2015年05月24日
「アート」「映画鑑賞」「ネットで買い物」 創造的な趣味が認知症を防ぐ
キーワード: ストレス関連疾患/適応障害 三多(多動・多休・多接) 「多接」多様なつながり

「絵を描く」「工芸をする」「映画鑑賞」「ネットで買い物をする」といった知的で創造的な活動が脳の健康を保つのに効果的であることが明らかになった。中年期にこれらの趣味をもつことが、歳をとってから認知症を予防するのに役立つ可能性がある。
中年期の高血圧が認知障害のリスクに
「軽度認知障害」(MCI)は、日常生活への影響は少ないが、物忘れなどの症状があらわれ、認知症に進行しやすい、認知症と正常の中間にある状態だ。
メイヨー クリニックのローズバッド ロバーツ氏らは、高齢者のMCIのリスクを低減するのに効果的な余暇活動について研究している。
研究チームは、高齢者を対象とした前向きコホート研究である「メイヨークリニック加齢研究」に登録された85〜89歳で認知機能が正常な男女256人を対象に調査を行った。
臨床認知症尺度(CDR)、機能活動調査票(FAQ)を用いた認知機能の評価に加え、記憶力や言語能力などの評価を含む神経学的検査を実施した。
さらに、中年期(50歳時点)と高齢期(85歳時点)での認知機能に影響を及ぼす余暇活動についてアンケートを実施し、糖尿病などの慢性疾患の病歴などに関するデータを収集した。
4年間の追跡期間中に121人がMCIを発症した。発症した人には、アルツハイマー病の主要な遺伝性の危険因子とされている遺伝子型「ApoE4」がみられ、うつ病、中年期の高血圧などの傾向がみられた。
アートや交流、パソコンなど創造的な活動が脳の健康を保つ
その一方で、「絵を描く」「彫刻」といったアートを趣味としていた人では、そうでない人に比べてMCIのリスクが73%低下した。
また、「陶芸」や「手芸」などの工芸の経験者では45%、「観劇」や「映画鑑賞」、「友人との社交」、「旅行」などを含むソーシャル活動を行っている人では、MCIのリスクが55%低下した。
「インターネット検索」「オンラインゲーム」「ネットショッピング」などのコンピュータ利用に関しては、高齢期のみ調査されたが、やはりMCIのリスクは53%低下していた。
「軽度認知障害」(MCI)を予防するために、中年期頃から血圧を正常にコントロールすることが重要であることが示されたと同時に、アートや工芸、ソーシャル活動、コンピュータ使用などの創造的な趣味も保護的に作用することが示唆された。
「脳の神経細胞の数は、加齢とともに減っていく。脳では多くの神経細胞(ニューロン)が接合し、複雑なネットワーク(神経回路)を形成している。知的で創造的な活動が刺激となり、新しい神経の神経回路の成長や形成が促され、ニューロンが形成するネットワークが減るのを防いでいる可能性がある」と、ロバーツ氏は述べている。
Can Arts, Crafts and Computer Use Preserve Your Memory?(米国神経学会 2015年4月8日)
(Terahata)