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高齢者の事故 注意を呼び掛けるだけでは不十分 消費者庁が報告

キーワード: 骨粗鬆症/ロコモティブシンドローム/サルコペニア 抗加齢(アンチエイジング)

 消費者庁は高齢者が転倒・転落してしまう事故に注意するよう呼びかけている。
「高齢者の事故を防止するには、高齢者へ注意するよう呼びかけるだけでは不十分」と専門家は指摘している。
加齢に伴う身体機能の低下が生活に影響
 医療機関ネットワークには、65歳以上の高齢者の事故情報が2010年から2017年までに3,639件寄せられており、そのうち、転落・転倒事故が1,600件(44%)と、もっとも多い。

 東京消防庁管内では、日常生活の中での転倒や転落による事故だけで5年間に約25万人の高齢者が医療機関に救急搬送されている。

 階段や段差、薄暗い場所などでつまずいたり、足がもつれたりして転んでしまい、骨折するなどの事故が発生しているという。

 高齢者は加齢に伴い、また、疾病などの影響により、筋力、視力、触覚、平衡感覚、反射神経、嚥下能力などの身体的な機能が低下する傾向にある。

 そのような変化により、歩行速度が低下する、脚をあげづらくなる、薄暗い場所が見えづらくなる、バランスを崩しやすくなる、とっさのことへの反応が遅れる、ものを飲み込みづらくなる、といったような生活上の行動に影響が生じるようになる。
高齢者の事故は環境と密接に関わっている
 高齢者は、自身の身体機能の低下を正確に自覚していない場合もある。また、長年の生活習慣・経験による過信や思い込みも影響して、判断を誤ることがある。

 そうした認識のずれや判断の誤りにより、できると思っていた作業が実際にはうまくできない、障害物をうまく避けられないといった影響がでてくる。

 また、他の人の手を借りたくない、心配されたくないなどの思いから、1人で作業を行い、危険な行動や製品の誤使用などをしてしまう場合もある。

 また、高齢者の事故は、高齢者の状態とそれを取り巻く環境と密接に関わっている。これらの状態等の中には高齢者自身だけでは意識しづらい、改善できないものが多く含まれる。
住宅設備が高齢者に不適切な場合も
 長年暮らしている自宅のような、慣れ親しんだ環境であっても、筋力、視力、バランス感覚の低下や、自身の認識と実際の身体能力のずれなどの高齢者の心身の変化によって、事故に遭うリスクが高まっていく。高齢者の心身の変化に合わせて身近な方が高齢者を取り巻く環境を見直すことが必要だ。

 加齢の影響に伴い、身の回りの生活環境の中で高齢者の暮らしに合わないものが出てくる。自宅であれば、住居の階段や床、段差、照明といった家庭内の住宅設備や製品が、実は高齢者にとって使いにくいもの、危険なものになってしまってきている場合がある。

 また、長年使用している製品に故障や不具合が生じ、修理や部品交換、買換えなどが必要であっても、それをせずにそのまま使用している場合もある。特に一人暮らしの方の場合や高齢者だけが使う製品の場合には、高齢者だけでは負担が大きく買換えや交換を行えない、身近な方が気付きづらい、といったおそれがある。
高齢者の日常生活における事故
 医療機関ネットワークには、脚立や踏み台を使用した際にバランスを崩し転落する、刈払機で草刈り中に脚を切る、工具を使って日曜大工中に指を切るなど、生活上の作業、動作において製品を利用した際の事故情報が寄せられている。

 加齢に伴う身体機能の低下により、生活上の基本行動には支障がなくても、高い負荷がかかった際や急な変化への対応が難しくなっており、不慣れな作業を行う場合は注意が必要となる。

 たとえ、慣れた作業であっても、バランスの悪い場所での作業や体調不良など、ちょっとした違いから生じた危険を回避できず、大きな事故になるおそれがある。
身の回りの製品による事故が多い
 また、骨密度が低下していることから骨折しやすくなったり、皮膚も加齢に伴い薄くなっていることから皮膚損傷を起こしやすくなったりしているため、些細な接触事故でも重症化するおそれがある。消費者安全調査委員会は、手動車いすのフットサポート部分に足が接触した際の摩擦などで皮膚損傷が生じる事故について報告している。

