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運動が高齢者の「ADL(日常生活動作)」を高める 1日1万歩を達成できなくても効果がある

キーワード: 高血圧 脂質異常症(高脂血症) 一無・二少・三多 糖尿病 肥満症/メタボリックシンドローム 三多(多動・多休・多接) 「多動」身体を活発に動かす

 ウォーキングなどの運動をしている高齢者は、「ADL(日常生活動作)」などの能力が高いことが明らかになった。高齢者では、有酸素運動や筋力トレーニングをしていないと、ADLの能力はたちまち衰える。
 ウォーキングの歩数の目標は1日1万歩とされることが多いが、高齢者では、1日7,500歩でも十分な効果を得られることも分かった。1日4,400歩でも死亡リスクは低下する。
運動を習慣として行っている高齢者は活発
 運動を習慣として行っている高齢者は、日常の活動が活発で、自立性を保ち、外部からの支援に頼ることもなく、結果として介護予防につながることが明らかになった。

 研究は、ウィーン医科大学によるもので、5月に開催された欧州公衆衛生週間に合わせて発表された。研究チームは、「オーストリア健康調査」に参加した65歳以上の男女3,308人を対象に、面談して運動の実施状況と健康状態について調査した。参加者のうち439人(13.3%)が糖尿病だった。

 「ADL(日常生活動作)」は、日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作で、「食事、排泄、入浴、衣服の着脱、移動、起居動作」などの基本的な繰り返し動作をさす。高齢者の身体能力や日常生活のレベルをはかるための重要な指標となる。

 これに対し、「手段的日常生活動作(IADL)」は、基本的なADLよりもさらに複雑な日常生活動作をさす。「掃除・料理・洗濯・買い物などの家事、交通機関の利用、電話対応などのコミュニケーション、スケジュール調整、服薬管理、金銭管理、趣味」などをさす。 関連情報
ADL障害を防ぐために週に2〜3回の筋力トレーニングを
 調査に協力した65歳以上の人のうち、16.4%がADL障害、47.1%がIADL障害と判定された。運動にはADLとIADLの障害を予防する効果があるのは明らかで、運動ガイドラインで奨励されている運動量を毎週こなしている高齢者は、ADLを実行できる能力が3倍、IADLを実行できる能力が2倍に高まることが示された。

 一方で、ウォーキングなどの有酸素運動の基準を満たしていないのは54.7%で、そうした人ではADL障害のリスクが1.73倍に上昇し、IADLのリスクは1.57倍に上昇した。また、筋力トレーニングの基準を満たしていないのは67.1%で、ADL障害のリスクが1.34倍に上昇し、IADL障害のリスクは1.29倍に上昇した。

 「筋肉を増強する運動が必要です。椅子を使ったスクワットが高齢者に勧められることが多いのですが、これを週に2回以上行うことが勧められます。ゴムバンドを使った軽い筋力トレーニングも効果的です」と、ウィーン医科大学のトーマス ドナー氏は言う。

 高齢者には、週に150分の中強度のウォーキングや持久力運動も勧められる。ドナー氏によると中程度のウォーキングは、「楽に会話はできるが、歌うことはできないぐらいの速度で歩くこと」だという。

 筋力トレーニングは最初は週に1回から始め、慣れてきたら週に2〜3回に増やしながら、トレーニングの強度を高めていく。ゴムバンド運動を繰り返し12〜15回行うのを目標にする。
あらゆる年齢層の人が積極的に運動をするべき
 体力が低下すると、バランス能力や移動能力も低下し、連鎖反応的にさらに体力が低下し、やがて自立して生活できなくなる。支援が必要となり、社会から孤立してしまう高齢者も少なくない。支援や介護を必要としない元気な高齢者を増やすことは、社会全体にとっても有益だ。

 「健康で自立した状態を維持するためには、あらゆる年齢層の人々がより積極的に運動する必要があります。私たちにできることはただひとつで、国民の意識の向上に向けて努力し続けることです」と、ウィーン医科大学リハビリテーション・産業医学部のリチャード クレヴェンナ氏は言う。
「1日1万歩」でなくとも運動の効果はある
 運動指導を受けるときに、「1日1万歩を歩きましょう」と指導されることが多い。この1万歩という数字には根拠はあるのだろうか? 米国のブリガム アンド ウィメンズ病院の研究によると、必ずしも「1日1万歩」でなくとも運動の効果は得られるという。

 研究チームは、平均年齢72歳の女性1万6,741人を対象に、4年以上の追跡調査を行った。その結果、1日に2,700歩しか歩いていない女性に比べ、4,400歩を歩いた女性では、死亡率が明らかに低かった。歩数を1日に7,500歩まで増やすと、死亡リスクはさらに低下することが明らかになった。

 研究チームは、女性の心血管疾患とがんのリスクを評価するために実施されたランダム化・長期観察研究に参加した平均年齢72歳の女性1万6,741人に、7日間連続で活動量計を装着してもらい、さらに定期的に健診を受けてもらい、4年以上の追跡調査を行った。

 期間中に504人の女性が死亡した。解析した結果、ウォーキングの歩数が下位25%(1日平均2,700歩)の女性では死亡リスクがもっとも高く、それに比べ、1日平均4,400歩の女性では死亡リスクは41%減少することが分かった。死亡リスクは歩数が増えるにつれて減少し、1日に7,500歩以上になると最小になった。
1万歩を達成できなくても、がっかりすることはない
 ウォーキングなどの運動が、血圧、インスリン値、血糖値、コレステロール値などの健康マーカーを改善することは多くの研究で確かめられている。

 「1万歩の歩数という数字は魔法のように聞こえます。歩数計や活動量計の多くは、毎日1万歩という目標が設定されています。しかし実際には、それより少ない歩数であっても、十分に効果を得られることが分かりました」と、ブリガム アンド ウィメンズ病院のアイ-ミン リー氏は述べている。

 「1日1万歩を達成できなくても、がっかりすることはありません。もっとも危険なのは、まったく運動をしないことです。大切なことは、ウォーキングを続けることです」。

 米国人の1日の平均歩数は4,000〜5,000歩だという。歩数をあと3,500〜2,500歩増やすと健康増進の効果を得られやすくなる。ウォーキングの時間にすると、毎日およそ30分間を余計に歩けば良いことになる。

Health benefits of exercising into old age(ウィーン医科大学 2019年5月13日)
Association between fulfilling the recommendations for health-enhancing physical activity with (instrumental) activities of daily living in older Austrians(Wiener klinische Wochenschrift 2019年5月22日)
Among older women, 10,000 steps per day not needed for lower mortality(ブリガム アンド ウィメンズ病院 2019年5月29日)
Association of Step Volume and Intensity With All-Cause Mortality in Older Women(JAMA Internal Medicine 2019年5月29日)

(Terahata)

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