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 日本脳卒中協会は5月25日?31日の「脳卒中週間」に合わせて、「脳卒中市民シンポジウム」を5月25日に埼玉県大宮市で開催した。脳卒中は、脳の血管がつまったり、破れたりして、その先の細胞に栄養が届かなくなって、細胞が死んでしまう疾患だ。厚生労働省の患者調査によると、脳卒中の総患者数は124万人に上る。

 脳卒中の発作を起こすと、多くの場合で片麻痺などの後遺症が残る。介護が必要となった原因疾患の第1位であり、寝たきりを含む重い介護の原因にもなる。また、長期入院が必要であり、高齢化が進む日本の医療費高騰の原因としても、大きな問題を抱える疾患だ。

 脳卒中を減少させるためには予防が第一で、糖尿病や高血圧、脂質異常症など生活習慣病の管理も重要となる。万が一、脳卒中を発症した場合でも、急性期治療は進歩しており、少しでも早く治療を受ければ救命や後遺症の低減を得られる。

脳梗塞の前ぶれに注意 早期受診・治療が重要
 「一過性脳虚血発作(TIA)」とは、脳の一部の血液の流れが一時的に悪くなり、半身の運動麻痺や脱力などの症状が現れ、24時間以内(多くは数分から数十分)に完全に消失する発作のこと。脳細胞に栄養を与えている脳の動脈が血栓(血の塊)で詰まり、症状が現れるが、脳細胞が死んでしまう前に血液の流れが再びよくなるため、脳細胞が元の機能を回復し、症状も消失する。

 「一過性脳虚血発作は、脳梗塞の前ぶれとして緊急を要する症状です。この発作が起きた直後は脳梗塞を起こす危険が高いので、専門医を受診し検査を行い、すぐに治療を始めることが大切です」と、東京女子医科大学医学部神経内科主任教授の内山真一郎先生は注意を呼びかけた。

 一過性脳虚血発作は数分から十数分で症状が消えることが多く、気のせいだろうと見過ごしがちだが、治療しないで放っておくと、3?4割が脳梗塞を発症することが分かっている。そのうち半数以上は3か月以内に脳梗塞を発症するという。

 一過性脳虚血発作後、速やかに病院を受診し、検査・治療を始めれば、その後の脳梗塞発症の危険を減らせることが、いろいろな研究から分かっている。一過性脳虚血発作は脳梗塞の重要な"前触れ発作"であり、早期受診・治療が必要な疾患だ。

 一過性脳虚血発作の症状は、脳の動脈が詰まる場所によってさまざまだ。脳血管の異常による運動障害や感覚障害は、片側に起こることが多い。典型的な場合、▽片側の腕や脚、顔に麻痺やしびれが起こる、▽ろれつが回らない、▽言葉が出てこない、▽相手の言葉を理解できない、▽片側の視力が急に失われる、▽片側にあるものが見えなくなるといった症状が起こる。

 「一過性脳虚血発作が起きても、必ずしも救急車を呼ぶ必要はありませんが、よくなったから様子をみよう、というのはよくありません。脳卒中の専門病院や、神経内科、脳外科、脳卒中科のある医療機関にすぐに行くことが大切です。脳梗塞と違って一過性脳虚血発作の症状は、多くの場合で医療機関を受診した時点では消えているので、医師はその症状を診察で確認することができません。医師が一過性脳虚血発作かどうかを判断する重要な材料は、患者さん本人や周りにいた人からの問診だけです」と内山先生は説明した。

 例えば運動麻痺であれば「麻痺がどの程度であったのか」、「どこの部位に生じたのか」、「症状が何分くらい続いたのか」などをできるだけ正確に伝えることができるようにしておくことが大切だという。

脳梗塞は一刻を争う病気 3つの症状に注意
 脳梗塞を含めた脳卒中の治療では、新しい薬や新しい治療法が出てきている。しかし、発症から時間がたって治療を始めると、治療の効果が落ちたり、治療を受けることができなくなったりする。早く気付いて受診するほど、治療の選択肢も増え、後遺症の軽減を期待できる。

 「脳梗塞の発作が起きたら、できるだけ早く治療を行うことがその後の経過に大きく影響します。脳梗塞の典型的な症状を知っておき、一刻も早く対処できるようにしておくことが大切です」と、獨協医科大学越谷病院脳神経外科教授の兵頭明夫先生は警鐘を鳴らす。

 米国脳卒中協会では、より簡潔に、3つの症状を取り上げた「FAST(ファスト)」という標語を試すことを勧めている。このうちひとつでも該当すれば脳卒中を疑い、すぐに救急車を呼ぶよう呼びかけている。

脳卒中の発症時に確認すべき「FAST」
Face(顔):顔の片側がゆがんでいませんか?
Arms(腕):片側の腕がだらんと下がっていませんか?
Speech(言葉):簡単な文章を言って下さい。なめらかに話せますか?
Time(時間):これらの症状がどれかひとつでもあれば、時間が勝負です。119番に電話するか一刻も早く医療機関に行って下さい。

 脳梗塞の治療の中心となるのは薬物療法で、中でも重要なのは「血栓溶解薬」による治療だ。血流の再開が期待でき、結果として後遺症の軽減を期待できる。脳梗塞では、早期に専門病院を受診すれば、「t-PA血栓溶解療法」という治療が可能となる。t-PAは血流の再開に有効だが、効き過ぎれば出血という副作用が起こる。安全に治療を行うために、いくつかの条件が定められている。

 条件のひとつは、脳梗塞発症後4時間半以内であること。時間がたつと脳細胞に完全に死に、仮に血流が再開しても脳の機能の回復が難しくなる。また、血流が途絶えた先の血管がもろくなり、二次的な脳出血を起こす可能性が高くなる。

 発症後4時間半以内のときも、症状や血液検査、画像検査の結果が総合的に検討され、治療を受けられるかどうかが判断される。例えば脳の損傷が強く、広範囲に脳の早期虚血変化と呼ばれる所見が現れる場合や、過去に脳出血を起こしたことのある人、大きな手術をうけたばかりの人などは、出血の危険性が高いのでt-PAによる治療は受けることができない。

 「日本ではt-PA療法が比較的最近になり開始されました。脳梗塞やt-PA療法の実際を、多くの方々に知ってもらう必要があります。脳卒中の初期症状を知っていただき、脳卒中が疑われる場合は直ちに専門病院を受診すること、迷うときにはかかりつけ医に相談するか救急車を呼ぶことを徹底する必要があります」と兵頭先生は強調した。

公益社団法人日本脳卒中協会

(Terahata)

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