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うつ病を早期支援するのための社員向け研修プログラムを開発 職場のメンタルヘルス不調を早期発見・介入 九州大学など

キーワード: ストレス関連疾患/適応障害

 九州大学などは、メンタルヘルスの問題を抱える人に対して行う応急対応法「メンタルヘルス・ファーストエイド(MHFA)」をもとに、企業向けの教育研修プログラムを開発した。
 このほどパイロット試験を実施し、「スキルや自信が向上した」などの反響を得た。
メンタルヘルス不調への早期対応が必要
短時間の教育研修プログラムを開発
 職場でうつ病などメンタルヘルスの不調を抱える社員は増えており、日本の産業全体への影響が懸念され、その対策は喫緊の課題となっている。長期の休職や退職に至るケースもあり、当事者だけでなく会社や家庭への影響も大きい。

 ストレスチェック制度の導入など国家的取り組みも行われているが、いまだ抜本的な打開策が見出されていないのが現状だ。

 一方、うつ病は、抑うつ気分(気分の落ち込み)、意欲低下(喜びや意欲の喪失)、不眠、身体症状(倦怠感・痛みなど)といったさまざまな症状を呈する。

 うつ病をはじめとする精神疾患では、知識不足やスティグマ・偏見などにより、特に発病初期には自らの症状を他者に訴えることは少なく、周囲の人々も当事者に声をかけづらく「見て見ぬふり」をしてしまいがちで、受診が遅れる傾向がみられる。

 しかし、受診の遅れは、慢性化、難治化、さらには、自殺に至る危険性を高める。早期発見・介入・治療が重要となる。

 そこで、九州大学などの研究チームは、オーストラリアで普及している、メンタルヘルスの問題を抱える人に対して行う応急対応法「メンタルヘルス・ファーストエイド(MHFA)」をもとに、教育研修プログラムの独自開発に着手した。

 このほど、多忙な社員でも受講しやすい2時間の暫定プログラムを作成した。一般企業の社員がメンタルヘルスの不調を抱える同僚や部下に適切に関わるための知識とスキルを具体的に習得できる内容になっている。

 研究は、九州大学大学院医学研究院の神庭重信教授(精神医学分野)、加藤隆弘氏、岩手医科大学の大塚耕太郎教授らを中心とする共同研究チームが、日本医療研究開発機構(AMED)・障害者対策総合研究開発事業の支援を得て行ったものだ。
心の応急対応 メンタルヘルスの知識とスキルを習得
 「メンタルヘルス・ファーストエイド(MHFA)」は、専門家に相談するまでの間、家族や友人、同僚など身近な人がメンタルヘルスの問題を抱える人に対して行う「こころの応急処置」を実践的に学ぶための教育研修プログラムだ。

 2000年に12時間プログラムとして開発された。講義だけでなく、スモールグループでの議論、ロールプレイなど体験型学習によって、具体的な対処法を習得することができるのが特徴となっている。

 MHFAはオーストラリアで広く普及しており、国民全体のメンタルヘルス向上に貢献しているという。米国・英国などでも国家プロジェクトとして教育現場などに取り入れられており、世界中に拡まりつつある。

 研究チームは、MHFAを2007年に日本に導入し、そのエッセンスを震災支援事業や自殺対策事業に取り入れてきた。

 MHFAのエッセンスをもとにして開発したプログラムには、うつ病に関する知識を得るための講義に加えて、上司役・メンタルヘルスの不調を抱える社員役によって構成されるシナリオロールプレイ演習が含まれる。

 このロールプレイ演習を通じて、体験しながらMHFAの5原則「り・は・あ・さ・る」が実践的に身につくプログラムとなっている。
2時間の教育研修プログラムを開発 参加者の自信が向上
 研究チームは、このプログラムをパイロット試験として、一般企業の会社員83名に受講してもらい、プログラムの前後と1ヵ月後で、受講者にアンケートへ回答してもらった。

 アンケート結果から、特に「メンタルヘルス不調者へ対応するスキル」と「不調者へ関わる上での自信」の向上を認め、その効果は1ヵ月後も続くことが分かった。また、「メンタルヘルスの不調に対する偏見」は、プログラム受講後に低下した。

 これらの結果から、社員に対して同プログラムが有効であることが、パイロット試験として示された。

 今回の試験は、コントロール群のない研究デザインで実施された。今後は、この暫定版プログラムの有効性を実証するために、コントロール群をおいた大規模な研究デザインによる検証を予定している。

 普及のためには、プログラムを実施できる「メンタルヘルス・ファーストエイド」のインストラクターの養成が不可欠で、こうした研修システムの充実も求められる。

 将来的には、2時間より短いバージョンのプログラムやIT技術を利用したオンライン受講システムの整備により、普及しやすい環境の整備を目指しているという。

 「開発中のプログラムの有効性が今後の大規模試験で実証され、国内の多くの企業で広く普及することで、職場でのうつ病の早期発見・早期治療につながる可能性が高まります。休職や離職など産業保健における課題克服に貢献することが大いに期待されます」と、研究グループは述べている。
こころの応急処置マニュアル:メンタルヘルス・ファーストエイドジャパン(MHFA-J)

九州大学大学院医学研究院精神病態医学
岩手医科大学医学部神経精神科学講座
Development of MHFA-based 2-h educational program for early intervention in depression among office workers: A single-arm pilot trial(PLOS ONE 2018年12月7日)

(Terahata)

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