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「なぜ運動が良いのか」メカニズムを解明 筋肉ホルモンが心臓を保護

キーワード: 糖尿病 動脈硬化 心筋梗塞/狭心症 運動

 骨格筋から出るホルモンが、心筋を保護し、心筋梗塞などの予防・治療を促進することが、名古屋大学の研究で明らかになった。
 ウォーキングなどの運動によって、このホルモンを増やすことができる。
なぜ運動をすると心臓病が改善するのか
 筋肉から出るホルモンが、心筋を保護し、心筋梗塞などの予防・治療を促進することが、名古屋大学の研究で明らかになった。

 心臓病は日本人の死亡原因の第2位で、心筋梗塞などの虚血性心疾患が代表的だ。

 とくに糖尿病のある人は、虚血性心疾患のリスクが1.8〜3倍に上昇するという報告がある。動脈硬化や虚血性心疾患を含む心血管病を予防し、重症化させないための対策が必要とされている。

 運動療法は心筋梗塞や狭心症を予防するために効果的で、1日30分程度のウォーキングなどの有酸素運動が勧められているが、運動の効果を分子レベルで解明した研究は少ない。

 一方で、骨格筋は腕や脚の筋肉、腹筋、背筋などで、体を支え、動かす役割を担っている。最近の研究で、骨格筋はホルモンを産生する内分泌臓器でもあることが分かってきた。

 骨格筋から分泌されるホルモンが、2型糖尿病などの代謝性疾患や心血管疾患の病態に関わることが明らかとなってきた。

関連情報
骨格筋から出るマイオネクチンが心臓を保護
マイオネクチンによる心保護作用
 研究チームは今回の研究で、「マイオネクチン」というホルモンに着目。マイオネクチンは、骨格筋から産生・分泌されるホルモンで、ウォーキングなどの持久力を高める有酸素運動によって増える。

 研究チームはマウスを用いて実験を行った。マイオネクチンを産生しないマウスでは、心臓の筋肉に血液が十分に行き渡らなくなる状態から、心臓の閉塞した血管を再び開通させても、心筋梗塞サイズの増加と心機能の低下がみられ、心筋組織内の細胞死と炎症反応の悪化もみられた。

 マウスにランニングマシーンで有酸素運動を行わせると、対照となったマイオネクチンを産生するマウスでは、血中マイオネクチン濃度は上昇し、心筋組織内の細胞死と炎症反応が抑えられ、心筋梗塞サイズが縮小した。

 一方、マイオネクチンを産生しないマウスでは、有酸素運動を行わせても、心筋虚血障害に対する保護効果は得られなかった。

 これらのことから、マイオネクチンには抗細胞死作用と抗炎症作用があり、心保護作用があることが分かった。さらに、有酸素運動によってマイオネクチンが血中に増え、心臓を保護する作用をすることも示された。
マイオネクチンは運動で増やせる
 マイオネクチンは骨格筋のみに多くあり、心筋組織にはほとんどない。心筋虚血の発症前にマイオネクチンを全身投与すると、投与しない群に比べ、心筋梗塞のサイズが縮小することも分かった。

 運動療法が心筋梗塞や狭心症を予防するメカニズムとして、骨格筋から分泌されるマイオネクチンが有酸素運動によって増加し、心筋組織に直接作用し、細胞死や炎症反応を抑制して虚血性心疾患に対して保護的に作用することが考えられる。

 研究チームは細胞実験も行った。培養心筋細胞にマイオネクチンを添加すると、低酸素/再酸素化刺激による細胞死が抑制された。また、炎症に深く関わる免疫細胞であるマクロファージについても、マイオネクチンは炎症性タンパク質の産生を抑制していた。
運動と同じ効果を発揮する薬の開発にも期待
 研究チームは、マイオネクチンが炎症や細胞死を制御する生理活性物質の分泌を増加させ、細胞内シグナルを活性化するからだと考えている。

 骨格筋でつくられるマイオネクチンを血中に増やせば、心臓を保護する作用を得られる。

 マイオネクチンは有酸素運動によって増える。ウォーキングなどの運動療法は、このホルモンの量を増加させ、働きを良くするためにも必要だ。

 マイオネクチンの体内でのより詳しい機能が分かれば、とくに有酸素運動によってコントロールされる虚血性心疾患をはじめとする心血管病の原因の解明につなげられる。

 また、心血管疾患を予防・治療する薬や、運動と同じ効果を発揮する薬を開発できる可能性がある。

 研究は、名古屋大学大学院医学系研究科分子循環器医学寄附講座の大内乗有・寄附講座教授、循環器内科学の室原豊明教授、大高直也氏らの研究チームによるもので、詳細は科学雑誌「Circulation Research」に掲載された。

名古屋大学大学院医学系研究科
Myonectin Is an Exercise-Induced Myokine that Protects the Heart from Ischemia-Reperfusion Injury(Circulation Research 2018年9月12日)

(Terahata)

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