一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病とその予防
主な生活習慣病
ニュース

アルコールの飲み過ぎで「腸内フローラ」が悪化 肝炎や大腸がんに影響

キーワード: 脂肪肝/NAFLD/NASH がん 「少酒」お酒はほどほどに 食生活

 アルコールは腸内環境に影響しており、習慣的に飲み過ぎている人は「腸内フローラ」が悪化することが判明した。腸内細菌の環境が悪化することで肝炎や大腸がんの発症リスクが高まる。
腸内フローラが健康や生活習慣病に影響
 「腸内細菌」はヒトの腸内に生息している細菌のことで、細菌の研究で健康や生活習慣病の発症に大きな役割を果たしていることが明らかになってきた。

 ヒトの大腸には1,000種類を超える細菌が生息し、その細胞数は数百兆個とみられている。成人のヒトの体を構成する細胞数がおよそ37兆個なので、大腸内の細菌の細胞数は、ヒトの体細胞数よりもずっと多いことになる。

 大腸に生息する腸内細菌の総重量は1~1.5kgで、肝臓の重さとほぼ同じだ。その働きが健康と密接な関わりをもつことから、腸内細菌は「第3の臓器」と呼ばれることがある。

 これらのさまざまな細菌は、小腸から大腸にかけて、種類ごとにグループを形成して、腸の壁面にすんでいる。顕微鏡で腸の中をのぞくと「お花畑」(フローラ)にように見えることから、「腸内フローラ」と呼ばれている。
アルコールを摂り過ぎると腸内フローラが悪化
 アルコールを適度に摂取すると血行が良くなり、胃腸の動きを活発にしたり、消化酵素の分泌を促す働きを得られる。これらの作用によって食欲がアップする効果を得るために、食前酒という習慣がある。

 しかし、アルコールは腸にとって刺激物だ。米国国立衛生研究所(NIH)の研究によって、アルコールを摂り過ぎると、腸内で毒性の強い細菌が増え、腸内フローラが悪化してしまうおそれがあることが判明した。

 アルコール摂取は腸内フローラを変化させ、腸内フローラそのものがアルコールの産生や分解に影響している。腸内細菌で産生されたアルコールは、健康な人では速やかに分解され、有害な作用を示さない。しかし、腸内フローラのバランスが崩れると、アルコールが分解されなくなる。

 脂肪肝の程度が進むと、肝臓に炎症が起こり、肝細胞が急激に壊されて機能しなかったり、脂肪化が進み「脂肪性肝炎」という状態になる。

 アルコールの飲み過ぎ以外の肥満や過食、運動不足、2型糖尿病などを原因とする脂肪性肝炎を「非アルコール性脂肪性肝炎」(NASH)という。

 NASHの患者の腸内では、アルコールが分解されなくなり、エタノールを産生する腸内細菌が増加し、血中のアルコール濃度が高値になりやすいことが判明した。アルコールの毒性の影響が強くなり、脂肪肝がさらに進行しやすい危険な状態になるという。
多量飲酒を続けている人の腸内フローラを調査
 多量の飲酒を長い間続けていると、腸内環境にどのような変化が起こるのだろうか? 東北大学大学院工学研究科と、アルコール依存症の専門外来のある久里浜医療センター、国立がん研究センターなどの共同研究チームが、アルコール依存症患者の腸内フローラを調べる研究を行った。

 「アルコール依存症」は薬物依存症の一種で、飲酒によって得られるアルコールの作用に依存的になり、飲酒行動を自らコントロールできなくなる疾患。このアルコール依存症に、腸内フローラが影響しているという。

 研究チームがアルコール依存症患者16人と健常者48人の糞便の菌叢構造を比較した結果、大きな違いがあることが判明した。

 患者の便では、酸素がある環境では生育できない腸内細菌群(偏性嫌気性菌)が減少し、酸素のある環境でも生息できる腸内細菌群(通性嫌気性菌)が増加していた。

 「偏性嫌気性菌」には、腸内フローラを構成する主な腸内細菌であるビフィズス菌、バクテロイデス、ユーバクテリウム、クロストリジウムなどが含まれる。これに対し、「偏性嫌気性菌」には、乳酸桿菌、大腸菌、腸球菌などがある。
腸内フローラが悪化するとがん原因物質が増える
 喫煙習慣が加わることで、偏性嫌気性菌が減る傾向が強まることも判明した。飲酒や喫煙により、体内には老化や発がんの原因物質となる「活性酸素」が生じることから、研究グループでは、腸内フローラの変化がアルコール代謝で生じる活性酸素に関係していると考えている。

 さらに、アルコール依存症患者の腸内フローラには、アルコールからアセトアルデヒドを生成する能力がほとんどないことも突き止めた。過去の研究で、アルコールを代謝する過程でできる毒性のある成分であるアセトアルデヒドを生成する腸内細菌の多くが偏性嫌気性菌であることが分かっている。

 アセトアルデヒドは二日酔いの原因物質だが、WHOの国際がん研究機関「IARC」は、飲酒に関連するアセトアルデヒドには発がん性があるという研究結果を2010年に発表した。

