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寿命を縮める「転倒」を効果的に防ぐ 60歳超では4割近くが「転倒」 食事と運動で対策

キーワード: 骨粗鬆症/ロコモティブシンドローム/サルコペニア セルフケア 食生活 身体活動・運動不足

第62回日本糖尿病学会年次学術集会
 「転倒」は命にも関わる深刻な問題で、高齢者では「寝たきり」の原因にもなる。寿命を縮める「転倒」を効果的に防ぐための方法が解明されている。
高齢者の労災が増えている 60歳超では4割近くが「転倒」
 転倒や骨折は高齢者の身体障害をもたらす主要な原因になっている。転倒の多くは、身体的に動作やバランス能力に支障をきたしている状態の人が、家庭や職場で障害物に遭遇したときに起きる。

 家庭だけでなく、職場での転倒により労働災害につながるケースも多い。日本の人口動態調査によれば、職業生活を含めた一般生活の中で、転倒・転落で亡くなる人は交通事故で亡くなる方より多い。

 働く高齢者の労働災害は増えている、厚生労働省の労働災害発生状況の報告によると、2018年に労災に遭った60歳以上の働き手は前年よりも10.7%増え、労災全体の4分の1を占めている。

 なかでも目立つのが転倒事故だ。全世代では労災全体の25%が転倒によるものだが、60歳以上に限れば37.8%を占める。

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転倒災害の防止が重要課題に
 転倒については、業種を問わず増加傾向にあり、休業4日以上の死傷災害の25%程度を占める。とくに高齢の女性での被災が多く、被災者のうち約26%が60歳以上の女性だ。

 高齢者の労災が増えているのは、65歳までの定年延長や全国的な人手不足を背景に、働く高齢者が増えているからだ。65歳以上の働き手は10年前より309万人増えて875万人に達し、労働力人口全体の12.8%を占める。

 転倒災害の防止は、あらゆる人にとっての重要課題といえる。政府は70歳までの雇用の確保を努力義務として企業に課す方針を打ち出している。高齢者が安心して働ける職場づくりも課題となっている。
筋力の低下や低栄養が転倒の原因であることが多い
 要介護になるきっかけとなるのが、骨折をまねく転倒だ。年齢を重ねるとともに、視力や握力、バランス保持能力といった身体機能が低下していくにつれ、転倒事故を起こしやすくなる。

 転倒は筋力の低下が要因であることが多い。高齢者の筋力の低下の主因となるのは、低栄養と運動不足だ。

 低栄養は、身体を動かすために必要なエネルギーや筋肉や皮膚、内臓などをつくるタンパク質が不足した状態。食欲の低下や食事が食べにくくなるなどの理由で食事量が徐々に減ると、低栄養になりやすい。

 高齢者夫婦世帯や独居世帯による孤食では、食事を簡単に済ませたり(ご飯とお味噌汁のみ、菓子パンや麺類と単品メニューなど)、肥満やコレステロールが気になり、動物性タンパク質(肉類、卵、乳製品)を控える傾向がある。

 食事は1日3食しっかり食べて、1日に必要なエネルギーとタンパク質を摂取することが大切だ。

 「高齢者糖尿病診療ガイドライン 2017」では、腎臓の重度の機能障害がなければ、高齢者は十分なタンパク質を摂ることが勧められている。

 高齢者の筋肉の量や質を保つために1.0〜1.2g/kg 体重/日のタンパク質を摂ることが推奨されている。タンパク質は、全体の摂取量だけではなく、1日3食を均等に摂取した方が良い。
ウォーキングやレジスタンス運動、バランス運動で転倒を防ぐ
 骨は、負荷がかかるほど骨をつくる細胞が活発になり、強くなる性質がある。ウォーキングを日課にしたり、階段の上り下りを取り入れるなど、日常生活のなかでできるだけ運動量を増やすことが必要となる。

 フレイルやサルコペニアを予防するために有効なのは、筋肉に負荷をかけて行うレジスタンス運動だ。レジスタンス運動は筋力を高め、疲労を軽減させる。適度な負荷の運動を行い、継続することが大切だ。

 また、バランス運動や有酸素運動も、転倒リスクの低減につながるものとされている。とくにバランス運動とレジスタンス運動を併用すると、筋力の維持とバランス改善により、歩行や移動が安定する。

 片脚だけで10秒以上立っていられるかどうかを確認する転倒リスクのセルフチェックを行うことも重要だ。
身体機能の低下は運動で防げる
 加齢とともにあらわれる身体機能の低下は、トレーニングや日常活動のなかでの心がけで予防できる。

 米国予防医療作業部会(USPSTF)は2018年、高齢者の転倒の予防のための推奨をまとめた。転倒予防のための対策として運動を推奨している。

 運動や栄養を改善することで、高齢者の転倒の発生率を0.79倍に減少できるという。これは、1人につき1年あたり1.5回ほど転倒を減らすことに相当する

 ウォーキングなどの運動を週3回以上6ヵ月以上続けることで、転倒をおよそ0.8倍に減らすことができるという報告がある。

 USPSTFが推奨しているのは、次の3点だ――。
▼ウォーキングなどの中強度の運動を週に150分以上、または高強度の運動を週75分続ける。
▼筋力トレーニングを週に2回以上行う。
▼バランス運動を週に3日以上行う。
ビタミンDは筋肉や骨の代謝で重要
 また、ビタミンDは筋肉や骨の代謝で重要だ。ビタミンD不足と身体活動の低下、転倒や骨粗鬆症性の骨折との関連が報告されている。

 高齢者は体内のビタミンDが不足することが多く、とくに2型糖尿病のある人ではビタミンDの不足は筋肉量の低下につながるという調査結果がある。

 ビタミンDは日光を浴びることで体内に作られる。また、魚類にはビタミンDが豊富に含まれている。魚を食べることでビタミンDを十分に体内に取り入れることができる。

 ただし、サプリメントでビタミンDを大量に摂取することには注意が必要だ。USPSTFは、転倒や骨折の予防のためにビタミンDやカルシウムのサプリメントを摂取することについて、「十分なエビデンスがない」という見解を発表している。

 サプリメントによるビタミンDの過剰摂取は毒性をもたらす。一方で、身体が生成するビタミンD量は制限することができるため、日光への過剰曝露がもとでビタミンD中毒が発生することはない。

 USPSTFは、「主治医が、状況に応じて高齢者の転倒リスクをチェックし、栄養を含め個々の患者に合わせた予防策を提示する」ことを推奨している。

2018年の労働災害発生状況(厚生労働省 2019年5月17日)
転倒災害防止対策(厚生労働省)
職場のあんぜんサイト:STOP!転倒災害プロジェクト(厚生労働省)
身体的能力のセルフチェック
USPSTF Issues Final Guidance on Preventing Falls, Fractures(米国予防医療作業部会 2018年4月18日)
Interventions to Prevent Falls in Older Adults: Updated Evidence Report and Systematic Review for the US Preventive Services Task Force(ジャーナル オブ アメリカン メディカル アソシエーション 2018年4月24日)
第62回日本糖尿病学会年次学術集会

(Terahata)

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