2016年03月30日
温州ミカンの「β-クリプトキサンチン」が生活習慣病の予防に有用
キーワード: 脂質異常症(高脂血症) 糖尿病 がん セルフケア トクホ 健康食品

農業・食品産業技術総合研究機構は、浜松市での10年間の追跡調査の結果、温州ミカンに含まれる「β-クリプトキサンチン」を多く摂取すると、2型糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病の予防に有用である可能性があるという研究を発表した。
欧米などの最近の栄養疫学研究から、果物・野菜の摂取が、がんや循環器系疾患の予防に重要であることが明らかにされつつある。また、これらの生活習慣病の発症に酸化ストレスが関与しており、果物・野菜に多く含まれるカロテノイドなどの抗酸化物質が酸化ストレスを軽減することでさまざまな生活習慣病の予防に有効である可能性があると考えられるようになってきた。
糖尿病リスクが57%、脂質異常症リスクが34%低下
カロテノイド色素は天然に存在する色素であり、ニンジンやカボチャに多いβ-カロテン、トマトに多いリコペン、緑色野菜に多いルテインなどがある。β-クリプトキサンチンは日本の温州ミカンに多く含まれている。
農研機構果樹研究所は、浜松医科大学健康社会医学講座、浜松市(旧三ヶ日町)と合同で2003年度から継続して栄養疫学調査「三ヶ日町研究」を実施。この研究では、温州ミカンに多く含まれるβ-クリプトキサンチンや緑黄色野菜に多いβ-カロテン、葉物野菜に多いルテインなどのカロテノイド色素とさまざまな健康指標との関連を調査している。
研究チームは、調査開始から10年間で追跡調査が完了した910人について、β-クリプトキサンチンをはじめとする血中カロテノイド値と2型糖尿病などの生活習慣病の発症リスクとの関連について縦断的に解析した。
まず、調査開始時にすでに2型糖尿病を発症していた被験者を除いて、血中β-クリプトキサンチン濃度について、低いグループから高いグループまでの3グループに分け、各グループの2型糖尿病の発症率を調査。その結果、血中β-クリプトキサンチンが高濃度のグループにおける2型糖尿病の発症リスク(ハザード比)は、低濃度のグループを1.0とした場合0.43となり、有意に低い結果となった。
また同様に、血中β-クリプトキサンチンが高濃度のグループにおける脂質異常症の発症リスクは、低濃度のグループを1.0とした場合0.66となり、有意に低い結果となった。
さらに、血中β-クリプトキサンチンが高濃度のグループにおける非アルコール性肝機能異常症(血中高ALT値)の発症リスクは、低濃度のグループを1.0とした場合0.51となり、有意に低い結果となった。どの関連も、喫煙・運動習慣や総摂取カロリー、アルコール摂取量などの影響を取り除いても統計的に有意だったという。

「三ヶ日みかん」が機能性表示食品に
なお、調査開始時の血中β-クリプトキサンチン濃度の平均値は、低グループでおよそ0.5μM、中グループで1.5μM、高グループで3.5μMだった。それぞれの温州ミカンの摂取量は、低グループでは「毎日は食べていない」、中グループでは「毎日1?2個」、高グループでは「毎日3?4個」食べていた。
これまで同研究所では、β-クリプトキサンチンの骨の代謝に与える効果を明らかにしてきた。また、温州ミカン中のβ-クリプトキサンチン含有量の保証技術の開発に取り組んできた。これらの研究成果により、生鮮品としては初めて「三ヶ日みかん」が骨の健康に役立つ機能性表示食品として発売された。
今回新たに得られた知見をもとに、温州ミカンの機能性訴求ポイントを増やすために産地と検討を進めていくとしている。
農業・食品産業技術総合研究機構
(Terahata)