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糖尿病腎症を予防 自覚症状のない糖尿病 重症化を防ぐ取組みを紹介 厚労省が報告書

キーワード: 糖尿病

 糖尿病腎症が原因で透析治療を受ける患者が増えている。
 糖尿病腎症が重症化するのを防ぐために、糖尿病腎症のリスクの高い人を抽出し、医療機関を受診してなかったり、受診を中断している場合に、受診勧奨を行うことが、自治体で非常に重要なテーマとなっている。
 その際には、地域の特性を十分にふまえ、医師会とも連携するなどして強化する必要がある――。
 厚生労働省が発表した「自覚症状のない糖尿病の重症化を防ぐために。−国民健康保険における糖尿病性腎症重症化予防の取組に関する調査−」で、こうした現状が示された。
糖尿病腎症は自覚症状がないまま進展する
 厚生労働省の「2018年国民健康・栄養調査」によると、「糖尿病が強く疑われる者」の割合は男性18.1%、女性10.5%。そのうち薬で治療をしている人は、男性56.2%、女性51.1%と、ほぼ半数にとどまる。糖尿病を発症しても、医療機関を受診しなかったり、治療を中断している人が多いとみられている。

 糖尿病と診断されても多くの場合は、自覚症状がない。ところが、血糖値が高い状態を長く放置していると、目や腎臓の細い血管など全身の血管が傷つき、合併症が引き起こされる。

 糖尿病の三大合併症のひとつである糖尿病腎症を発症すると、腎臓の働きが徐々に低下する。腎臓は、体内の老廃物を排泄したり塩分・水分を調節したりする臓器だ。その働きが低下すると、老廃物などが体内に溜まったり、必要なタンパクが尿に漏れたりする。糖尿病腎症は、最初のころは自覚症状がなく、相当進行してから、だるさ・むくみ・吐き気・食欲不振などの症状があらわれる。

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糖尿病腎症が透析の原因の1位
 糖尿病腎症を予防・治療するために、血糖コントロールと血圧コントロールが欠かせない。そのため、医療機関に通院して治療を続けることが大切だ。検査で糖尿病が発見されても、自覚症状がないために、適切な治療を受けず、生活習慣も改善しないでいると、10〜20年間かけて徐々に悪化して、最後は人工透析が必要になる。

 人工透析は患者本人と家族の苦痛が大きく、QOL(生活の質)を著しく損なう。それだけでなく、人工透析の医療費は高額なので、医療経済への影響も大きい。人工透析の1人当たり医療費は月額40万円で、年間総額は1.57兆円と推計されている。

 新規透析導入患者の原疾患(透析に至った原因となる疾患)は、1998年以降は、糖尿病腎症が第1位となり、最近では43%前後の割合を占めている。

 糖尿病などによる腎疾患患者は年々増加の一途をたどり、人口透析の患者数は1983年には5.3万人だったのが、2016年には32.9万人と、約5.7倍に急増している。年間の新規透析導入患者数も、1983年には1.1万だったが、2016年には3.9万人と、3.5倍に拡大している。
都道府県と市町村での重症化予防
 そこで、厚生労働省は糖尿病腎症の重症化予防に本腰を入れて対策をしている。2016年には厚生労働省、日本医師会、日本糖尿病対策推進会議の3者間で「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定し、市町村国保などの取組みを国レベルで支援している。

 糖尿病腎症の重症化予防の取組みは、▼医療機関未受診者および受診中断者に対する受診勧奨・保健指導、▼通院患者のうち重症化リスクの高い患者を主治医が判断して行う保健指導――を二本柱として、人工透析への移行を防止することを目的としている。

 厚労省は、都道府県レベルで県医師会などと協力して、重症化予防プログラムの作成や取組状況の共有も進めている。さらに、国民健康保険改革の一環として、保険者努力支援制度を創設して、重症化予防の取組み、特定健診受診率の向上などの実施状況を評価して、財政支援を行っている。

 都道府県および市町村での国保の重症化予防の取組みは、地元医師会、かかりつけ医と連携して、国保の特定健康診査のデータやレセプトデータを活用したハイリスク者の抽出、未受診者や治療中断者の受診勧奨、治療中の患者に対する保健指導を主軸に実施するというもの。
かかりつけ医が糖尿病専門医と連携
 市町村国保による糖尿病腎症の重症化予防では、かかりつけ医は、地域で患者を見守る立場の重要な役割を果たすので、市町村国保としては、重症化予防事業に協力する医師の新規開拓が大きな課題となる。

 このためには、日頃から医師会役員や糖尿病専門医との信頼関係を築き、医師会側に重症化予防事業の重要性について、充分な理解を得ておくことが重要となる。また、重症化予防事業に協力している医師は、必ずしも糖尿病専門医や糖尿病症例を多く扱った内科医とは限らないので、糖尿病専門医との連携も必要となる。

