2014年10月17日
自殺の再発予防に支援プログラムが有効 チーム医療で自殺は防げる
キーワード: 二少(少食・少酒) 「無煙」喫煙は万病の元 三多(多動・多休・多接)

9月10日は世界保健機関(WHO)が定めた世界自殺予防デーだった。自殺企図の再発予防にきめ細かい支援プログラムが有効なことが、日本の大規模な研究で明らかになった。
救命救急センターに搬送された自殺未遂者に対し、福祉専門職がケース・マネジメント(支援プログラム)を行うことで、6ヵ月間は自殺の再企図を抑止できることが、厚生労働科学研究の研究班の研究で分かった。 公表されたのは厚生労働省「自殺企図の再発防止に対する複合的ケース・マネージメントの効果:多施設共同による無作為化比較研究」(通称:ACTION-J)の成果。 代表者の平安良雄・横浜市立大学大学院精神医学部門教授は、「研究の成果を日本の救急医療の現場に普及させることで、自殺再企図と自殺未遂を減らせると期待している」と述べている。
自殺の再発を予防する支援プログラムを実施
自殺のリスク要因のうち、もっとも明確なのは「自殺未遂の既往」だ。自殺未遂者が自殺を再び企図し、自殺に至ることのないようにするため、多くの介入研究が世界中で試みられてきた。自殺企図者の大半は救急医療で治療を受けるので、精神科との連携が課題となっている。
研究には、救急医療部門と精神科が連携している全国の17施設が参加し、2006〜2009年に搬送された自殺未遂者914人を対象に、1年半以上の追跡調査を行った。
搬送された自殺未遂者全員に対し、危機介入や精神医学的なアセスメント、心理教育といった支援を実施。その後、通常の治療を受ける「対象群」と、新たに開発したケース・マネジメントを行う「介入群」の2つのグループに分け、ケース・マネジメントの効果を比較検証した。
介入群には最初の6ヵ月間、対象者との定期的な面接や受療状況に関する情報収集、精神科受療の促進といったケース・マネジメントを頻繁に行い、その後も6ヵ月おきに支援を実施。一方、対象群には、通常の治療に心理教育や自殺予防の資料などを加えた「強化された通常介入」を実施した。
ACTION-Jの支援プログラム(ケース・マネジメント)の課題
(1)定期的な対象者との面接(あるいは通話)
(2)対象者の生活背景・受療状況に関する情報収集
(3)精神科受療の促進
(4)精神科・身体科かかりつけ医に関する受療調整
(5)受療中断者への受療促進
(6)公的社会資源・民間援助組織の紹介と利用する際の調整
(7)心理教育と情報提供
(8)専用ウェブサイトを利用した情報提供
(2)対象者の生活背景・受療状況に関する情報収集
(3)精神科受療の促進
(4)精神科・身体科かかりつけ医に関する受療調整
(5)受療中断者への受療促進
(6)公的社会資源・民間援助組織の紹介と利用する際の調整
(7)心理教育と情報提供
(8)専用ウェブサイトを利用した情報提供
自殺防止に向けてケース・マネージャーの育成が課題
その結果、支援プログラムを実施した介入群で、自殺を再企図した人の割合は対照群に比べて、1ヵ月後に0.19、3ヵ月後に0.22、6ヵ月後に0.50、1年後に0.72、1年半後に0.79までそれぞれ減り、自殺企図は6ヵ月までは2分の1に抑制されていた。
支援プログラム実施は、統計学的にみて自殺未遂者の自殺再企図を5年の長期間にわたって抑制するには十分でなかったが、6ヵ月にわたって強力に抑制した。この効果は、特に、女性、40歳未満、過去の自殺企図歴があった自殺未遂者により強く認められたという。
ACTION-Jの支援プログラム(ケース・マネジメント)の流れ
ACTION-Jの成果を具体的な施策として普及するためには、現場で着実に実施していくケース・マネージャーの育成が不可欠となる。現在、ACTION-Jの実務に関わった多くの医療従事者の協力を得て、人材育成プログラムの準備が進められているという。
平安教授らは「このプログラムを事業化すれば、十分な人数のケース・マネージャーを確保できるようになる。医療現場でケース・マネージメントを実施できる環境を整備すれば、自殺未遂者の自殺再企図を、そして自殺既遂を減らせる」と、救急医療と精神科を軸としたチーム医療のモデルを提言している。
J-MISP 自殺対策のための戦略研究(精神・神経科学振興財団)

(Terahata)