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若年性認知症の最新情報 自治体の実態調査で問題点が浮き彫りに

キーワード: 「多接」多様なつながり 認知症 健診・保健指導 厚生労働省の調査

 若年性認知症の実態調査を行う自治体が増えており、問題点が浮き彫りになってきた。
 若年性認知症は、患者や雇用主が症状や支援制度を十分理解していない場合、仕事ができるにもかかわらず退職を余儀なくされたり、医療機関を受診せずに症状が悪化したりするケースも少なくない。
 そのため、受け皿となる医療機関や自治体、保健所・保健センター、地域包括支援センターなどによる相談・支援体制の拡充が求められている。
若年性認知症の社会的な影響は大きい
 認知症は、一般的には高齢者に多い病気で、65歳未満で発症した場合は「若年性認知症」とされる。若年性認知症の発症が多い働き盛り世代は、家庭や社会で重要な役割を担っており、病気によって支障が出ると、本人や家族だけでなく、社会的な影響が大きい。

 本人や配偶者が現役世代なので、認知症になると仕事に支障が生じ、結果的に失職して、経済的に困難な状況に陥ることになる。また、子供が成人していない場合には、親の病気が子どもに与える心理的影響が大きく、教育、就職、結婚などの人生設計が変わることにもなりかねない。

 さらに、この世代では本人や配偶者の親の介護などが重なることもあり、そうした場合は介護の負担がさらに大きくなる。介護が配偶者に限られることが多いので、配偶者も仕事が十分にできにくくなり、経済的にも大きな負担を強いられることになる。

 厚生労働省の研究班から2009年に発表された調査結果によると、全国の若年性認知症の人数は約3万7,800人であり、人口10万人当たりでは47.6人だった。発症年齢は平均51.3歳で、50歳未満で発症した人の割合は約3割だった。
社会保障を利用している患者が少ない
 認知症の重症度は、軽度(職業や社会生活には支障があるが、日常生活はほぼ自立)、中等度(自立生活は困難で、見守りあるいは介助が必要)、重度(日常生活動作全体にわたり、介助が必要)の3段階に分けられる。

 愛媛大学が県内の医療機関や老人保健施設で2007年に行った調査では、重度が41%ともっとも多く、次いで中等度が35%だった。40歳以上は介護保険を利用でき、傷病手当金を受けられ、条件を満たしていれば障害年金も受けられるが、調査では利用している人はまだ少ないことも浮き彫りになった。

 社会福祉制度の利用状況をみると、介護保険を申請した割合は57%で、障害者年金、障害者手帳、介護保険制度のいずれも十分に活用されているとはいえない現状がある。年金を受給できる資格があるにも関わらず申請をしておらず経済的に行き詰まるケースは多い。
診断されず治療の開始が遅れるケースが多い
 若年性認知症と診断されず、治療の開始が遅れるケースも多い。神奈川県が2011年に行った調査では、若年性認知症者と推定された人のうち診断された割合は3割弱にとどまった。

 受診しても、うつ病と診断されたり、確定診断までに時間がかかったり、確定診断後も、本人の疾病受容が困難であるなど、受診の継続が難しい。県では「本人や家族を含めた受診援助や心理的支援が必要」と指摘している。

 若年性認知症に特化したサービスが求められているが、相談を受けた場合にサービスを提供するための社会資源の実態が把握できていないのも課題だ。

 静岡県が行った調査では、県内の若年性認知症の人の最初の相談先は「医療機関」が59%を占め、「家族」「地域包括支援センター」「市役所、町役場」はそれぞれ1割未満であることが判明。また、最初に医療機関を選んだ理由については、「家族や知人の紹介」(25%)と「かかりつけ医」(21%)が多かった。

 患者が困っていることは「頼れる人が近くにいない」(43%)、「利用できるサービスがない・少ない」(37%)。発症時に仕事をしていた人は43%で、現在も就労を続けている人は13%だった。