 高齢者の事故には高齢者特有のさまざまな要素があり、高齢者本人だけではなく、ご家族や親戚の方、近隣、地域の住民など高齢者の身近にいる人々が意識することで、多くの事故を防ぐことができる。

 消費者庁の事故情報データバンクに寄せられた、身の回りの製品による高齢者が被害者となる事故には、劣化による影響が疑われる古い製品による事例、リコール対象となっている製品であってもリコール情報に気付かずに使用していた事例や、誤解などにより不適切な使用をしたことによる事例もみられる。

 また、その他特に注意が必要な事故として、溺死を含む入浴中の事故もあります。温度の急激な変化で血圧が上下に大きく変動することで失神し、浴槽内で溺れる事故などが起きており、これから寒くなるにつれて、注意が必要だ。
高齢者の事故を防止するために
 消費者庁では、以下の点に注意して、高齢者の身の回りの環境や行動、習慣について確認、見直すよう呼びかけている。

(1)高齢者の心身の変化に合わせて、家庭内の環境を再確認し、段差など高齢者にとって危険となる箇所や負担になる箇所を減らす。

(2)高齢者が行っている作業をふだんからよく確認し、いつもと変わったところがあれば、作業を控えるよう呼びかけることも検討する。

(3)高齢者が使用している製品に問題がないか、故障や劣化、不具合などがないか、リコール対象製品でないかを確認する。

(4)高齢者の普段の習慣を確認するとともに、誤飲しそうなものの取扱いや保管などに注意する。

(5)高齢者の安全や事故防止に関する正しい情報を収集する。

 高齢者の事故防止について、徳田哲男・埼玉県立大学名誉教授は、「高齢者の事故を防止するには、高齢者へ注意するよう呼びかけるだけでは不十分で、福祉工学、人間工学の視点から、高齢者の身の回りの環境を考えて対応していくことが必要です。家族や地域など周囲のサポート、コミュニケーションが事故予防をする上でより重要になっています」と述べている。

 さらに、「高齢者と一口に言っても、身体機能の低下の状態や自らの意識はさまざまで、個人差が大きいため、画一的ではなく、個々人の状態に合わせて環境条件を変える対応が望まれます」とした上で、「できる限り今までの生活習慣を変えないように、慌てずゆっくりとした時間軸で行動できるように環境を整え、高齢者個人の自立した豊かな生活をフォローしていくという意識が大切です」と指摘している。
高齢者の製品関連の事故 この5年で1280件
 製品評価技術基盤機構(NITE)は、高齢者の製品関連の事故が昨年度までの5年間で1,280件報告されたと発表した。被害者が亡くなったケースは126件、重症のケースが176件だった。主な原因は誤使用や不注意によるものだったとして、注意を呼びかけている。

 死亡事故の内訳ではストーブが52件で最多。介護ベッドと関連製品の14件、電動車いすの12件が続く。

 調査済みの253件をみると、60.0%の152件は不注意や誤った使い方などが原因。ストーブではタンクのふたを十分に閉めずに灯油が漏れ出したり、誤ってガソリンを給油したりするなど、不適切な使い方で火事になったケースが目立つ。

 介護ベッドの事故では改修されていない古いタイプの物を使っていて、手すりなどの隙間をカバーで埋めていなかったため、首などを挟んでしまったケースなど。NITEは介護ベッドについて、からだを巻き込まないようにカバーなどで隙間を覆うことが有効としている。

ご家族など身近な方で高齢者の事故を防止しましょう!−事故防止のために高齢者の身の回りを見直してみましょう−(消費者庁 2017年9月13日)
高齢者の死亡・重傷事故を防ぐために〜ストーブ、介護ベッド及び関連製品、脚立、電動車いすなどの事故に注意〜(製品評価技術基盤機構 2017年9月14日)

(Terahata)

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