 久里浜医療センターがアルコール依存症患者を対象にした調査では、大腸鏡検査による良性腫瘍の発見率が54%、がん(主に上皮内がん)が6%と、健常者よりも高い値が示された。

 アルコールを大量に飲むのを習慣としている人は、大腸がんを発症しやすいことが知られており、アルコールから生成したアセトアルデヒドが悪玉だと考えられている。今回の研究は、なぜ多量飲酒が大腸がんのリスクを高めるのかを解明するための重要な糸口となる。

 この研究は科学誌「サイエンティフィック リポーツ」オンライン版に発表された。

Alcohol, Intestinal Bacterial Growth, Intestinal Permeability to Endotoxin, and Medical Consequences(Alcohol 2008年5月27日)
Ecophysiological consequences of alcoholism on human gut microbiota: implications for ethanol-related pathogenesis of colon cancer(Scientific Reports 2016年6月13日)
アルコール症スクリーニングテスト(久里浜医療センター)
[Terahata]

関連トピック

疾患 ▶ がん

2021年01月14日
【セミナーレポート】今こそ“栄養のすすめ”−ウイルス、癌、認知症に打ち克つ力を!−Web配信中! 健康と長寿によって、活力ある未来社会の実現を目指す「世界健康フォーラム2020」
2020年12月14日
【新型コロナ】がん検診の受診者が減少 このままだと死亡リスクが上昇 コロナ下でも「がん検診は必要」
2020年12月14日
肥満や糖尿病に「コーヒー・緑茶・アルコール」は良い・悪い? どれくらい飲むと健康効果を期待できる?
2020年11月26日
ウォーキングなどの運動が体と心を健康にする がんサバイバーにも恩恵 どんな運動が良いのか?
2020年11月26日
乳がんサバイバーの体験・悩み・知恵をAIで共有するエピソードバンクを開発 大学と患者グループが共同で運営

生活習慣 ▶ 食生活

2021年01月15日
【新型コロナ】医療現場での感染リスクと予防効果を解明 医療者への感染を防ぐために 健診・保健指導にも応用
2021年01月15日
日本人に「低炭水化物ダイエット」は効果がある? 肥満やメタボの食事療法としては勧められる?
2021年01月15日
【健やか21】「子どもの食育を考えるフォーラム」がWeb開催(日本小児医療保健協議会)
2021年01月14日
【セミナーレポート】今こそ“栄養のすすめ”−ウイルス、癌、認知症に打ち克つ力を!−Web配信中! 健康と長寿によって、活力ある未来社会の実現を目指す「世界健康フォーラム2020」
2020年12月24日
【新型コロナ】年末年始は「真剣勝負の3週間」 みんなで危機感を共有しコロナ収束の突破口に

一無・二少・三多 ▶ 「少酒」お酒はほどほどに

2021年01月15日
女性の7割が月経前に身体不調を経験 4人に1人は仕事や家事に支障が 「妊娠前(プレコンセプション)ケア」が必要 女性ビッグデータ調査
2021年01月15日
働く人がうつ病になると 「就労の継続への不安」「新型コロナは心身にストレス」 うつ病患者対象の全国調査
2020年12月18日
【新型コロナ】日本のワクチン開発はここまで進んでいる 日常での感染防止をしっかり続ける必要が
2020年12月14日
【新型コロナ】がん検診の受診者が減少 このままだと死亡リスクが上昇 コロナ下でも「がん検診は必要」
2020年12月14日
肥満や糖尿病に「コーヒー・緑茶・アルコール」は良い・悪い? どれくらい飲むと健康効果を期待できる?

疾患 ▶ 脂肪肝/NAFLD/NASH

2020年10月26日
毎日の歩数が多いほど死亡リスクは低下 1日の歩数を1000歩増やすだけでも効果
2020年08月28日
日本人は肥満ではなくても脂肪肝になりやすい サルコペニア予備群の段階で対策を
2020年08月12日
ウォーキングなどの運動は「魔法の薬」 座ったままの時間を減らすだけでも効果 室内運動もお勧め
2020年08月12日
全国の1万人超の健康診断の受診状況や病気予防への取組みを調査 できない理由は「何をすればよいか分からない・お金がかかる・面倒」
2020年01月09日
7月12日は「人間ドックの日」 ロゴマークの募集を開始 日本人間ドック学会
全国生活習慣病予防月間
明治PA3
新着ニュース

トピックス&オピニオン
新型コロナウイルス関連

Dr.純子のメディカルサロン こころがきれいになる医学
保健指導リソースガイド
国際糖尿病支援基金
糖尿病ネットワーク 患者さん・医療スタッフのための糖尿病の総合情報サイト
糖尿病リソースガイド 医師・医療スタッフ向け糖尿病関連製品の情報サイト
日本健康運動研究所 健康づくりに役立つ情報満載。運動理論から基礎、応用を詳細に解説
セルフメディケーション・ネット セルフメディケーションの基礎から薬の知識までさまざまな情報を提供
日本くすり教育研究所 小・中学校で「くすり教育」を担う指導者をサポート