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保健政策もグローバル化 世界がいま直面している10の課題 WHOが発表

キーワード: 糖尿病 CKD(慢性腎臓病) 動脈硬化 心筋梗塞/狭心症

 世界保健機関(WHO)は、「2019年に世界が直面している健康・医療分野の10の脅威」を発表した。グローバリズムが進展する世界において、各国が取り組むべき保健政策上の10項目の課題を示している。
ボーダーレス化する世界で何が起こっているか
 ボーダーレスとは、国境が無効化するということ。多くの国で交通手段、コンピュータやITの発達、国家間のルールが変動している。ヒトやモノが自由に動くことにより、一国で発生していた問題がすぐに世界中に広がるようになってきた。

 その動きは医療や保健の分野にも波及している。人口減少と高齢化は世界の先進国に共通する課題であり、医療や社会保障の在り方に対し、多面的な取組みが求められている。

 デジタル社会がもたらす効率化や解決力にも大きな期待が寄せている。健康管理や予防、介護関連の市場は世界的に伸びをみせており、産業活動もボーダーレスに活発化している。

 そうした中、世界保健機関(WHO)は、優先的に取り組むべき保健政策を「5ヵ年戦略計画」にまとめて発表した。世界人口76億人のうち、医療サービスに自由にアクセスできるのは10億人程度だという。より多くの人が適切な医療サービスを受けられるよう、各国に環境整備を求めている。

関連情報

1. 地球温暖化と大気汚染

 化石燃料の使い過ぎによる二酸化炭素ガスの濃度上昇は、地球規模で気温が上昇する地球温暖化現象を引き起こしている。世界の食料生産に深刻な影響を及ぼし、世界人口の増加もあり、農産物など食料問題がより深刻なものになる。

 また、大気汚染が最大の環境リスクとなっている。世界の10人中9人が汚染された空気を毎日吸っている。大気汚染が原因で発症する肺などの呼吸器疾患や心臓などの循環器疾患、がん、脳卒中などにより、世界で700万人が死亡している。

 今年9月には国連気候変動サミットが開催され、各国の地球温暖化対策と目標について話し合われる予定だ。

2. 非感染性疾病(NCD)

 2型糖尿病、がん、心臓病などの非感染性疾病(NCD)が世界的に増えている。世界の全死因の70%以上にあたる4,100万人がNCDによるものだ。NCDにより30〜69歳で死亡する人の数は1,500万人に上る。

 NCDの5つの主要なリスク要因は、(1)喫煙、(2)運動不足、(3)アルコール、(4)不健康な食事、(5)大気汚染――これらはすべて改善が可能なものだ。このうちWHOは運動不足の解消に向けて国際的なキャンペーンを展開しており、各国政府に協力を求めている。2030年までに運動不足を15%削減することを目標に掲げている。

3. インフルエンザ・パンデミック

 インフルエンザが世界的に流行している。ウィルスには国境は関係なく、とくに小児や高齢者などの健康弱者が危険にさらされている。ワクチンや抗ウイルス薬による治療にアクセスできるよう環境を整備する必要がある。

 WHOは114ヵ国の153機関の協力を得て、インフルエンザのグローバルな流行を監視している。各国が足並みを揃えて協調してインフルエンザ対策に取り組む必要がある。

4. 自然災害などで被害が

 台風や地震、火山噴火、地すべりなどの危険な自然災害が増えている。干ばつや飢餓、紛争なども深刻で、人命や人間の社会的活動に被害が生じている。世界人口の22%にあたる16億人以上が、不安定で脆弱な環境に暮らしており、医療サービスにアクセスできていない。

 WHOは母子保健の改善などの目標を掲げているが、持続可能な開発のための目標を半数が達成できていない。必要なすべての人が予防接種を受けられるようにするなど、質の高い医療サービスを提供できるよう、各国の保健システムを強化することを求めている。

5. 薬剤耐性菌(AMR)

