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高齢者ではメタボより「低栄養」が介護や死をまねく 認知症やロコモも

キーワード: 骨粗鬆症/ロコモティブシンドローム/サルコペニア セルフケア 健診・保健指導 食事

 高齢者の健康指標として、新たに注目されているのが「低栄養」の予防だ。「介護が必要な人を減らすための国の対策として、認知症やロコモの啓発に加え、高齢者の低栄養を改善していく必要がある」と専門家は指摘している。

 メタボリックシンドロームや肥満は、心臓病や2型糖尿病、高血圧などの生活習慣病の危険性を高めるので、「粗食が大切」といった健康法がメディアで盛んに紹介されいる。

 しかし、高齢者になるとそれが当てはまらない。むしろ高齢者では粗食による「低栄養」に注意した方が良いことが、さまざまな研究で明らかになっている。

 3月30日に都内で開かれた「健康日本21推進フォーラム」のマスコミセミナーで東京都健康長寿医療センター研究所の新開省二副所長が講演した。

「低栄養」はがんや心臓病などの死亡リスクを高める

 国民の健康の増進を目的とした「健康づくり運動」を展開する「健康日本21」。その第2次運動「健康日本21(第2次)」では、要介護者を減らすための対策として、従来の認知症やロコモティブシンドローム(ロコモ)の啓発に加え、低栄養傾向(BMI 20以下)の高齢者の割合を22%に減らすことが掲げられている。

 自立して生活を送ることができる期間を示す「健康長寿」を延ばすためにどうすれば良いか。その条件を解明するために東京都健康長寿医療センター研究所は調査を続けている。

 東京都在住の65~84歳の高齢者996人と、秋田県在住の65歳以上の940人を対象とした調査では、栄養、体力、血液成分や、生活面、身体面、心理面について調べ、対象者の健康状態の推移を長期間追跡した。

 その結果、栄養状態を「BMI(肥満指数)」「血中アルブミン」「総コレステロール値」「ヘモグロビン値」の4つの指標で評価して4段階に分類したところ、いずれの指標でももっとも低いグループで死亡リスクがもっとも高かったという。

 また、歩く速さが早い、握力が強いなど、体力がある高齢者や、仕事や地域活動など、何らかの社会活動を続けている高齢者では健康長寿が長い傾向が示された。

 さらに、1,033人のデータを分析したところ、栄養状態が「中程度」「高栄養」に比べ、「低栄養」でがんや心臓病などで死亡する人が多かったという。

 結果として「栄養の取り過ぎで心臓病死の危険性が高まる中年とは違い、高齢者では低栄養(栄養不良)の方が死亡リスクが高くなる」ことが明らかになった。

要介護を減らすために低栄養の改善が必要

 「介護が必要な人を減らすための国の対策として、認知症やロコモの啓発に加え、高齢者の低栄養を改善していく必要がある」と、新開副所長は指摘する。

 低栄養の状態は、心筋梗塞や狭心症など心血管病による死亡の危険度を高めることも分かった。高栄養群に比べ、低栄養群では心血管病による死亡の危険度が2.5倍に上昇した。

 「低栄養の状態が続くと、体にはさまざまな問題が生じてきます。例えば摂取エネルギーが不足すると、本来は体をつくるために使われるタンパク質で、エネルギーの不足分を補うようになります。その結果、タンパク質が不足し血管が弱くなり動脈硬化を起こしやすくなります」と、新開副所長は強調する。

 では、高齢者の食事ではどんなことに気を付ければよいのだろうか。新開副所長は「肉や魚介類、卵、大豆や大豆製品、牛乳や乳製品、緑黄色野菜、海藻類、イモ類、果物など、いろいろな種類の食品を日常的に食べることが望ましい」と説明。

 赤血球数が少ない、総コレステロール値が低い、アルブミン値が低いといった低栄養の高齢者ほど、認知機能が低下しやすいことも分かっている。

 さらに、握力が弱い人ほど心血管病などによる死亡率が高いことも示された。栄養状態が良い高齢者ほど握力が強く筋肉量も多い。全身の筋肉量は寿命と関係している。栄養状態が良いと握力が維持され、筋肉量も保たれるという因果関係がある。

「老化予防をめざした食生活指針」を作成

 BMIが20以下、低タンパク、栄養不良の指標になり死亡率が増える「アルブミン4.0g/dL以下」を低栄養とし、厚労省「国民健康・栄養調査」の結果から調べたところ、「65歳以上の2~3割」が低栄養と判明した。

 「高齢者でやせの人の割合はこの10年間ほぼ横ばいですが、血中アルブミン値が低い人は増加しています。やせの割合があまり変化していないのは、食べる量が減るとともに、運動量も減っているからだと考えられます。この10年間で日本人の1日の平均歩数は約1,000歩も減少しています」と、新開副所長は言う。

 東京都健康長寿医療センター研究所は得られた研究データをもとに、「老化予防をめざした食生活指針」を作成した。指針では、牛乳や肉、魚など動物性タンパク質を十分に摂取すること、油脂類が不足しないことなど、14ヵ条を示している。

 この指針を用いて高齢者を対象に栄養改善運動を実施したところ、対象者の血中アルブミン値、血中ヘモグロビン値が改善し、体力水準が上がり、寿命も延びるという効果が得られた。

高齢者に勧められる食品は「牛乳」

 いろいろな食品から栄養をしっかりとることが認知症の予防にもつながるが、特に勧めているのは牛乳だという。

 「牛乳・乳製品に豊富に含まれるカルシウムやタンパク質は、骨や筋肉の材料でもあり、骨や筋肉の機能を維持するためにも大切。ロコモティブシンドローム予防のためにも、十分な栄養摂取が望まれます」と、新開副所長は言う。

 日本で行われた大規模な疫学調査「NIPPON DATA」では、牛乳・乳製品の摂取量が多い女性ほど、心血管疾患による死亡リスクが低下するという結果が得られた。

 今後、特に都市部では一人暮らしの高齢者が増加しており、社会全体で高齢者の食生活を支える仕組みを整備する必要がある。できれば自分で外出し、買い物、調理することが勧められる。外出すればいろいろな人と会話する機会にもなり、自分で調理すれば脳の訓練にもなる。

 「病気と加齢は両方ともに体のネガティブな変化ですが、本質的に違うものです。高齢期は、生活習慣病を抑えるのに加え、老化の進行をいかに遅らせるかという視点をもたなければなりません。それには、からだの栄養状態を良好に保つことが必要です。また、糖尿病や腎臓病などの病気を予防・コントロールするための食事も、高齢期の健康を保証するものでなければなりません」としている。

 高齢者一人ひとりの啓発も重要だが、食生活を楽しむための環境づくりも進めていく必要もある。「一人暮らしの方が社会活動に参加できるよう支援するための環境づくりを、地域の行政や団体、研究機関などとともに進めることが求められている」と、新開副所長は指摘している。

健康日本21推進フォーラム
東京都健康長寿医療センター研究所

(Terahata)

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