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「たばこ規制」をどうする? 多方面で厚労省の法改正素案に反対の声

キーワード: 喫煙 健診・保健指導

 厚生労働省の受動喫煙への規制強化案が、喫煙に対して寛容な内容になる見込みを示したのを受け、全国がん患者団体連合会やがん関連の3学会は、より厳格な内容を求める要望書を発表した。与野党の超党派の「議員連盟」も、より厳しい対案を公表した。
2020年までたばこ規制を実行する必要が
 厚生労働省は1月に、受動喫煙対策を事業者らに義務付ける健康増進法改正案の素案を公表した。今国会での提出を目指しており、飲食店の店舗面積などが焦点となっている。

 世界保健機関(WHO)と国際オリンピック委員会(IOC)は、「たばこのない五輪」の推進を掲げている。

 直近の五輪開催国は罰則を伴う法規制を導入しており、2020年東京五輪・パラリンピックに向けて日本も対策を強化する必要がある。

 厚労省は、たばこが原因で2014年度に100万人以上が、がんや呼吸器疾患、循環器疾患、糖尿病などの病気になり、受動喫煙と合わせ約1兆4,900億円の医療費が必要になったと推計した。これは国民医療費の3.7%に当たる。

受動喫煙対策案 加熱式たばこも対象
 厚労省の規制強化案の主な点は以下の通り――

▽医療施設、小中高、大学などや行政機関は、敷地内禁煙とする。ただし、屋外で受動喫煙を防止するために必要な措置がとられた場所に、喫煙場所を設置することは可能。

▽上記以外の施設(事務所、飲食店、ホテル、老人福祉施設、運動施設など)は、屋内原則禁煙としつつ、喫煙専用室内でのみ喫煙を可能とする。住宅、旅館・ホテルの客室などの私的な空間は、適用除外とする。

▽加熱式たばこについては、その煙にニコチンなどの有害物質が含まれており、発がん性物質のひとつであるホルムアルデヒドやベンゼンなども含まれていることから、やはり規制対象となる。

▽一方で、加熱式たばこには、現時点の科学的知見では、受動喫煙による健康影響は明らかでないことから、当分の間は喫煙専用室または加熱式たばこ専用の喫煙室内でのみ喫煙を可能とする。いずれも室外への煙の流出防止措置を講じたものだ。
たばこが吸える飲食店が増える懸念
 焦点なっているのは、既存の飲食店のうち経営規模が小さい事業者が運営するものに対する措置だ。

▽中小企業や個人が運営する店舗で、面積が一定規模以下のものについては、「喫煙」「分煙」の標識の掲示により喫煙を可能とする。この場合、20歳未満(客も従業員も)の立入を禁止する。

 店舗面積の基準は検討中だが、150平方メートル以下が有力候補となっている。実現すれば、150平方メートル以下の経営規模の小さい既存店で喫煙できるようになる。

 当初の規制強化案では、30平方メートル超を原則禁煙としており、大幅に緩和されることになる。
受動喫煙対策の厳格化を要望
 厚労省の規制強化案に対し、全国がん患者団体連合会と、日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会は、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案について、より厳格な内容を求める要望書を合同で加藤厚生労働相あてに提出した。

 要望書では、厚労省案について「東京都内では9割以上の飲食店が喫煙可となり、他の都道府県でも同様となる。大幅な後退案と言わざるを得ない」と反対している。

 東京都が昨年、都内のおよそ2万店の一般飲食店、バーやスナックなどの遊興飲食店を対象に店舗面積を調査した結果では、店舗面積が30平方メートル以下の飲食店の割合は、一般飲食店で31.3%、遊興飲食店で46.2%であったの対し、店舗面積が150平方メートル以下の飲食店の割合は、一般飲食店で92.3%、遊興飲食店で95.3%とされている。

 要望書では、「30平方メートルまでは喫煙可とする案が最低限のライン」として「実効性のある法的措置を講じることを改めて強く要望する」として、厚労省の対応を批判している。
超党派議連が独自の「対案」
 与野党の議員60人でつくる超党派の「東京オリパラに向けて受動喫煙防止法を実現する議員連盟」(会長:尾辻秀久・自民党)も、厚労省の案よりも規制が厳しい独自の「対案」をまとめ、議員立法で野党から提出を目指す方針を決めた。

 対案では、店舗面積30平方メートル以下の飲食店以外、喫煙の自由を認めていない。加熱式たばこも紙巻きと同様に規制対象となる。2019年のラグビー・ワールドカップ(W杯)までに施行するとしている。

 松沢成文幹事長は「受動喫煙への対策は党派を超えた共通の問題。提出する議員立法を、国会議員や国民に、厚労省案と比較してもらいたい」と言う。
海外からはこう見られている
 米国のNBCニュースは、日本の受動喫煙の規制をめぐる議論について、次のように報道している。

 「日本最大のたばこ販売会社であるJTの株式の3分の1を財務省が保有している。JTが利益を出すほど、国庫への収入も増える。日本の紙巻きたばこの販売本数は昨年、12.5%も減ったにもかかわらず、JTは海外への事業の展開を進めている」。

 WHOたばこ規制プログラム主任ビナヤク プラサド氏は、日本の厚労省の規制強化案が緩和されることについて、「このようなかたちで作り変えたら、法律など全く役に立たない。非喫煙者を守れない法律など作るべきではない」と語っているという。

厚生労働省 「望まない受動喫煙」対策の基本的考え方

【第1】「望まない受動喫煙」をなくす
 受動喫煙が他人に与える健康影響と、喫煙者が一定程度いる現状をふまえ、屋内において、受動喫煙にさらされることを望まない者がそのような状況に置かれることのないようにすることを基本に、「望まない受動喫煙」をなくす。

【第2】受動喫煙による健康影響が大きい子ども、患者などに特に配慮
 子どもなど20歳未満の者、患者などは受動喫煙による健康影響が大きいことを考慮し、こうした方々が主たる 利用者となる施設や、屋外について、受動喫煙対策を一層徹底する。

【第3】施設の類型・場所ごとに対策を実施
 「望まない受動喫煙」をなくすという観点から、施設の類型・場所ごとに、主たる利用者の違いや、受動喫煙が他人に与える健康影響の程度に応じ、禁煙措置や喫煙場所の特定を行うとともに、 掲示の義務付けなどの対策を講ずる。
 その際、既存の飲食店のうち経営規模が小さい事業者が運営するものについては、事業継続に配慮し、必要な措置を講ずる。

受動喫煙対策 「望まない受動喫煙」対策の基本的考え方(厚生労働省)
全国がん患者団体連合会
東京オリパラに向けて受動喫煙防止法を実現する議員連盟
Tokyo Games looming, Japan faces pressure to douse smoking(NBCニュース 2018年2月4日)
[Terahata]

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