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乳がん検診は今後はどう変わる? 「高濃度乳房」の実態調査を開始

キーワード: 二少(少食・少酒) がん 抗加齢(アンチエイジング) 女性の健康

 厚生労働省の「がん検診のあり方に関する検討会」は、脂肪が少なく乳腺の密度が高い「高濃度乳房」の実態を把握するための調査などを実施する研究班を立ち上げることを決めた。

 女性が発症するがんでもっとも多い乳がんの検診で、がんが見逃されるリスクが比較的高い「高濃度乳房」という体質の女性にどのように通知するか、対応が定まっておらず、患者団体などから批判が出ている。
なぜ高濃度乳房では、乳がんの診断が困難なのか
 乳房の土台を作っている「乳腺実質」は、乳汁を作る乳腺と、乳汁を乳頭に運ぶ管から形成されている。その周りを脂肪組織が囲むように覆っている。このうち高濃度乳房とは、乳腺実質の割合が多い乳房のことだ。これに混在する脂肪の割合が40~50%程度以下を目安にして判断する。

 乳房にX線を照射すると、乳腺実質は白く、脂肪組織は黒く写し出される。高濃度乳房の患者では、乳腺の割合が多いため、乳房の大部分が白く、そして濃く写る。

 マンモグラフィで撮影すると腫瘍(乳がん)の部分が白く映るが、高濃度乳房の方の場合、乳房の多くの部分が強い白色で映し出されるため、腫瘍が検出されにくくなってしまう。そのため、高濃度乳房の女性では、乳がんなどの異常が発見されにくくなる。

 日本乳癌学会によると、日本人女性のおよそ4割は乳腺の密度が高い高濃度乳房だと推定されている。
音波検査導入の効果に関するエビデンスは十分ではない
 乳がんの発症率が高くなる40歳代の女性は、高齢者と比較して、高濃度乳房の比率が高いことが分かっている。また、日本人を含むアジアの女性では、欧米の女性と比べ、高濃度乳房の比率が高いとされている。

 高濃度乳房の場合、脂肪性乳房よりもマンモグラフィの診断精度が落ちてしまうが、日本では高濃度乳房であるかどうかを対策型乳がん検診受診者に通知していない。

 高濃度乳房の告知を行う動きは海外でも広がっている。米国では半数以上の州で高濃度乳房の告知を行っている。米国では2009年から8年間で27州において告知を行うようになった。ただし、米国の乳がん検診は任意型の検診であり、日本で行われている対策型検診とは制度が異なる。

 受診者への高濃度乳房の通知について問題提起されたことで、マンモグラフィに追加して、超音波検査も対策型乳がん検診に追加すべきではないかという議論もされていで、日本乳癌検診学会のワーキンググループで対応策を検討している。

 現時点では「マンモグラフィに超音波検査を追加して行うことについては、超音波検査導入の効果に関するエビデンスと導入体制が十分ではないことから、国および関係各団体は協力して検討して行く必要がある」という結論が出されている。
対策型検診では「高濃度乳房」はほとんど通知されていない
 日本乳癌学会もウェブサイトの一般向けページで、「一部の乳がんはマンモグラフィで写し出せない場合があることも知られており、マンモグラフィ検診を受けていれば万全ということではありません。マンモグラフィ検診を受けて『異常なし』と判定されていても、自己検診などでご自分の乳房に何か気になることがあれば医療機関を受診してください」と説明している。

 日本で行われている乳がん検診には、対策型(住民検診型)と、任意型(人間ドック型)の2つがある。対策型検診とは、集団全体の死亡率減少を目的として実施するもので、公共的な予防対策として行われる。これに対して、任意型検診の方法や提供体制はさまざまで、医療機関や検診機関が行う人間ドックが典型的だ。

