一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病とその予防
主な生活習慣病
ニュース

糖尿病細小血管障害とFMD値が相関。短期加療による改善も評価可能

キーワード: 糖尿病 動脈硬化 心筋梗塞/狭心症 脳梗塞/脳出血

 早期動脈硬化症の指標として用いられているFMD検査だが、糖尿病細小血管障害のマーカーとしても利用できる可能性が、久留米大学医学部内分泌代謝内科・佐藤秀一氏らの研究で明らかになった。第27回日本糖尿病合併症学会(11月2〜3日・福岡)での発表。細小血管障害の中でも特に腎症とは、ステージの進行とともにFMDが低下するなど、強い相関が確認された。また2週間という短期間の治療介入でもFMDが改善することがわかり、治療指標としての有用性も示された。

 血管内皮機能の低下は、血管障害、特に大血管障害(動脈硬化)の最初期の変化とされている。血管内皮機能を非侵襲で定量的に評価する検査方法として、臨床ではFMD(Flow Mediated Dilation.血流依存性血管拡張反応)が用いられており、FMD値と心血管疾患との関連について、既に多数の報告がある。

 一方、細小血管障害とFMDとの関連についての報告はまだ少ない。また、糖尿病患者のFMDに関する報告も少なく、佐藤氏らはそれらの点を明らかにするとともに、治療介入による血管内皮機能異常の可逆性について検討する狙いで本研究を行った。

糖尿病患者のFMDは有意に低く、男性ではより低値に
 研究の対象は、2009年9月〜2010年2月に同科に入院した2型糖尿病患者のうちeGFR30mL/分/1.73m2未満の腎不全患者を除外した106名(うち男性66名、年齢60.7±11.6歳)。比較検討のため健常者20名(男性10名、年齢32.3±5.7歳)の対照群を置いた。入院時および2週間の治療介入後、いずれも空腹時に、身体計測、血液・尿検査、頸動脈エコー検査、FMD検査を施行した。

 主な患者背景は、BMI24.8±4.4、糖尿病罹病期間10.7±9.1年、HbA1c(NGSP)9.1±2.1%、収縮期血圧126±19mmHg、拡張期血圧73±12mmHg、LDL-C122.3±32.2md/dL、HDL-C49.8±12.6mh/dL、TG145.0±76.2mg/dL、血清クレアチニン0.74±0.26mg/dL、eGFR83.1±27.8mL/分/1.73m2、MeanIMT0.76±0.18mm、FMD5.8±3.1%、喫煙者52%、常習飲酒者32%、ARBまたはACE阻害薬使用者30%、スタチン使用者27%、アスピリン使用者8%など。

 まず、糖尿病患者の入院時と対照の健常者のFMDの比較では、糖尿病群5.8±3.1%、対照群10.5±5.0%で、糖尿病群で明らかに低いことが確認された(p<0.001)。さらに糖尿病患者を性別で2群に分けて比較すると、男性4.9±2.8%、女性7.4±3.1%と、男性ではより低値となることがわかった(p=0.001)。

腎症、網膜症、神経障害など、細小血管合併症の存在とFMDが有意に相関
 続いてFMDに関与する性別以外の因子を探るため、糖尿病群を各患者背景因子ごとに2群に別けてFMDを比較。すると、群間に有意差がみられた背景因子として、腎症の合併(p=0.001)、常習飲酒(p=0.018)、頸動脈プラークあり(p=0.019)、高血圧の併発(p=0.02)、喫煙(p=0.036)、神経障害の合併(p=0.041)、RAS阻害薬の使用(p=0.048)が挙げられた。

 前述のようにFMDには性差がみられることから、それを補正したうえで比較すると、高血圧の併発(p=0.002)、腎症の合併(p=0.003)、神経障害の合併(p=0.019)、頸動脈プラークあり(p=0.022)、脂質異常症の併発(p=0.023)、網膜症の合併(p=0.032)が、それぞれ有意な群間差のある項目として抽出された。このことから、FMDは既に多数報告されている大血管障害との相関だけでなく、糖尿病に特異的な細小血管障害に基づく三大合併症である腎症、網膜症、神経障害のいずれも、その存在と有意な関係があることが確認された。

腎症ステージの進行に従いFMDがより低下する
 三大合併症の中でも腎症の併発はFMDと特に強い相関を示したことから、より細かく腎症の病期で分類しFMDを比較したところ、腎症なしの群では6.5±3.0%、早期腎症群は4.4±2.7%、顕性腎症群は3.7±3.6%で、病期の進行とともにFMDが低下していた()。腎症なし群と早期腎症群、および、腎症なし群と顕性腎症群の群間差は有意だった(ともに p<0.001)。


