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従業員のうつ病を予防 マンガを使った認知行動療法eラーニングの効果

キーワード: ストレス関連疾患/適応障害 三多(多動・多休・多接)

 企業の従業員のうつ病を予防する新しいツールが開発された。うつ病の予防効果のある「認知行動療法」に着目し、マンガを使い多数の従業員に提供できる安価な「eラーニング」を、東京大学の研究チームが開発した。
うつ病の発症率が5分の1に減少 低コストで簡易に提供
 大学院医学系研究科の川上憲人教授と今村幸太郎特任研究員が開発した「eラーニング」は、ものの考え方や受け取り方に働きかけて気分や症状を改善する「認知行動療法」に着目したもの。低コストで簡易に認知行動療法ができる有効な方法として開発された。

 うつ病など働く人の心の健康問題(メンタルヘルス不調)の増加は社会問題となっている。これまでメンタルヘルス不調の従業員への相談対応や職場復帰の支援が行われてきたが、最近ではその予防に関心が高まっている。

 一対一の対面や集団での「認知行動療法」によって、うつ病のリスクが30%程度減少するが、対面や集団で認知行動療法を提供するにはコストがかかり、多数の従業員に広く提供することは難しい。

 そこで研究チームは、認知行動療法にもとづくストレス対処の方法をマンガで分かりやすく提供するインターネット認知行動療法eラーニング(iCBT)のプログラムを開発した。

 プログラムは6ヵ月に全6回で構成され、毎週1回の講義と宿題が含まれる。学習は宿題も含めて1回30分程度。未学習者には週1回学習を促すメールを送信する。宿題提出は任意で、提出した者には専門スタッフ(臨床心理士)がコメントを返す。

 IT系企業の社員381人にこのeラーニングを提供し、視聴を促したところ、調査期間後に遅れてeラーニングを提供した同数の社員に比べて1年間のうつ病の発症率が5分の1に減った。

 eラーニングによる認知行動療法がうつ病を予防することを示した初めての報告で、広く企業に導入されて、働く人の心の健康が向上することが期待される。研究成果は医学誌「Psychological Medicine」オンライン版に発表された。

認知行動療法eラーニングに使われたマンガ
認知行動療法のeラーニング 32人に1人のうつ病を予防
 研究チームは、日本のIT系企業2社の社員762人を、eラーニングを受ける人(介入群)381人と、6ヵ月間の試験が終了した後に遅れて受講する人(対照群)381人に無作為に分け、この認知行動療法eラーニングの効果を調べた。

 介入群と対照群の男性比率はそれぞれ85%と82%、平均年齢は38.歳と37歳で、ほぼ同じだった。対照群には、未学習であることを通知する催促メールは送らず、講義の視聴と宿題提出をともに任意にした。両群ともに初回調査から6ヵ月後、12ヵ月後に過去1年以内のうつ病の有無を追跡調査した。

 介入群で全6回のうち3回以上eラーニングを視聴して学習した人は291人(76%)、平均視聴回数は4.53回、宿題の平均提出回数は2.65回だった。対照群では、3回以上eラーニングを視聴した人は66人(17%)、3回以上宿題を提出した人は41人(11%)で、宿題の平均提出回数は0.71回にとどまった。

 その結果、両群でうつ病を発症する割合に、はっきりした差があらわれた。介入群の12ヵ月間のうつ病発症は対照群の約5分の1にまで減っていた。両群の差から、32人の社員がこのマンガ認知行動療法eラーニングを受講すると、そのうちの1人についてうつ病の発症を予防できると推測された。

 「職場でのうつ病の予防が、低コストで、多くの従業員に一度に提供できるeラーニングで実現することは大きな意義がある。開発したeラーニング、親しみやすいマンガで構成されており、コストも抑えられる。今後は認知行動療法のeラーニングがポジティブなメンタルヘルスや生産性に与える効果についてさらに調査する。プログラムを改良し、より大規模な研究で効果を検証したい」と、川上憲人教授は話している。

東京大学大学院医学系研究科・医学部

(Terahata)

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