 今回の調査では、所沢市医師会が「糖尿病ネットワーク」を設置して、糖尿病に詳しい医師が、他の医師からの症例問い合わせに応じるなど、医師会会員同士の連携を図っている取組みなどが紹介されている。
広島県呉市の重症化予防の先進事例
 報告では、国保の糖尿病腎症重症化予防に関する先駆的な取組として、広島県呉市の取組みを紹介している。呉市国保は、地元医師会などの医療関係者と連携して、全国に先駆けて2008年度からレセプトのデータベース化に着手し、2010年度からはレセプト等の情報を活用した、独自の糖尿病腎症の重症化予防の保健事業を実施している。

 呉市ではレセプトデータを統計的に分析し、糖尿病腎症患者のうち人工透析導入前段階にある患者に対し、通院先の医療機関と協力しながら、個別保健指導を提供する取組みをしている。具体的には、対象患者に対しテキストなど教材の配布や低タンパク・減塩メニューの料理教室、さらには呉市が委託する疾病管理ナースによる面接や電話による指導を行っている。

 糖尿病腎症で通院中の患者へ、主治医や看護師が協力し、疾患への自己管理能力を高める学習プログラムを提供する地域連携システムを、市町村国保が中心となってつくり運用している。その結果、きめ細かい疾病管理サポートが長期間にわたり可能となり、患者のHbA1c(血糖)とeGFR(腎機能)が改善した。

 こうした取り組みにより、糖尿病腎症の重症化を予防でき、人工透析の導入患者を減少できることを証明した。医師、看護師、医療保険者などとの連携によるアプローチが、患者自身の考え方や行動様式の変化を引き起こし、患者自身の自己管理能力を向上できることを示した。
糖尿病性腎症重症化予防 取組み事例の先進例
 調査では、市区町村国保における重症化予防策について、好事例先を調査して、長野県松本市・埼玉県・東京都足立区の取組みを報告書にまとめている。地域社会での健康づくりに意欲的に取り組み、運動不足や食事の偏りを改善し、地域での高齢者の健康を見守っている事例についても幅広く調査している。

長野県松本市
●市保険課、地元医師会、薬剤師会、管理栄養士、専門家が、年度当初のスタートアップ会議や症例検討会(個別患者毎の課題、対応を共有化)を通じて多職種が緊密に連携。
●地元薬局の薬剤師が保健指導を担うため、風土、気候、食文化、運動習慣、言葉を共有し、患者とのコミュニケーションが良好かつ、指導終了後も処方薬の受取で薬局の窓口にて自然な形での健康相談が継続。
●市は、地域の健康活動(公民館活動、体力づくりサポーター養成、出前ふれあい健康教室等)を推進。

埼玉県(広域的取組)
●県、医師会、糖尿病対策推進会議が連携して、重症化予防プログラムを策定し、県内63市町村中、49市町が参加する「埼玉県方式」と呼ばれる広域的な重症化予防策を支援。
●一括外部委託による対象者抽出、受診勧奨、保健指導、各種リーフレット作成、データ授受方法や還元データを共通化し、事業効率化によるスピードアップを推進。

埼玉県所沢市
●事業は「埼玉県方式」による一括外部委託だが、早期受診促進のチラシや保健指導参加勧誘のダイレクトメールを独自に作成して、対象者の動機付けを支援して、参加者増加を図っている。
●所沢市医師会は、市の重症化事業を機に糖尿病ネットワークの設立(77医療機関が参加)、医師以外のメディカルスタッフ向け糖尿病関係の勉強会の設営等により市の事業に協力。
●市は、地域の健康活動(プレ重症化予防、健康講演会、測定会、市民医療センターでの糖尿病教室等)を推進。

埼玉県志木市
●事業は「埼玉県方式」による一括外部委託だが、受診の再勧奨、保健指導参加者の勧誘、途中で脱落しそうな参加者のフォローなどで、市の専門職が直接に関与し、保健指導の現場感覚を吸収。
●近隣の朝霞地区4市(朝霞地区医師会が共通)にて、協力医療機関の相互利用や予防事業の情報共有にて連携強化。
●市は、地域の健康活動(健康寿命のばしマッスルプロジェクト、国保運動教室、節酒・減塩イベント等)にも取組み。

東京都足立区
●区の保健師が、受診勧奨や保健指導の対象者抽出、通知や再勧奨を推進。受診勧奨による受診率は約86%と高水準。
●保健指導自体は外部委託だが、区の保健師が面接指導後のカンファレンスで、きめ細かくフォロー。
●区の専門職は、歯周病や妊娠糖尿病など、糖尿病の将来的な発症予防活動にも積極的に取組。
●市町村国保と地元医師会との連携を強化

自覚症状のない糖尿病の重症化を防ぐために。−国民健康保険における糖尿病性腎症重症化予防の取組に関する調査−(厚生労働省2018年12月28日)

(Terahata)

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