乳がん検診の「住民検診型」と「人間ドック型」の違い
 対策型がん検診
(住民検診型)
任意型がん検診
(人間ドック型)
提供機関市区町村医療機関や検診機関
目的国民全体の乳がん死亡率低下個人の健康のためや会社の福利厚生など
検査内容原則はマンモグラフィ原則はマンモグラフィであるが、正しい理解が得られる説明のもとで個人の判断で超音波検査や乳房MRIも選択可能
実施対象国や行政が対象者を指定
(対象年齢:40歳以上)
(検診間隔:2年に1度)
任意であり定義なし
検診費用無料あるいは少額の自己負担自己負担が原則。保険者などが補助を行っている場合もある
出典:科学的根拠に基づくがん検診推進のページ

 多くの女性が公的資金(税金)を使用して受診をする対策型検診では、現時点では検診マンモグラフィで高濃度乳房であることが確認されていても、それを検査結果として、受診者すべてに通知することは義務づけられていない。
超音波検査では偽陽性など不利益が増えるおそれがある
 課題となっているのは、乳がんの可能性がある場合は、超音波検査が効果的な検査法となるかがまだ分かってないことだ。

 日本乳癌検診学会によると、検診でマンモグラフィを行い高濃度乳房がわかった場合、現時点では高濃度乳房の受診者に対して死亡率減少を認める科学的根拠のある有効な検診方法はない。

 そのため、マンモグラフィ以外の検査を受けたとしても、必ず病変が発見されるわけではない。さらに他の検査を追加すると偽陽性などの検診の不利益が増加することおそれもある。

 厚労省の検討班でも「高濃度乳房がどういう影響をもたらすか、受診者に説明できるようでないと、希望については聞けない」「高濃度乳房と知らされたことによって起こる不利益についても考えなければならない」といった意見が出された。

 厚生労働省が立ち上げた「J-START」試験では、超音波検査を併用する検診と併用しない検診(マンモグラフィのみ)を比較する試験を世界ではじめて実施し、超音波検査が有効かどうかを検証している。対象となっているのは40歳代の女性だ。

 その結果、マンモグラフィと超音波検査の両方を行う検診で、早期乳がんの発見率が約1.5倍になるという結果が報告されている。しかし、死亡率の減少効果までは確認されておらず、さらに超音波検査を追加すると偽陽性も増加して受診者の不利益が増すことも明らかになっている。

乳がん死亡率を低下させると証明されているのはマンモグラフィのみ
 日本乳癌検診学会によると、現在のところ、乳がんの死亡率を低下させる効果が証明されている検査方法はマンモグラフィのみだ。また、高濃度乳房に対しての理解は、まだ一般的に十分に浸透しているとはいえない。

 そのため、受診者が高濃度乳房のことを十分理解できるよう説明を行い、通知後に適切な行動をとれるよう指導できる体制の整備が必要だという。しかし、現状はそういった体制の整備が整っていない。

 そのため、このまま通知のみが行われてしまうと、通知を受けた人は不要な不安や精神的負担を被るおそれがある。

 日本乳癌検診学会のワーキンググループは今後、受診者のニーズをふまえたよりよい通知の方法について対応を検討していくという。

マンモグラフィ検査と超音波検査のメリット・デメリット
 メリットデメリット
マンモグラフィ
  • 乳がん死減少効果が証明されている
    (世界的にも乳がん検診の基本の検査として認められている)
  • 精度管理基準も明確
  • X線を使用するので被曝がある
    (適正な撮影が行われている場合は被曝による不利益は問題とならない)
  • 検査時に乳房を圧迫するため痛みを伴うことがある
  • 高濃度乳房では腫瘤に対する検出力が低い
超音波検査
  • 検査に伴う痛みがない
  • 検査施行による被曝はない
  • 侵襲性が少なく、繰り返し検査を行うことが可能
  • 見つかった病変は生検で比較的容易に組織を採取することが可能
  • 客観性に乏しく検査者の技量にその結果が依存する
    (精度管理をすることが非常に難しい)
  • 超音波検査による要精査が多く偽陽性も多い
出典:日本乳癌検診学会

第22回がん検診のあり方に関する検討会(資料)
対策型乳がん検診における「高濃度乳房」問題の対応に関する提言(日本乳癌検診学会)
日本乳癌学会

(Terahata)

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