腎症の病期別にみたFMD値

 次に、臨床パラメータとFMDとの関係をみると、有意な相関がある因子として、糖尿病罹病期間、MeanIMT、eGFR、HDL-Cが挙がり、性差で調整後は糖尿病罹病期間(p=0.01)とeGFR(p=0.017)が有意な因子として残った。
2週間の入院でFMDが改善。早期動脈硬化症の可逆性を示す
 入院時と入院2週間後の各種臨床パラメータの変化をみると、血糖、脂質、血圧、BMIなどがすべて有意に改善し、FMDも6.7±3.9%に有意に改善していた(p=0.0006)。包括的な治療による早期動脈硬化症の可逆性を示す結果と考えられる。


 発表の結語として佐藤氏は、「アルブミン尿やCKDが心血管イベントの発症に強く寄与する事実と考え合わせると、腎症と動脈硬化の双方に血管内皮機能異常が関与している可能性を示した結果と考える。また、血糖はもとより血圧、脂質のコントロールや禁煙など、糖尿病患者に対する早期からの介入は、将来の心血管疾患予防だけでなく、細小血管合併症、特に腎症の予防にもつながる可能性が考えられる」とまとめた。

[mhlab]

関連トピック

疾患 ▶ 糖尿病

2021年01月28日
【健やか21】「COVID-19 ワクチン接種を考慮する妊婦さんならびに妊娠を希望する⽅へ 」の提言(⽇本産婦⼈科感染症学会・⽇本産科婦⼈科学会)
2021年01月15日
【新型コロナ】医療現場での感染リスクと予防効果を解明 医療者への感染を防ぐために 健診・保健指導にも応用
2021年01月15日
【Withコロナ時代】運動・スポーツを通じて健康二次被害を防ぐポイントは? スポーツ庁がガイドラインを公表
2021年01月15日
日本人に「低炭水化物ダイエット」は効果がある? 肥満やメタボの食事療法としては勧められる?
2021年01月15日
「肥満」の原因は自分だけのものではない 子供時代の虐待体験も成人後の肥満に影響 2万人を調査

疾患 ▶ 脳梗塞/脳出血

2020年12月24日
【新型コロナ】年末年始は「真剣勝負の3週間」 みんなで危機感を共有しコロナ収束の突破口に
2020年12月24日
【新型コロナ】医療機関の受診控えで健康リスクが上昇 日本医師会は安心マークを発行「感染防止を徹底しているから、安心して来て」
2020年11月26日
納豆などの「発酵性大豆食品」が循環器疾患や脳卒中のリスクを低下 日本人8万人を調査
2020年11月26日
「循環器病対策推進基本計画」を決定 健康寿命の3年延伸と循環器病死亡率の減少を目指す
2020年10月26日
毎日の歩数が多いほど死亡リスクは低下 1日の歩数を1000歩増やすだけでも効果

疾患 ▶ 心筋梗塞/狭心症

2020年12月24日
【新型コロナ】年末年始は「真剣勝負の3週間」 みんなで危機感を共有しコロナ収束の突破口に
2020年12月24日
【新型コロナ】医療機関の受診控えで健康リスクが上昇 日本医師会は安心マークを発行「感染防止を徹底しているから、安心して来て」
2020年12月14日
【新型コロナ】新型コロナとインフルの同時流行に備えて 発熱したら電話で「かかりつけ医」に相談 上手な医療のかかり方プロジェクト
2020年12月14日
【新型コロナ】ワクチンがついに実用化 海外では有効性の高いワクチンが利用可能に ワクチン接種には課題も
2020年11月26日
納豆などの「発酵性大豆食品」が循環器疾患や脳卒中のリスクを低下 日本人8万人を調査

疾患 ▶ 動脈硬化

2020年12月14日
肥満や糖尿病に「コーヒー・緑茶・アルコール」は良い・悪い? どれくらい飲むと健康効果を期待できる?
2020年11月26日
納豆などの「発酵性大豆食品」が循環器疾患や脳卒中のリスクを低下 日本人8万人を調査
2020年10月26日
毎日の歩数が多いほど死亡リスクは低下 1日の歩数を1000歩増やすだけでも効果
2020年10月26日
肥満やメタボは認知症リスクを上昇 体重コントロールで脳機能を改善 食事と運動で対策
2020年09月11日
「緑茶」に肥満・心臓病・脳卒中・認知症の予防効果 お茶を飲むシンプルな生活スタイル
全国生活習慣病予防月間
明治PA3
新着ニュース

トピックス&オピニオン
新型コロナウイルス関連

Dr.純子のメディカルサロン こころがきれいになる医学
保健指導リソースガイド
国際糖尿病支援基金
糖尿病ネットワーク 患者さん・医療スタッフのための糖尿病の総合情報サイト
糖尿病リソースガイド 医師・医療スタッフ向け糖尿病関連製品の情報サイト
日本健康運動研究所 健康づくりに役立つ情報満載。運動理論から基礎、応用を詳細に解説
セルフメディケーション・ネット セルフメディケーションの基礎から薬の知識までさまざまな情報を提供
日本くすり教育研究所 小・中学校で「くすり教育」を担う指導者をサポート