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日本の1型糖尿病の患者数は10〜14万人 支援とケアが必要 厚労省研究班

キーワード: 糖尿病

 日本の1型糖尿病の患者数は10〜14万人と推定されると、厚生労働省の研究班が公表した。とくにコントロールが難しい1型糖尿病を、「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」として定義。「こうした患者を支援する適切な対応が望まれる」と強調している。
 厚生労働省の研究班による「1型糖尿病の実態調査、客観的診断基準、日常生活・社会生活に着目した重症度評価の作成に関する研究」(代表者:田嶼尚子・東京慈恵会医科大学)では、2014年から4年間にわたって、1型糖尿病の実態調査などを続けてきた。

 研究班はこのほど、日本の1型糖尿病の患者数の推計など公表した。1型糖尿病のなかでもとくにコントロールが難しく、身体的にも社会的にも対応に格別の配慮が必要な1型糖尿病を、「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」として定義。「1型糖尿病患者の健康が損なわれるのを防ぐことが重要」と強調している。
日本の1型糖尿病の患者数は10〜14万人
 1型糖尿病を発症した場合、医療機関には届け出の義務が課されておらず、全国の患者数を把握することは難しい。研究班はさまざまな調査から推計値を算出した。

 研究班による調査では、2017年に1型糖尿病で医療機関を受療した全国の患者数の推計は、約11万5,000人(男性5万1,000人、女性6万4,000人)に上る。1型糖尿病で受療している患者数(全患者数)を全人口で割ると、有病率は約0.09%(人口10万人あたり約90人)となる。

 また、同研究班のレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いた推計では、1型糖尿病の患者数は約14万1,000人、有病率では約0.11%。

 厚生労働省の「2014年患者調査」によると、1型糖尿病(インスリン依存性糖尿病)で医療機関を受療した「総患者数」は約10万9,000人、有病率では約0.09%。

 調査班は、調査法によって推計値に違いはあるが、1型糖尿病の患者数(全年齢)は約10〜14万人、有病率は約0.09〜0.11%(人口10万人あたり約90〜110人)と推計している。

 また、2005〜2012年度小児慢性とく定疾患治療研究事業の登録データから、1型糖尿病の10万人(人年)あたりの発症率は2.25(男児 1.91、女児 2.52)とされた。
「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」とは
 研究班は、1型糖尿病のなかでもとくにコントロールが難しく、身体的にも社会的にも対応に格別の配慮が必要な1型糖尿病を、「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」として定義。「診断に応じて適切な対応することが望ましい」と強調している。

 研究班は、グルカゴン負荷試験で内因性インスリン分泌能が詳細に解析された1型糖尿病患者139例を対象に、高血糖・低血糖・血糖変動などの観点から見た重症度指標に影響する各種臨床指標を解析。その結果、内因性インスリン分泌能(Cペプチド)が、1型糖尿病の重症度指標と相関する指標であることが明らかになった。

 Cペプチドは、インスリンがつくられる途中にできる物質で、インスリンとほぼ同じ割合で作られる。Cペプチドの排泄量を調べると、どのくらいインスリンが分泌されたのかが分かる。空腹時の血中Cペプチドを測定する検査と、24時間尿をためてCペプチド量を測る検査があり、前者が0.6ng/mL、後者が20μg/日以下であればインスリン依存状態の目安になる。

 研究班によると、空腹時あるいはグルカゴン負荷後にCペプチドが0.1ng/mL未満であると、「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」とされる。

 小児期発症の1型糖尿病など、完全にインスリン分泌が枯渇した糖尿病患者は、生涯にわたり強化インスリン治療を行う必要がある。「こうした患者を支援する適切な対応が望まれる」と指摘している。
高血糖や低血糖を防ぎながら合併症を阻止
 1型糖尿病では膵β細胞から分泌されるインスリンの分泌が低下〜枯渇しているために、治療の基本は不足しているインスリンを補充することにある。そうしないと、糖質を源として生命に必要なエネルギーの供給が行われず、生命を維持できなくなる。

