介入を行うが、なければ個々の危険因子に応じた生活習慣改善を促していく必要がある」との見解が示された。
非肥満者に対する保健指導を保険者に義務付ける場合には、効果についてのエビデンスが必要となる。また、血液検査などで6ヵ月後の評価を行うことも課題となる。検討会では「肥満者と違ってリスクが表出していないため、動機付けが難しい」との意見も出た。
前回の検討会で合意が得られた血清クレアチニン検査の健診項目への導入については、検討会では「健診項目に追加すべき」との結論が出た。国で各保険者との協議調整を求めていくことになった。
なお、健診受診の中断者の中から重症例が非常に多く出ているため、「健診受診率」のみならず「健診リピーター率」、「中断率(継続受診率)」も評価するとともに、健診に関心をもたせるような仕組みが重要との意見が出された。正式な中間取りまとめは、4月以降の厚生科学審議会の「地域保健健康増進栄養部会」に報告される予定だ。
第4回健診・保健指導の在り方に関する検討会(厚生労働省)第5回健診・保健指導の在り方に関する検討会(厚生労働省)
(Terahata)