一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病とその予防
主な生活習慣病
ニュース

高齢者の衰え「フレイル」に注目 要介護を防ぐための運動と食事

キーワード: ストレス関連疾患/適応障害 三多(多動・多休・多接) セルフケア 健診・保健指導 抗加齢(アンチエイジング)

 高齢者医療に携わる専門職が参加している「日本サルコペニア・フレイル研究会」は10月4日に都内で研究会を開催した。
 高齢者の身体機能や認知機能が低下して虚弱となった状態を「フレイル」と呼び、要介護予備群として注目されている。フレイルを早期に発見し、食事や運動など適切な対応で再び元気を取り戻し、健康寿命を延ばすことが可能になる。
早期に対策すれば要介護に至るのを防げる
 「フレイル」とは、健常な状態と要介護状態(日常生活でサポートが必要な状態)の中間の状態として、日本老年医学会が2014年に提唱した。多くの高齢者は健常な状態から、フレイルの時期を経て要介護状態に至る。

 フレイルには、動作が遅くなったり転倒しやすくなったりするなど身体的な問題だけではなく、認知機能の障害やうつ病などの精神や心理的な問題、独り住まいや経済的な困窮などの社会的な問題も含まれる。

 フレイルの状態を早期発見し、早期に対応することで、要介護に至るのを防ぎ、健康寿命を延ばすことができるのではないかと、さまざまな研究が行われている。

 厚生労働省もフレイル対策を政策に取り入れ始めた。新年度の予算では、「高齢者の低栄養防止・重症化予防等の推進」に10.7億円を新たに要求している。

 後期高齢者医療において、地域の実情に応じて、地域包括支援センター、保健センター、訪問看護ステーション、薬局等など活用し、課題に応じた専門職(管理栄養士、歯科衛生士、薬剤師、保健師など)が、対応の必要性が高い後期高齢者に対して相談や訪問指導等を実施することを目指している。

フレイルを簡単にチェックできる方法を考案
 フレイルの定義は、(1)体重減少、(2)疲れやすさの自覚、(3)日常での活動量低下、(3)歩行速度の低下、(4)筋力(握力)の低下、とされている。

 フレイルの状態に至ると、7年間の死亡率が健常な人に比べて約3倍、身体能力の低下が約2倍という報告がある。基準では筋力低下、体重減少などの身体的な側面が重視されている。

 一般に、筋力は20~30歳頃にピークとなり、以後、徐々に低下していくが、60歳を過ぎると劇的に低下する。

 国立長寿医療研究センターなどの研究班によると、1秒間に1メートル以下になると介護が必要になるリスクが高くなるという。横断歩道の青信号は毎秒1メートルの速度で渡れるように設計されており、横断歩道を渡れなくなると要注意だ。

 また、握力も50歳を超えたころから徐々に低下する。生活活動に何らかの支援を必要とするような障害が出てくる握力の目安は、男性で25kg、女性で20kgだという。

 東京大学高齢社会総合研究機構は、高齢者の筋肉量を簡単にチェックできる目安を考案した。題して「指輪っかテスト」。両手の親指と人さし指で輪を作り、ふくらはぎの一番太い部分を囲む。このとき隙間ができると、筋肉量が少なくなっている可能性が高い。

高齢者の筋肉強化 運動だけでなく栄養も必要
 フレイルを防ぎ健康を回復するにはどうすればよいのだろうか。基本はやはり運動と食事だ。

 筋肉を増やすためには、有酸素運動が必要とされており、ウォーキングがもっとも取り入れやすい。最低でも1日5,000~6,000歩を継続すると筋力の低下を防げる。

 レジスタンス運動(筋トレ)にも筋肉量増加の効果がある。国立長寿医療研究センターによると、ジムなどでトレーナーの指導のもと筋トレを中心とした運動を行うと効果的だが、家庭でもセラバンドというゴムのバンドを用いて、安全に運動を行えるという。

 東京大学高齢社会総合研究機構などの研究班によると、フレイルを防ぐために、栄養状態が低下する前の食事面での早期介入も重要だ。

 食事では、筋肉のもととなるタンパク質の摂取がポイントとなる。高齢者では、食後に誘導される骨格筋におけるタンパク質合成が低下している。タンパク質合成を促すために、高齢者では成人以上にアミノ酸の血中濃度を上げる必要があり、十分なタンパク質を摂取する必要があると考えられている。

 高齢者では腎機能障害をもつ患者も多いので注意が必要だが、フレイルの予防を考えると、性別を問わず体重1kg当たり1gのタンパク質を毎日食事から取ることが望ましい。体重50kgの人の場合は50gだ。肉や魚、大豆、牛乳などがタンパク質を多く含む。

 日本人は平均すると、1日に70歳以上の男性は71.9g、女性は61.5gのタンパク質をとっているが、個人差が大きく、必要量を摂っていない低栄養の高齢者が少なくないので注意が必要だ。

簡易フレイルチェック表を介護予防に活用
 フレイルの基準は、筋力低下、体重減少などの身体的な側面に加えて、精神的な活力の低下も入っている。精神的にも低下している人は、フレイルの状態に陥りやすい。

 東京大学高齢社会総合研究機構は2012年から、千葉県柏市の高齢住民を対象に、フレイル予防の大規模研究に取り組んでいる。その結果などから、要介護に陥りやすい高齢者の傾向がわかってきた。