 若年性認知症に対応する医療機関は増えている。青森県が県内の医療機関を対象に実施した調査では、71%の医療機関が「積極的ではないが来院すれば対応している」と回答。

 また、若年性認知症の人やその家族への支援の課題に関する質問では、「早期の段階で受診する人が少ない」(58%)や「診断後、紹介できる支援機関が不明確」(42%)、「症状が進行していることが多く、入院を希望する家族が多い」(22%)、「退院後の受け入れ態勢が整わず、入院の長期化につながっている」(18%)といった回答があった。
若年性認知症の要介護度が判明 進行が早く重症化しやすい
 若年性認知症の要介護度も明らかになっている。三重県の調査では「若年性認知症でない第2号被保険者と比べ、要介護1、要介護5が多い傾向」があるという。こうした傾向から、若年性認知症の人は、認知機能が低下しても身体能力が高い人が多い一方、症状の進行が速く、重症化しやすいことが分かっている。

 家族らからは「若年性認知症の患者はADL(日常生活動作)が高いため目が離せない」「初期の対応が重要だが、専門病院への相談は敷居が高い」「受け入れてくれる介護サービス事業所が少ない」といった回答があったほか、地域で支えていくためのネットワークの構築や近隣住民の理解が必要との回答もあったという。

 昨年1月に厚生労働省が策定した認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)では、若年性認知症の施策の強化を柱のひとつに据え、支援の拡充などを展開する方向性が示された。その中で、地域における認知症ケアの拠点として「認知症カフェ」の普及を積極的に行っていくことが謳われた。認知症カフェとは、「認知症の人と家族、地域住民、専門職などが参加し集う場」と定義されている。

 調査を実施した自治体では、集約したデータを相談・支援体制の拡充に役立てたい考えだ。若年性認知症への理解を深めるフォーラムや認知症カフェを開催したり、医療・介護従事者の研修で対応力の向上を図ったりする動きも出ている。
生活への不安感 早期に対策すれば仕事を続けられる
 厚生労働省は、認知症介護研究・研修大府センターらとの協力により、2014年に愛知、大阪、秋田、山形、富山、石川、福井、岐阜、三重、和歌山、岡山、山口、香川、長崎、宮崎において、若年性認知症の調査を実施した。

 その結果、65歳未満で発症した若年性認知症の人で就労経験がある1,411人のうち、定年前に自ら退職したのは996人、解雇されたのは119人、全体で79%だった。

 発症後の職場の対応につては、「産業医の診察を勧められた」(5.9%)、「専門医を紹介された」(5.4%)、「労働時間の短縮などの配慮があった」(4.5%)、「職場内の配置転換などの配慮があった」(12.7%)となっており、これらの配慮がなかったとの回答も19.5%を占めた。

 認知症となってからの収入は、家族の収入が5割以上を占め、あとは本人の障害年金や生活保護費に頼るしかない。「発症後に収入が減った」という人は6割を超え、半数以上が「生活が苦しい」と答えている。

 認知症が重度になってくれば、現実問題として就労は困難となる。一家の家計を支える働き盛りの50歳代が発症しており、仕事を失ったあとの生活への不安感ははかりしれない。

 症状には個人差があるが、早期に適切な治療を始めれば、進行を遅らせることができる場合もある。労働時間の短縮や配置転換など、仕事を続けるための配慮があれば、働き続けることができた可能性もある。

 身体の障害などであれば、障害者雇用促進法などの法律にもとづき、障害者職業訓練コーディネーターなどが、職場と患者をつなぎ、訓練する役割をする制度があるが、若年性認知症で利用された実績は少ない。症状が徐々に進行していく認知症に関しては、今後の課題となっている。

若年性認知症の取り組み(神奈川県)
若年性認知症実態調査の結果(静岡県)
若年性認知症実態調査(青森県)
若年性認知症実態調査の結果(三重県)
若年性認知症の実態等に関する調査結果(厚生労働省 2009年3月19日)
認知症介護情報ネットワーク(認知症介護研究・研修センター)

(Terahata)

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