2017年07月14日
下肢PAD指導管理加算の全国普及率は約7割 AAA調査
キーワード: 糖尿病 CKD(慢性腎臓病)
平成28年度の診療報酬改定で「透析患者に対する下肢末梢動脈疾患指導管理加算」が新設され、透析クリニックでの足病に対する取り組みが進んでいます。この新加算を申請した都道府県の透析施設数は、全透析施設の71.3%に及んでいることが明らかになりました。
平成28年4月より、透析クリニックですべての人工透析患者さんの下肢をチェックし、重症度の高い虚血のある患者さんを専門病院へ紹介する新たな指導管理加算が施行されました。これにより全国の透析クリニックでの足病に対する取り組みが進んでいます。先月横浜で開催された第62回日本透析医学会学術集会(埼玉医科大学・中元秀友学会長)でも足に関する多くの演題が集まり、透析領域での関心の高さが示されました。
今回、一般社団法人 Act Against Amputation(以下略、AAA、代表理事:大浦紀彦・杏林大学教授)では、厚生労働省の出先機関である地方厚生局が公表する、新加算を申請した都道府県の透析施設数について集計を行いました。
全透析施設の約7割が新加算を申請!
まず、新加算を申請した都道府県の透析施設数を、日本透析医学会施設会員名簿(2017年度)に記載されている4,026施設を分母として、各都道府県の普及率を算出したところ、全透析施設の71.3%(4,026施設のうち2,869施設)が申請を行い、制度を活用していることがわかりました。
申請施設数と普及率の推移を月別で見てみると、着実に増加していることは明らかですが、申請率の伸び率は鈍化傾向です。
「1年間余りで申請施設数の割合は、3割から7割まで上昇しました。透析患者さんの重症下肢虚血(CLI)において重要なことは、早期発見・早期治療です。この制度が浸透することで早期発見し、連携施設で治療する患者さんが増えれば、今までは手遅れだった症例が助かるようになります。ただ、CLIの治療を成功させるためには、実は早期発見・早期治療だけでは困難で、栄養とADL(日常生活活動度)の維持も欠かせません。これはCLIの臨床研究のさまざまなデータから示されています。今後、CLIの重症化予防が、足病から日常的なリハビリテーションや栄養に拡大してくれれば、透析患者の生命予後やQOL向上につながります」とAAAの大浦氏。
下肢末梢動脈疾患指導管理加算 「申請施設数の推移」
※日本透析医学会施設会員名簿2017年度より(全国4,026施設として)
さらに、都道府県で見てみると、申請率の高い上位3県は、徳島県96.3%、大分県94.1%、兵庫県92.0%でした。
この施設数データに、日本透析医学会が毎年公表している『わが国の慢性透析療法の現況(2015年末)』の都道府県の透析患者数を当てはめてみました。患者数では東京都(30,805名)、大阪府(23,199)、神奈川県(20,454)が上位3位で、施設数も同じ都府県が上位を占め、東京都(433施設)、大阪府(298施設)、神奈川県(249施設)。
しかし、申請率では東京は69.1%、大阪府は75.5%、神奈川県は69.1%と患者数や施設数に比例して上がるものではなく、逆に、申請率上位の徳島県は施設数の全国順位で44位、患者数の全国順位で36位、大分県は同28位、同27位、兵庫県は同8位、同9位となっています。
*JSDT施設数:日本透析医学会施設会員名簿2017年度版より
都道府県 | 届出施設数 | JSDT施設数 | 普及率(%) | 透析患者数(名) | |
---|---|---|---|---|---|
1位 | 徳島県 | 25 | 27 | 96.3 | 2,792 |
2位 | 大分県 | 46 | 51 | 94.1 | 3,918 |
3位 | 兵庫県 | 147 | 163 | 92.0 | 13,374 |
4位 | 福井県 | 17 | 20 | 85.0 | 1,824 |
5位 | 愛知県 | 152 | 185 | 83.8 | 17,826 |
これについて大浦氏は、「地域によって足病連携の取り組みが遅れているところがありますが、これは透析施設だけの問題ではなく、その地区に足病の治療を行う創傷治療と血行再建を施行する専門病院との連携が少ないことも示しています」と分析し、「AAAは、これらの地区で奮闘する医師らに寄稿いただき、現場の状況をご紹介していく予定」と語っています。
