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サマータイムは「睡眠障害」の原因に 生物時計に障害 日本学術会議

キーワード: 高血圧 一無・二少・三多 糖尿病 心筋梗塞/狭心症 「多休」休養をしっかりとる

 日本学術会議は、サマータイムの導入に関する提言を公表した。サマータイムは睡眠障害のリスクや急性心筋梗塞の発生率を高めることなどを挙げ、「サマータイムの導入は健康科学の面から問題が多いことが明らかだ」としている。
サマータイムは「生物時計」の機能を損ねる
 提言を発表したのは、日本学術会議の基礎生物学委員会・基礎医学委員会・臨床医学委員会合同の生物リズム分科会(委員長:近藤孝男・名古屋大学名誉教授)。

 日本オリンピック組織委員会は、2020年の7〜9月の東京オリンピックに向けて、暑さ対策としてサマータイムの導入を提案した。サマータイムは、現在欧米など60ヵ国で導入されている時刻システムで、春に時刻を1時間早め(夏時間)、秋に標準時間に戻す(冬時間)という制度。

 提言によると、サマータイムは生体機能の時間的統合をつかさどる「生物時計」の機能を損ね、開始もしくは終了を境に睡眠時間の短縮や睡眠効率の低下など、生体機能に変調を来すという。

 体の多くの機能には24時間のリズムがあり、その機能がもっとも高まる時刻ともっとも低くなる時刻が生物時計によって決められている。生物時計は、季節による日長(日の出から日の入りまでの時間)変化にも適応しており、これにも光による前進と後退という両方向性への位相シフトが関与している。

 日本など中緯度に位置する地域では、夏至と冬至の日長には6〜7時間ほどの差があり、さらに光のエネルギー量も異なる。その結果、夏季には、早くなった日の出によりリズムの位相が前進し、起床(覚醒)が早くなる。一方、遅くなった日の入りにより位相が後退し、就眠(入眠)が遅くなる。冬季にはその逆が起こる。
サマータイム導入により睡眠時間はさらに短くなる
 サマータイム開始後、睡眠・覚醒などの生体リズムは、一時的に生物時計から脱同調する。その結果、睡眠不足やそれによる昼間の眠気、認知機能の低下など、時差ボケに似た症状が生じる。

 さらに、自律神経系、運動系、認知機能、情動コントロールなどの中枢神経機能が、1週間から数週間低下するという。特に夜型の生活リズムの人(夜型クロノタイプ)でこれらの機能の低下が遷延する。

 さらに交通事故や不登校の増加、うつ病など精神障害の悪化の報告も多い。また、サマータイム導入により急性心筋梗塞発生率が上昇するとの報告がある。

 さらに、諸外国と比較して睡眠時間が短く、夜型クロノタイプが多い日本では、健康への影響は他国民よりも深刻だと警鐘を鳴らしている。

 夕方から夜にかけての明るい光はリズム位相を後退させるため、サマータイムで夕方の明るい時間が増えると、位相の後退が大きくなり、就眠時刻が後退する可能性が大きい。

 サマータイムの導入により、日本人の就眠時刻がますます遅れるが、始業時刻は変わらないため、睡眠時間がさらに短くなることが懸念されるという。
熱中症のリスクも増大する 多くの国民の健康が危険に
 日本オリンピック組織委員会の提案は「暑熱対策」がサマータイム導入の直接的動機としているが、2時間のサマータイムを導入すると、日中もっとも気温の高い時刻が夕方の帰宅や下校のラッシュアワーと重なり、また家庭で過ごす時間が、導入前よりも暑い時間帯にシフトする。

 すなわち、暑く寝苦しい夜が長くなり、不眠症の原因となりかねない。

 さらに、家庭内熱中症のリスクを高める。特に、温度に対する感覚が鈍く、体温調節機能が低い乳幼児や高齢者にとっては危険だ。本人も家族も気付かない睡眠中の「隠れ熱中症」が増大する可能性が大きい。

 日本学術会議の提言をまとめると、以下の通り――

(1)サマータイムは、生物時計の機能を損ね、その結果睡眠不足を起こし、睡眠障害のリスクを高め、急性心筋梗塞の発生率を高める。諸外国に比べ睡眠時間の短い日本では、健康を障害する可能性が高いサマータイムの導入は、見合わせるべきだ。

(2)サマータイムは、通勤通学時の暑さや、就寝時間帯の室内温度の上昇などをもたらし、家庭内熱中症のリスクを高める。暑さによる健康被害の増大が予測されるサマータイムの導入により、多くの国民の健康を危険にさらすべきでない。

サマータイム導入の問題点:健康科学からの警鐘(日本学術会議 2018年11月7日)
日本学術会議

(Terahata)

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