 合併症の発生や進展を予防するために、高血糖や低血糖の発生を極力抑え、変動が少ない血糖状態が維持できるようにインスリン治療を毎日行う必要がある。

 インスリン治療の主目的は、可能な限り生理的なインスリン動態を模倣することで、変動の少ない適切な血糖コントロールを維持することにある。

 これを実現するために、頻回注射療法(MDI)あるいは持続皮下インスリン注入療法(CSII)による強化インスリン治療を行う必要がある。これに加えて、1日の血糖値の変動を把握するために血糖自己測定(SMBG)を1日最低4回以上行う必要がある。

 インスリン治療と血糖コントロールの手段はめまぐるしい進歩をとげたが、1日でもインスリン治療を怠ると糖尿病性ケトアシドーシスなどの代謝障害をまねき、また食事の摂取量や運動量に不相応に過量のインスリン注射を行うと重症低血糖を起こす。

 インスリン治療が生涯欠かせない1型糖尿病の治療・管理は容易ではない。とくにインスリン分泌が枯渇した状態になると、血糖値は大きく変動して、高血糖だけでなく、低血糖のリスクも高まる。前者は合併症を引き起こす原因になり、後者は患者の生活の質を低下させ、ときには生命を脅かすこともある。

 研究班は、「1型糖尿病患者が、高血糖や低血糖を防ぎながら合併症の発症や進展を阻止するためには、医療や福祉体制のさらなる整備が必要。就業や就学、結婚などに支障を起こさないように、社会啓発活動も求められている」と指摘している。
1型糖尿病患者は社会的・経済的に大きな負担を強いられている
 日本には「小児慢性特定疾患治療研究事業」があり、18歳未満で発症した1型糖尿病患者は、家庭の医療費の負担を軽減ために、医療費の自己負担分が補助される。その公益性と福祉事業としての価値は高く評価されている。

 一方で、現行の制度では、治療費の公的助成を受けられるのは20歳未満までで、それ以降は通常の保険診療に切り替わる。このため、成人した1型糖尿病患者は社会的・経済的に大きな負担を強いられるようになる。

 小児期発症の1型糖尿病の予後は、急速に改善してきており、成長してからも合併症が起こらず、元気に生活している1型糖尿病患者は多い。しかし、「1型糖尿病の疫学と生活実態に関する調査研究」(代表者:田嶼尚子)の調査では、医療の進歩にともない高騰する医療費のために、経済的に困窮し適切な治療を受けられないと考えている患者が28%もいることが示された。

 新しいインスリン製剤の登場や血糖測定器の進歩、インスリンポンプ療法(CSII)や持続グルコース測定(CGM)など、医療の進歩は1型糖尿病患者の血糖コントロールと予後を大きく改善している。

 しかし、同時に医療費の増大ももたらしている。1997年と2015年を比較した調査では、医療費の家計に占める割合について、5%未満は48.4%から34.2%に低下し、20%以上は6.9%から10.1%に増加した。世帯収入に対する医療費の割合が10%を超えている家庭も30%を超えている。

 その結果、医療費負担を減らすために、「血糖測定を減らす」「受診回数を減らす」「インスリン量を減らす」「CSIIができない」という患者もいるという。いずれも1型糖尿病治療に悪影響を与える。

 1型糖尿病は現在の医学では治癒が望めないために医療費の支払いは生涯続く。そのため1型糖尿病患者の多くは、生涯にわたる公的支援制度の設立を希望している。研究班は「1型糖尿病患者の健康が損なわれるのを防ぐことが重要」と強調している。

1型糖尿病の実態調査、客観的診断基準、日常生活・社会生活に着目した重症度評価の作成に関する研究
1型糖尿病の疫学と生活実態に関する調査研究

(Terahata)

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