PAD加算の普及率MAP
都道府県 | 届出施設数 | JSDT施設数 | 普及率(%) | 透析患者数(名) |
---|---|---|---|---|
北海道 | 154 | 208 | 74.0% | 15,338 |
青森県 | 13 | 32 | 40.6% | 3,497 |
岩手県 | 15 | 36 | 41.7% | 3,045 |
宮城県 | 33 | 58 | 56.9% | 5,395 |
秋田県 | 20 | 35 | 57.1% | 2,003 |
山形県 | 21 | 33 | 63.6% | 2,596 |
福島県 | 40 | 61 | 65.6% | 4,885 |
茨城県 | 65 | 80 | 81.3% | 7,986 |
栃木県 | 53 | 74 | 71.6% | 6,070 |
群馬県 | 36 | 59 | 61.0% | 5,948 |
埼玉県 | 137 | 182 | 75.3% | 17,382 |
千葉県 | 99 | 149 | 66.4% | 14,412 |
東京都 | 285 | 434 | 65.7% | 30,805 |
神奈川県 | 173 | 251 | 68.9% | 20,454 |
新潟県 | 34 | 51 | 66.7% | 5,022 |
富山県 | 29 | 40 | 72.5% | 2,506 |
石川県 | 30 | 40 | 75.0% | 2,647 |
福井県 | 17 | 21 | 81.0% | 1,824 |
山梨県 | 13 | 30 | 43.3% | 2,248 |
長野県 | 44 | 66 | 66.7% | 5,251 |
岐阜県 | 51 | 62 | 82.3% | 4,853 |
静岡県 | 85 | 118 | 72.0% | 10,615 |
愛知県 | 156 | 184 | 84.8% | 17,826 |
三重県 | 38 | 45 | 84.4% | 4,176 |
滋賀県 | 32 | 40 | 80.0% | 3,122 |
京都府 | 61 | 79 | 77.2% | 6,400 |
大阪府 | 225 | 302 | 74.5% | 23,199 |
兵庫県 | 151 | 166 | 91.0% | 13,374 |
奈良県 | 34 | 45 | 75.6% | 3,401 |
和歌山県 | 27 | 46 | 58.7% | 3,003 |
鳥取県 | 14 | 24 | 58.3% | 1,501 |
島根県 | 15 | 26 | 57.7% | 1,604 |
岡山県 | 45 | 61 | 73.8% | 4,920 |
広島県 | 69 | 93 | 74.2% | 7,599 |
山口県 | 38 | 53 | 71.7% | 3,518 |
徳島県 | 28 | 29 | 96.6% | 2,792 |
香川県 | 27 | 42 | 64.3% | 2,697 |
愛媛県 | 40 | 48 | 83.3% | 3,880 |
高知県 | 27 | 33 | 81.8% | 2,311 |
福岡県 | 139 | 183 | 76.0% | 14,661 |
佐賀県 | 21 | 33 | 63.6% | 2,374 |
長崎県 | 29 | 57 | 50.9% | 4,006 |
熊本県 | 50 | 74 | 67.6% | 6,442 |
大分県 | 49 | 51 | 96.1% | 3,918 |
宮崎県 | 23 | 55 | 41.8% | 3,572 |
鹿児島県 | 37 | 72 | 51.4% | 5,499 |
沖縄県 | 47 | 65 | 72.3% | 4,409 |
全 国 | 2,869 | 4,026 | 71.3% | 324,986 |
「下肢末梢動脈疾患指導管理加算」(下肢救済加算)の基礎知識と実践
透析クリニックでのフットケア
一般社団法人 Act Against Amputation
『わが国の慢性透析療法の現況(2015年末)』(日本透析医学会)
(mhlab)