 約1,800人を対象とした食事調査では、3度の食事を1人でとる「孤食」の人は、1日1回でも誰かと食事する人と比べ、低栄養になったり歩行速度が遅くなったりする割合も高いことが判明した。

 社会との関わりが薄れると、日々の活動量や、健康維持への意欲が低下してしまう。社会活動の低下は、体の衰弱の始まりの目安になるという。「閉じこもらない」ことが、フレイルの予防法になる。

 柏市では研究成果をもとに、計11項目の質問に「はい」「いいえ」で答える簡易フレイルチェック表を作成し、介護予防事業に活用している。

日本サルコペニア・フレイル研究会
国立長寿医療研究センター
東京大学高齢社会総合研究機構
  虚弱・サルコペニア予防における医科歯科連携の重要性

[Terahata]

関連トピック

テーマ ▶ 健診・保健指導

2021年01月22日
【健やか21】日本医学会連合が新型コロナ「重症化リスクをお持ちの皆様へ」注意喚起
2021年01月15日
【健やか21】「子どもの食育を考えるフォーラム」がWeb開催(日本小児医療保健協議会)
2020年12月18日
【健やか21】母子手帳の有用性が示唆―自閉スペクトラム症などの早期発見に(弘前大学)
2020年10月30日
【健やか21】4人に1人は食習慣・運動習慣を「改善するつもりはない」
2020年10月23日
【健やか21】「コロナ禍における自殺の動向に関する分析(緊急レポート)」の報告(中間報告)について(いのち支える自殺対策推進センター)

一無・二少・三多 ▶ 三多(多動・多休・多接)

2021年01月15日
【新型コロナ】医療現場での感染リスクと予防効果を解明 医療者への感染を防ぐために 健診・保健指導にも応用
2021年01月15日
【Withコロナ時代】運動・スポーツを通じて健康二次被害を防ぐポイントは? スポーツ庁がガイドラインを公表
2021年01月15日
「肥満」の原因は自分だけのものではない 子供時代の虐待体験も成人後の肥満に影響 2万人を調査
2021年01月15日
女性の7割が月経前に身体不調を経験 4人に1人は仕事や家事に支障が 「妊娠前(プレコンセプション)ケア」が必要 女性ビッグデータ調査
2021年01月15日
働く人がうつ病になると 「就労の継続への不安」「新型コロナは心身にストレス」 うつ病患者対象の全国調査

テーマ ▶ セルフケア

2020年10月30日
【健やか21】4人に1人は食習慣・運動習慣を「改善するつもりはない」
2019年09月12日
認知症患者を介護する家族は睡眠不足になりやすい 睡眠は保健指導で改善できる
2019年08月23日
「ワークライフバランス」の改善の効果 生活満足度は女性より男性で改善 34ヵ国を比較
2019年07月31日
「口から食べる」ことが健康維持に役立つ よく噛むとホルモン分泌が増える
2019年06月24日
座ったままの生活で死亡リスクは上昇 「1日30分、体を動かそう」

テーマ ▶ 抗加齢(アンチエイジング)

2018年08月24日
簡単な体力テストで糖尿病リスクが判明 握力やバランス感覚が重要
2018年08月06日
2016年度の特定健診の実施率は51.4% 特定保健指導は18.8%で伸び悩み
2018年08月06日
「社会的な孤立」「閉じこもり」は危険 高齢者の死亡リスクが2倍超に
2018年06月22日
「老年医学推進5ヵ年計画」を学会が発表 人生100年時代の高齢者医療
2018年06月13日
水虫に対策するための8つの方法 高齢者の「白癬菌」は要介護のリスクに

疾患 ▶ ストレス関連疾患/適応障害

2021年01月15日
「肥満」の原因は自分だけのものではない 子供時代の虐待体験も成人後の肥満に影響 2万人を調査
2021年01月15日
女性の7割が月経前に身体不調を経験 4人に1人は仕事や家事に支障が 「妊娠前(プレコンセプション)ケア」が必要 女性ビッグデータ調査
2020年12月14日
【新型コロナ】薬膳レシピで「コロナうつ」「コロナ疲れ」に克つ 食養生で心身の不調を解消 近畿大学
2020年12月14日
腸内フローラが「睡眠の質」に影響 腸内環境と脳は相互に作用 食事で睡眠を改善できる可能性
2020年11月06日
睡眠を十分にとれないと肥満や糖尿病が悪化 日本人は睡眠が足りていない こうすれば解決できる
全国生活習慣病予防月間
明治PA3
新着ニュース

トピックス&オピニオン
新型コロナウイルス関連

Dr.純子のメディカルサロン こころがきれいになる医学
保健指導リソースガイド
国際糖尿病支援基金
糖尿病ネットワーク 患者さん・医療スタッフのための糖尿病の総合情報サイト
糖尿病リソースガイド 医師・医療スタッフ向け糖尿病関連製品の情報サイト
日本健康運動研究所 健康づくりに役立つ情報満載。運動理論から基礎、応用を詳細に解説
セルフメディケーション・ネット セルフメディケーションの基礎から薬の知識までさまざまな情報を提供
日本くすり教育研究所 小・中学校で「くすり教育」を担う指導者をサポート