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高齢者の運転能力を低下させる「白質病変」 事故防止の手がかりに

キーワード: ストレス関連疾患/適応障害

 「白質病変」がある高齢者は、注意力が散漫になると車の運転能力がより低下するとの実験結果を、東京大学と高知工科大学の研究チームが発表した。「高齢者の事故を防止するために効果的な指導をする上で、有力な手かがりになる可能性がある」としている。
高齢者の交通事故が増えている
 日本は高齢化が急速に進んでおり、8人に1人は75歳以上の高齢者だ。高齢者の増加に伴い、65歳以上の高齢者が交通事故に占める割合が上昇している。さらに近年では、事故の被害者だけでなく加害者になるケースも増えている。

 その背景には、高齢者人口の増加だけでなく、高齢者特有の事情も影響している。高齢者に多い交通事故の原因は、アクセルとブレーキの踏み間違いやハンドル操作の誤りなどの「運転操作不適」や「安全不確認」などだ。

 交通状況を早期に把握し、ハンドル、アクセル、ブレーキの3つの操作を状況に合わせて適切に操作できないと、自動車の運転は大きな危険が伴うものになる。

重度の白質病変は認知症の原因に
 脳組織は、神経細胞が集中している「灰白質」と、神経線維が集中している「白質」とに二分される。高齢者がコンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)といった検査を受けると、白質に大小さまざまな異常がみつかることがある。これが「白質病変」だ。

 白質病変の多くは、部分的に血液が行き渡らなくなる虚血性病変だ。白質病変は、軽度であれば自覚症状がなく、脳機能障害や生活能力の低下もない。

 しかし、重症の場合は、脳卒中やそれに伴って起こる脳血管性認知症の危険性が高くなるとされている。白質病変が出現する最大の要因は高血圧で、血圧をしっかり管理することが重要となる。

白質病変がある人では事故が3倍超に増加
 研究は、東京大学生産技術研究所の中野公彦准教授を中心とするグループ、高知工科大学の朴啓彰客員教授を中心とするグループが共同で行った。

 高知検診クリニック脳ドックセンター長も務める朴氏は、白質病変の進行と交通事故発生件数の増加に関連があると感じ、アンケート調査を10年間にわたり行っていた。

 脳ドックを受けた約4,000人を対象に行った調査で、病変の有無と事故歴との関連を調べた。左右の脳に軽い白質病変がある人が交差点内で事故を起こすリスクは、病変のない人の3.36倍に増えることが判明した。

 研究チームは今回の研究で、高知県の運転試験場で実験を行った。白質病変がある60歳以上の高齢者12人、全くない高齢者11人、健康な20代の若年者9人を対象に、同じコースで車を運転してもらった。

 同乗した県警の試験教官が運転技能を採点した。コースを普通に周回する運転と、暗算をしながらの運転(歩行者や対向車など多くの情報を一度に処理するケースを想定)の2ケースを比較した。

車の運転で右折のような複雑な動作が苦手に
 その結果、一時停止の指示を無視した回数は、普通の運転では白質病変の有無に関わらず平均0.8件だった。暗算をしながら運転した場合、若年層は0.4回だったが、病変がない高齢者は1.2回、病変がある高齢者は1.8回と増加した。

 白質病変は健康体の「G0」から、片側病変の「G1」、両側病変の「G2」、さらに進行すると「G3」「G4」に分類される。

 G2に分類される軽度の白質病変と診断された高齢の運転者では、交差点における事故の比率が高かった。右折時のハンドル操作についても、脳に負荷がかかったとき、病変のある人の方が右折の滑らかさを失いやすいことが示された。

 「症状がなく、生活上の能力が低下していないと考えられていた軽度の白質病変でも、運転能力に差があることが示された」「白質病変がある人は、車の運転で右折のような複雑な動作が苦手になる傾向がある」と、研究者は述べている。

 「MRI画像のデータから自覚のない軽度な白質病変を発見すれば、交通事故を起こさないように、事前に安全な運転の指導ができるようになる可能性がある」と、研究者は指摘している。

Leukoaraiosis Significantly Worsens Driving Performance of Ordinary Older Drivers(PLOS ONE 2014年10月8日)

(Terahata)

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