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母乳育児が世界を変える 母乳に36兆円の経済効果 82万人の命救う

キーワード: 肥満症/メタボリックシンドローム ストレス関連疾患/適応障害 「多接」多様なつながり セルフメディケーション 健診・保健指導 女性の健康 生活習慣病の医療費

 母乳で子供を育てることで、世界で年間に約36兆円の経済的損失を防ぎ、82万人の命を救うことができるという調査結果が発表された。
 「母乳で育てることは社会に発展につながります。女性の母乳育児をサポートするために、もっと強力な国際プログラムが必要です」と専門家は指摘している。
母乳育児で36兆円の経済損失を回避
 母乳育児をする女性が減ると、子供が成長してから生活習慣病を発症しやすくなり、認知能力も低下する傾向があることが、さまざまな研究で示されている。

 国際的な研究チームは、母乳育児の減少により世界で年間に約36兆円(3,000億ドル)の経済的損失があると試算した。これは世界の医薬品市場に匹敵する規模する数値だ。

 「先進国だけでなく途上国でも、母乳育児をする女性は減っています。母乳を奨励している国は少なくありませんが、母乳育児の割合は増えていません。女性を支援する政策とプログラムが必要とされています」と、ブラジルのペロタス国立大学のセザール ビクトーラ教授は言う。
母乳が年間82万人の命を救う 母親のがん発症も防げる
 世界でもっとも影響力のある医学誌のひとつである「ランセット」は、『ランセット ブレストフィーディング(母乳育児)』というシリーズを設けた。

 このシリーズには母乳育児に関する28件のシステマティックな研究が収録されており、うち22件はこのシリーズに合わせて発表されたメタ解析だ。

 研究チームは、母乳で育てることで得られる利益と、母乳育児をしなかった場合の損失について、1,300件以上の研究を解析した。

 それによると母乳栄養を増やすことで年間に82万人の子供の命を救えるという。これは5歳以下の子供の死亡のおよそ13%に相当する。

 また、母乳で育てることで、子供の下痢のおよそ半分と、呼吸器感染症の3分の1を防ぐことができる。

 母乳育児は母親にとってもメリットがある。母乳で育てることで、乳がんの発症を年間に6%減らし、2万人の女性の死亡を防ぐことができる。母乳育児は卵巣がんのリスクも減らす。

 「保健指導に携わる医療スタッフの間でも、母乳に関する情報に差があります。母乳育児のメリットについて知識をもち、社会に対して啓発していく必要があります」と、ビクトーラ教授は言う。
母乳育児には多くのメリットがある
 母乳は生後0~6ヵ月の子供にとって理想的な食事で、必要な栄養をすべて備えている。粉ミルクなどの人工栄養は栄養バランスを最適化するなど工夫されているが、母乳栄養とのあいだに大きな差がある。

 母乳には赤ちゃんの成長に必要な栄養素以外にもさまざまな酵素やホルモン、成長因子などが含まれている。母乳で育てられた子供は免疫力が強化され、感染症やアレルギーなどを発症が減る。

 母乳に含まれるオリゴ糖などの成分が赤ちゃんの腸内に住むビフィズス菌を増やし、腸内の健康維持に役立つだけでなく、感染症や炎症になるのを防ぐと考えられている。

 3~12ヵ月の期間、母乳で育てられた子供が成人すると、炎症の程度が20~30%低下するという報告もある。慢性炎症は心臓疾患や糖尿病のリスク要因となる。この低下幅は抗炎症剤を服用した場合とほぼ同程度だ。

 母乳で育てられた子供は7~10歳の時期に肥満になりにくいという調査結果もある。

 母乳は子供の認知能力の発達にも長期的な効果を及ぼすことがいくつかの研究で示されている。母乳で育てられた子供は、成長し社会に出てから成功しやすく、年収も多い傾向がある。

 母乳育児は母親のインスリン抵抗性を改善し、肥満や2型糖尿病の発症リスク減らしたり、母親の産後うつ症の発症リスクを低下させる。

 「母乳は母子の健康だけでなく、将来の経済成長にも欠かせない大切な要素です。母乳育児はインパクトの高い介入であり、女性と社会に利益をもたらすことを、科学的に解明していきます」と、世界銀行グループのキース ハンセン氏は言う。
母乳で育てることが社会に発展にもつながる
 母乳栄養で子供を育てる比率を90%に上昇させることで、米国で2,940億円(24.5億ドル)、中国で264億円(2.2億ドル)、ブラジルでは7億円(600万ドル)、それぞれ医療費を削減できる可能性があるという。

 世界保健機関(WHO)は生後0~6ヵ月の授乳期の子供を母乳で育てるべきだと推奨しているが、実際に母乳で育てている比率は全世界で35.7%にとどまる。世界保健総会(WHA)は2025年までに、母乳による授乳を50%に増やす目標を掲げている。

 母乳育児を推進するために、母親が長期の育児休暇をとることが必要になる。育児休暇を6週間までしか認めないことで母乳育児を断念したり、時期か短くなる比率が4倍に上昇するという調査結果がある。

 「子供の健康な発育を促すために母乳育児を推進することが重要です。母親が母乳で育てることを推奨すると同時に、政府や保健関係者、自治体、職場、家族などがサポートして、母乳で育てやすい環境づくりを推進することが必要です」と、ユニセフ(国連児童基金)のワーナー ショウテンク栄養部長は言う。

 母乳育児は究極的に個別化された営みだが、子供の健康な発育に欠かせないことは医学的に解明されている。

 「母乳で育てることが社会に発展にもつながります。世界中の子供たちが人生のはじまりを母乳栄養からはじめられるよう、科学的な研究や政治的な支援、投資によって介入するべきです」と、ビル&メリンダ ゲイツ財団のCEOであるスー デズモンド ヘルマン氏は言う。

Breastfeeding could add $300 billion into the global economy(Guillermo Meneses 2016年1月28日)
Lancet breastfeeding series(ランセット 2016年1月28日)
The Lancet: Breastfeeding could add $300 billion into the global economy and save lives(世界保健機関 2016年1月28日)

(Terahata)

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