2012年04月18日
特定健診・保健指導制度の中間まとめ 【厚労省検討会】
キーワード: 健診・保健指導
厚生労働省の検討会(座長:永井良三自治医科大学学長)が、特定健診・保健指導制度の課題を整理し、当面の対応を中間的に取りまとめた。腹囲を保健指導対象者を選別する第一基準にしていることを含め、制度のあり方について必要なデータや正確な知見にもとづいた議論ができるよう、データの蓄積を進めるとともに、計画的に研究を行うよう促している。
中間まとめの要点は次の通り――
腹囲を保健指導対象者の選別の第一基準にする妥当性を検討
現在の制度では保健指導の対象を腹囲に重点を置いて絞り込んでいるが、循環器疾患の発症リスクなどの観点から、腹囲を第一基準とすることを早急に見直すべきとの意見がある。
- 特定健診・保健指導制度の目的として「内臓脂肪型肥満に着目した生活習慣病予防のための保健指導を必要とする者を抽出する健診を行い、その対象者に生活習慣を改善するための保健指導を行うことで、糖尿病などの有病者や予備群を減少させること」が確認された。
- 腹囲を測定し、特定保健指導の対象となる者を選別・階層化する上でのスクリーニングの第一基準として用いられている現状について、国際糖尿病連合(IDF)が暫定的に示した新たなメタボリックシンドロームの判定基準において腹囲が判定要素の一つとされていることなどをふまえ、検討が行われた。
- マンパワーなどが限られた中では、生活習慣が改善しやすく指導目標が立てやすいメタボリックシンドロームに着目した現行制度は効果的。
- 腹囲は、スクリーニングの手段として重要。メタボ対策として生活習慣への介入に先進的に取り組んでいる以上、必ずしも国際暫定基準にとらわれる必要はない。
- 腹囲を第一基準にしたことで、メタボリックシンドロームに着目しているために、心疾患イベントのリスクが高い者への対応が不十分であるとの意見が出された。循環器疾患の予防の観点からは、軽症の高血圧や、非肥満でリスクを有する者への介入も検討すべきと指摘された。
- 腹囲を第一基準とすることで、特に女性の特定健診受診の意欲を失わせている。
- 現行の腹囲の判断基準(男性85?以上、女性90?以上)は、絶対リスクでみた基準であり、相対リスクからは男性85cm、女性80cmとなるため、女性の基準を腹囲80cmに引き下げるという考え方もある。
腹囲などの基準に該当しない特定保健指導の非対象者に対して、個々のリスクに着目した対応が適切に行われるよう指針を明記
特定健診の結果、腹囲またはBMIの基準に該当しないため特定保健指導の対象とならない者のうち、血圧、血糖、脂質、喫煙等のリスクがある者への対応の在り方について検討が行われた。
- 現行制度を維持することを基本として、コストを考慮した上で、非肥満者でリスクのある者への介入の在り方を検討すべき。
- 薬物治療の意義がより高い層であり、受診勧奨を徹底して、保健指導と医療とが連携して取り組むべきである。受診勧奨が必要な対象者は医療にきちんとつなげることが大切である。
- 肥満、非肥満に関わらずリスク保有者を対象として健診受診や生活習慣改善の重要性を啓発するポピュレーションアプローチの役割が重要であり、このような取組をきちんと評価すべきである。
- 軽度高血圧の者は受診しても薬を飲まない者やそもそも受診しない者が多い。現在の標準プログラムの表記だと、意識の高い自治体等は取り組むが、他の団体では全く取り組まないという実態にある。何らかの保健指導を義務付けるか、あるいは確実に受診勧奨を行うかの対応が必要である。
特定保健指導のポイント制について一部見直しを行い、血圧や喫煙に着目した保健指導の充実を図る
- 「積極的支援」の3ヵ月以上の継続的な支援でポイント制が導入されており、支援A(積極的関与)で160ポイント以上、支援B(励まし)で20ポイント以上の合計180ポイント以上の支援を行うことが必須とされている。これを、支援Bの必須(20ポイント以上)を外し「支援Aを160ポイント以上、合計180ポイント以上」と変更する方向で検討が進められている。
- 保健指導の最低限の質の確保するためポイント算定が必要で、行動変容が容易でない壮年期の男性には、支援を継続するための励ましや共感(支援B)も重要である。
- 血圧・喫煙のリスクに着目した保健指導は、生活習慣病を予防する観点から重要。健診の機会を捉えて早期に保健指導を実施することが望ましい。
- ただし、検査結果が出る前に行動計画・行動目標を策定し、後日電話などで補完するという提案を実現するのは難しい。「喫煙リスクのみで指導すると健診そのものに対する抵抗感が高まる」などの意見も出された。
健診項目に血清クレアチニン検査を追加することが望ましいため、健診の実施主体である医療保険者などとの協議調整を進める
- 血清クレアチニン検査は、制度創設時に必須健診項目としての導入が見送られた経緯がある。「有識者から生活習慣改善を目的とした保健指導はCKD(慢性腎臓病)に対して有効か」などの点についてヒアリングを行い議論を続ける。
(Terahata)