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「血糖値スパイク」を薬物療法で改善 「糖をはかる日」講演会(2)

キーワード: 一無・二少・三多 糖尿病 肥満症/メタボリックシンドローム 動脈硬化 「無煙」喫煙は万病の元 「少酒」お酒はほどほどに 「少食」食事は腹7~8分目 「多動」身体を活発に動かす

 10月8日は「糖をはかる日」。糖尿病治療研究会は10月3日に、日比谷コンベンションホール(東京)で、『10月8日は、「糖をはかる日」』講演会を開催した。

講演2「食後高血糖(血糖値スパイク)と薬物療法」
田中 逸 先生(聖マリアンナ医科大学 代謝・内分泌内科教授)
空腹時血糖検査だけでは「かくれ糖尿病」を見逃しやすい

 「食後高血糖」が注目されている。糖尿病の治療をより早期から開始するために、食後高血糖を発見し、治療のターゲットとする必要がある。

 網膜症や糖尿病性腎症といった細小血管症や心筋梗塞などの大血管障害など、深刻な合併症を予防するために、良好な血糖コントロールが非常に重要となる。

 ではどの段階から治療を開始すれば良いのか? できるだけ早期から血糖コントロールを行うべきだと考えられている。なぜなら、早期の治療の効果は、20年後、30年後まで影響して、合併症の予防につながる可能性が高いことがこれまでの研究で示唆されているからだ。

 2型糖尿病の発症早期における食後血糖管理の重要性は注目されているが、健診などで見逃されやすい。「かくれ糖尿病」とは、糖尿病であるにも関わらず、健診などのスクリーニング検査で捉えられていない糖尿病を指す。

 特定健診などの検査は空腹時に行われることが多い。特定健診の基準をクリアしている人でも、実際には糖尿病あるいは糖尿病予備群であったというケースが多い。通常の検査で実施される空腹時血糖だけでは捕捉できない糖尿病やその予備群が4割ほどに上るとみられている。

食後高血糖のメカニズム なぜ食後に血糖値が高くなるのか

 2型糖尿病の初期には、膵β細胞のインスリン分泌能はまだそれほど低下しておらず、インスリン基礎分泌は保たれている。しかし、インスリン追加分泌が遅延して食後高血糖が現れやすい。

 軽症2型糖尿病のインスリンの分泌パターンは、初期のインスリンの基礎分泌能は低下しておらず、立ち上がりは健常人とはあまり変わらない。しかし、インスリンの追加分泌の上昇が遅く、そのピーク時間が後方にずれていき、血糖を下げることができなくなる。

 そのため食後数時間の血糖値が正常域を超えて高くなる「食後高血糖」を呈するようになる。

 食後高血糖が持続するとインスリン作用が悪くなるインスリン抵抗性という状態を増強させるため、インスリン基礎分泌が減少し、食前(空腹時)の高血糖までみられるようになる。

食後高血糖を発見する方法

 健診などで見逃されやすい食後高血糖を発見するために効果的な方法のひとつは「尿糖検査」だ。尿糖検査は、尿糖試験紙(薬局で手軽に購入できる)を用いて尿中に排泄される糖を測定する検査。

 重要なエネルギーであるブドウ糖は、健康な人なら腎臓で再吸収され尿中にほとんど排泄されないが、血糖値が上がり再吸収される量を超えると糖が尿に漏れてくる。漏れる限界の値を「尿糖排泄閾値」と呼び、この値はおよそ160〜180/dLだ。血糖値がそれ以上になると尿糖検査が陽性になる。

 食後高血糖を確認する場合は、食事をする前に一度排尿して、膀胱に溜まっていた尿を排出する。そのうえで食後2時間程度経ってから測定すると良い。

 食後に陽性の反応が出た場合は、食後高血糖の疑いがある。そうした場合は、血糖自己測定(SMBG)を行ったり、医療機関で75g経口ブドウ糖負荷試験を受けると診断を確定できる。

食後高血糖を改善する薬物療法

 食後高血糖を改善する薬物療法は進歩している。医師が状況に応じて治療方法を決め、選択していくことになる。

 糖尿病の初期に多い食後高血糖を改善する経口血糖降下薬として、「α-グルコシダーゼ阻害薬」(α-GI)と、「速効型インスリン分泌促進薬」(グリニド薬)がある。

 α-GIは、消化器管内の消化酵素を阻害し、消化・吸収を遅らせることで、食後の血糖上昇を抑制する。

 グリニド薬は、膵β細胞からのインスリン分泌を促進することで血糖降下作用を促進する。短時間のインスリン分泌作用があるのが特徴だ。

 インスリンを分泌する力が低下している2型糖尿病では、糖分の摂取後すぐにインスリンを分泌して、血糖を速やかに低下させる働きが低下しているために、血糖の上昇とインスリン分泌のタイミングが合わなくなる。

 α-GIにより糖質の分解を抑えて、消化・吸収を遅らせることで食後の血糖値の上昇をゆるやかにして、グリニド薬によりインスリンをすばやく分泌させることで、血糖上昇とインスリン上昇のタイミングを接近させ、食後高血糖を改善できる。

 これらに加えて、インクレチン関連薬のひとつである「DPP-4阻害薬」が導入される。DPP-4阻害薬は血糖依存性に作用する薬剤で、単独投与であればα-GIと同様に空腹時に服用しても低血糖をきたす可能性は低い。

 実際には糖尿病の初期にもDPP-4阻害薬が処方されるケースが多いが、グリニド薬、α-GIによる治療も効果がある。これらの薬剤は併用ができる。

食後高血糖を知るために検査

 HbA1c検査は採血時点の血糖値に左右されず、過去に遡って血糖レベルを調べられる優れた検査だ。検査結果に反映されるのは、採血時点から過去1〜2ヵ月間の血糖状態となる。

 しかし、HbA1cには、血糖コントロールが改善したり悪化しても、それが検査値の変化となって現れるのに時間がかかるという短所がある。さらに、食後の短時間の高血糖があまり反映されない傾向がある。

 そうした場合、「グリコアルブミン」(GA)検査や、「1,5-アンヒドログルシトール」(1,5-AG)検査は、短期間の血糖変動に敏感に反応し、食前の高血糖はあまり目立たず食後にのみ高血糖になっているようなケースを発見するのに適している。

 血液中のグリコアルブミンを測る検査が、グリコアルブミン検査だ。過去1ヵ月間(とくに直近の2週間)の血糖レベルの平均と相関している。

 また、尿糖が排泄されるにしたがい減る1,5-AGの量を測るのが1,5-AGの検査。血糖値が高いほど1,5-AG検査の数値は低くなる。検査時点から過去数日間の血糖レベルが分かる。

 糖尿病の治療を開始した直後や、薬の種類や量を変更した直後、生活環境・パターンが変わった直後などには、その効果や影響がすぐにわかるグリコアルブミンや1,5-AGなどの検査が役立つ。

10月8日は、「糖をはかる日」

(Terahata)

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