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見つめ合うと脳が反応し相互理解が進む コミュニケーションに必須

キーワード: 三多(多動・多休・多接)

 人間が相互理解する上で、お互いがみつめあい、視覚的な注意を払うことが大切であることが、脳イメージングのもとづく新しい手法で解明された。この研究は米科学誌「ニューロイメージ」に発表された。
みつめあいはコミュニケーション行動に必須な準備段階
 お互いがみつめあい、お互いへ注意を向け合う状態は、人間が他者と複雑なコミュニケーションを行う前に必須な準備段階となる。この状態は、子供から成人へ成長する中で自然と獲得される。互いに注意を向け合うことは、人間が他者とコミュニケーションをとる上での礎であるといえる。

 しかしこれまでの研究では、人が他者とみつめあっている際に脳内で何が起こっているのか、詳細は明らかにされていなかった。そこで自然科学研究機構生理学研究所の定藤規弘教授と名古屋大学の田邊宏樹教授らの研究グループは、人間同士が見つめ合い、互いに注意を向け合うと、脳の活動パターンが変化することを実験で明らかにした。

 研究チームは、脳活動を記録できる特殊な「機能的磁気共鳴画像装置」(fMRI)を用い、二者がみつめあっている際の眼の運動と、脳活動を観察した。

 fMRIは磁場と電波の照射により、非侵襲的に生体の断層画像を撮影する技術で、臨床でも応用されている画像診断技術だ。

 その結果、みつめあいによってお互いに注意を向け合っている状態では、瞬きを含む目の動きが二者間で同期するだけでなく、大脳皮質下前頭回の活動が同期することが明らかになった。

 二者がみつめあい、お互いに視覚的注意を向け合っている状態を「注意共有」という。注意共有は、乳児から成人へ成長する過程において、視線や指差しを駆使して「自分が注目している物事」に他者からの注意を得られるよう働きかける動作(共同注意)などといった、さまざまなコミュニケーション行動に必須な準備段階であると考えられている。

みつめあうとコミュニケーションを円滑にできる
 研究チームが実験で着目したのは、(1)注意共有の際、外見的にはどのような現象が起きているのか、(2)かつて注意共有したことのある相手とははじめての相手とは異なる現象が起きるのか、(3)注意共有をしている最中の脳内神経機構はどうなっているのか、という3点だった。

 実験では、初対面の実験参加者がペアになり、2日間行われた。1日目は、みつめあいによって注意共有状態にある二人の脳活動と瞬きの状態を、fMRI装置を用いて記録した。

 その後参加者ペアは、共同注意課題(みつめあいによる注意共有状態の中で、お互いに視線を使って同じものに注意を向けるという課題)を約50分間行った。

 2日目は1日目と同じペアに対し、1日目と同様にfMRI装置を用いてみつめあいによる注意共有状態の脳活動と行動を計測しました。さらに追加実験として、互いのリアルタイムの表情ではなく、事前に撮影しておいた顔映像をみつめてもらった際の脳活動と行動を記録した。

 その結果、1日目のみつめあいによる注意共有状態の行動指標として、ペアになった二者間の瞬きの同期の度合いを調べたところ、2人の瞬きに特に有意な同期は起きなかった。一方、脳活動では、大脳皮質の右中側頭回において、二者間で同期した活動を示した。

 そして2日目のみつめあい課題では、2人の瞬きに有意な同期がみられた。さらに脳活動では、1日目の実験で有意な活動の同期がみられた大脳皮質の右中側頭回以外に、右下前頭回(弁蓋部)や腹側運動前野といったさらに広い範囲において、2人の脳活動に同期が認められた。観察された脳活動の同期は、瞬きの同期の度合いと関連していた。

新たな行動療法の開発に期待
 「コミュニケーションの礎である注意共有は、瞬きという無意識的に発生する行動を介して二者を繋ぐ働きがあり、二者間の脳活動の状態を同期させる働きがあることが明らかになった。みつめあいによる注意共有は、脳活動のパターンを同一にすることで、その後のコミュニケーションを円滑に開始する働きがある可能性がある」と、定藤教授は述べている。

 今後、注意共有のメカニズムを明らかにすることで、教育現場ではより効果の高い情報伝達手法(学習方法)の開発や、さらにはコミュニケーション全般を不得手とするさまざまな疾患に対する新たな行動療法の開発なども期待できるという。

自然科学研究機構生理学研究所

(Terahata)

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