 近年、抗菌薬(抗生物質など)が効かない薬剤耐性(AMR)を持つ細菌が世界中で増えている。抗菌薬は感染症の治療で重要な役割を担っているが、抗菌薬の不適切使用により抗菌薬が効かない薬剤耐性菌が増えると、感染症の治療がより難しくなり、重症化すると時に死に至ることもある。

 抗生物質、抗ウイルス薬、抗マラリア薬など抗菌薬の開発は、現代医学の最大の功績だが、世界はいまだ肺炎や結核、淋病、サルモネラなどの感染症を克服できていない。薬剤耐性結核により、2017年には世界の1,000万人が発症し、160万人が死亡しており、深刻な障害になっている。

 薬剤耐性の発生を遅らせ、拡大を防ぐために、抗菌薬の適正な使用を世界規模で広げる必要がある。

6. エボラ出血熱など新たな感染症が脅威に

 2018年にコンゴ民主共和国でエボラ出血熱のアウトブレイクが数回発生した。こうした効果的な治療法やワクチンのない新たな感染症は、世界のどこでも発生しうるものだ。

 とくに人口密度の高い都市部で広がるのを防ぐ対策が必要となる。ジカ熱、ニパウイルス感染症、中東呼吸器症候群(MERS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)など、深刻な感染を引き起こすおそれある未知の病原体に対し、各国が準備する必要がある。

7. プライマリ・ヘルス・ケアは重要

 プライマリ・ヘルス・ケアは、患者が最初にアクセスする医療の第一線で、継続的・統合的に整備されたケアを提供する保健制度の根幹をなすものだ。世界の低・中所得諸国では十分なプライマリ・ケアが整っておらず、多くの人が危機にされされている。

 目指すものは地域密着型の医療や介護を提供できる体制を整備すること。2018年の国際カンファレンスで、各国がプライマリ・ケアの改善に取り組み、その実現へ向けてWHOが医療機関などと連携して取り組むことが採決された。

8. ワクチン接種の適切な理解を広める

 ワクチン接種は病気を回避するためのもっとも費用対効果の高い方法のひとつだ。年間に200万人の死亡を防ぎ、グローバルで広範囲な予防接種の環境整備が進めば、さらに150万人を死亡を防げる。

 たとえば麻疹は先進国では稀な疾患とみられているが、多くの途上国では多数の発生がある。麻疹の感染は世界的に30%増えており、その理由は複雑だが、ワクチン摂取を拒否する人が多いことが一因だとみられている。

 これらはワクチン接種に対する誤った理解が原因だ。ワクチンを利用できるにもかかわらず、それを拒否するのは、予防可能な疾病への取り組みを逆行させてしまうおそれがある。

 地域でもっとも信頼できるアドバイザーである医療従事者は、インフルエンザをはじめとするワクチンの接種をサポートするため、適切な情報を提供する必要がある。

9. デング熱

 温暖化によって危険な蚊なども入ってくる。それらが媒介する感染症の広がりも懸念されている。蚊が運ぶ感染症のうち、とくに深刻なのはデング熱だ。デング熱は世界最大の健康への脅威のひとつで、世界人口の40%がデング熱の感染リスクにさらされており、年間に3億9,000万人が感染している。

 以前はバングラデシュやインドなどで雨季に多数の感染がみられたが、現在はネパールなど熱帯や温帯の国にも広がっている。デング熱による死亡を2020年までに50%削減するのが目標だ。

10. エイズ(HIV)

 HIV治療の研究は大幅に進み、2,200万人が抗レトロウイルス薬による治療を受けている。しかし、いまなお感染者は3,700万人以上おり、毎年100万人もの人々が犠牲になっている。

 途上国では15〜24歳の若い女性でもHIV感染がみられる。医療システムから排除されがちな性産業従事者、受刑者、ゲイ、トランスジェンダーといった層へのサポートも必要。匿名のHIV検査を職場でも受けられるようにするなどして対策する必要がある。

Ten threats to global health in 2019(世界保健機関 2019年1月18日)
Thirteenth general programme of work 2019−2023(世界保健機関)

(Terahata)

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