一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病
最近の関連情報・ニュース

運動の効果が上がらないのは「運動抵抗性」のせい 原因ホルモンが判明

キーワード: 糖尿病 「多動」身体を活発に動かす 運動

 ウォーキングなどの運動を行っても、なかなか成果を得られないのは、運動の効果を打ち消す「運動抵抗性」という病態が起きているからかもしれない。
 運動の効果を無効にするホルモンがみつかり、運動の効果を増強する薬の開発が視野に入ってきた。
肝臓ホルモン「ヘパトカイン」が運動の効果を無効に
 運動にはさまざまな健康増進の効果があるが、その効果には個人差がある。運動をしていても効果を得られにくい原因のひとつは、肝臓ホルモン「ヘパトカイン」が骨格筋に作用し、運動の効果を無効する「運動抵抗性」が起きているからだと、金沢大学の研究チームは考えている。

 研究チームは、肝臓から分泌されるホルモン「セレノプロテインP」を同定。このような肝臓から分泌され、全身にさまざまな作用を及ぼすホルモンを「ヘパトカイン」と総称することを提唱している。

 研究チームは2010年に、2型糖尿病患者の血液中に「ヘパトカイン」のひとつである「セレノプロテインP」が増えていることと、「セレノプロテインP」が血糖値を上昇させることを明らかにした。最近では、脂肪肝の患者や高齢者でも「セレノプロテインP」の血中濃度が高いことが報告されている。
原因ホルモンをなくすと運動能力が2倍に上昇
 研究チームは、「セレノプロテインP」を生まれつきもたないマウスでは、同じ強さ・同じ時間の運動療法を行っても、通常のマウスと比べて運動のさまざまな効果が倍増することを突き止めた。

 マウスに1日30分の走行トレーニングを1ヵ月行わせたところ、「セレノプロテインP」をもたないマウスでは正常マウスと比べて、同じ強さ・同じ時間のトレーニングをしたにもかかわらず、運動限界能力が約2倍に上昇していた。

 同様に、1ヵ月の走行トレーニングの後に、インスリンの注射を行ったところ、「セレノプロテインP」をもたないマウスでは、インスリンによる血糖低下作用が大きくなることが分かった。

 さらに、健常者を対象にした臨床研究では、血液中の「セレノプロテインP」の濃度が高かった人は、低かった人に比べて、有酸素運動トレーニングをしても運動の効果が向上しにくいことが判明した。

 研究チームは、運動習慣のない健常者女性31人に、有酸素運動トレーニングを8週間行ってもらい、有酸素運動能力のマーカーとして最大酸素摂取量を測定した。

 トレーニングの前後で、全体では最大酸素摂取量は高まったが、トレーニングをしてもあまり最大酸素摂取量が増加しない被験者では、トレーニング前の血液中の「セレノプロテインP」の濃度が高いことが分かった。
新しい「運動効果増強薬」の開発も
 「セレノプロテインP」の血中濃度は、2型糖尿病や脂肪肝の患者、高齢者で上昇する。そうした人では「セレノプロテインP」が過剰にあるため、運動を行っても、その効果が起こらないという「運動抵抗性」で生じている可能性がある。

 今回の研究では、運動の効果に個人差がある原因のひとつが解明された。研究チームは今後、2型糖尿病などの身体活動低下に関連した疾患に対して、「セレノプロテインP」とその受容体を標的にした新しい「運動効果増強薬」の開発や、測定による運動効果の出やすさの診断などにつなげたいとしている。

 研究は、金沢大学医薬保健研究域医学系の金子周一教授、篁俊成教授、御簾博文准教授らの研究チームによるもの。同志社大学、筑波大学、アルフレッサファーマの研究グループと共同で行われた。成果は、医学誌「ネイチャー メディスン」オンライン版に発表された。

肝臓ホルモン「ヘパトカイン」が運動の効果を無効に(科学技術振興機構(JST) 2017年2月28日)

(Terahata)

関連トピック

疾患 ▶ 糖尿病

2019年07月30日
運動をすると脳のインスリン抵抗性が改善 糖尿病や肥満の人で効果
2019年07月29日
植物ベースの食事が糖尿病リスクを減少 高カロリー飲料はがんリスクも上昇
2019年07月26日
糖尿病の人は熱中症リスクが高い? 熱中症を予防するための10ヵ条
2019年07月25日
2型糖尿病患者の半数がCKD未診断 腎臓病が進行してからでは手遅れ
2019年07月23日
玄米への健康食としての期待が上昇 食べやすい新タイプの玄米も登場

テーマ ▶ 運動

2019年07月30日
運動をすると脳のインスリン抵抗性が改善 糖尿病や肥満の人で効果
2019年07月26日
糖尿病の人は熱中症リスクが高い? 熱中症を予防するための10ヵ条
2019年07月04日
暑さに対策してウォーキング 熱中症を予防するための10ヵ条 夏も安全に運動
2019年06月28日
人生の後半戦で「運動療法」は絶対に必要 若さを保つためにも必須
2019年06月24日
座ったままの生活で死亡リスクは上昇 「1日30分、体を動かそう」

一無・二少・三多 ▶ 「多動」身体を活発に動かす

2019年07月11日
運動が寿命を延ばす 中高年になってから運動をはじめても十分な効果が
2019年06月24日
脂肪肝は内臓脂肪よりも深刻? 脂肪肝が筋肉のインスリン抵抗性を引き起こす
2019年06月13日
日本小児科学会などが「幼児肥満ガイド」を作成 小児期の肥満は成人後にリスクに
2019年06月10日
運動が高齢者の「ADL(日常生活動作)」を高める 1日1万歩を達成できなくても効果がある
2019年05月31日
「インターバル運動」が2型糖尿病患者の心臓を守る 3ヵ月の運動で効果
全国生活習慣病予防月間
大正製薬 コバラサポート
新着ニュース
毎年2月は、全国生活習慣病予防月間
Dr.純子のメディカルサロン こころがきれいになる医学
保健指導リソースガイド
乳がん治療と乳房再建の情報ファイル
国際糖尿病支援基金
糖尿病ネットワーク 患者さん・医療スタッフのための糖尿病の総合情報サイト
糖尿病リソースガイド 医師・医療スタッフ向け糖尿病関連製品の情報サイト
日本健康運動研究所 健康づくりに役立つ情報満載。運動理論から基礎、応用を詳細に解説
大人の健康生活ガイド 30代以上の中高年者に関する健康情報を提供
セルフメディケーション・ネット セルフメディケーションの基礎から薬の知識までさまざまな情報を提供
日本くすり教育研究所 小・中学校で「くすり教育」を担う指導者をサポート
病気別BEST100サイト 知りたい病気の最新情報がすぐにわかる、病気サイトの百科事典