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「魚」を食べる食事スタイルが糖尿病リスクを低下 サプリメントの効果は?

キーワード: 糖尿病 食生活

 魚をよく食べる食事スタイルが糖尿病の危険性を低下させるという研究が世界中で発表されている。
 魚をよく食べる日本の食事スタイルは、健康的と世界的に評価が高い。魚を食べる習慣にはメリットがたくさんある。
 一方で、魚油のサプリメントでは効果を得られないという研究も発表されている。
魚を中心とした日本食は健康食
 魚をよく食べる食生活が糖尿病の危険性を低下させるとの研究が発表された。魚を食べることで肥満を抑えられ、血糖コントロールとインスリン抵抗性の改善も期待できる。

 脂肪にはいくつかの種類があり、それぞれ性質や含まれる食品が違う。脂肪は大きく飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられる。そして、不飽和脂肪酸は一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられ、さらに、多価不飽和脂肪酸はn-3系とn-6系に分けられる。

 青魚(イワシ、サバ、ニシン、サンマ)やマグロなどに多く含まれるn-3系不飽和脂肪酸には、体に良い効果があると注目されている。魚のn-3系不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は、中性脂肪を下げ、血栓(血のかたまり)ができるのを防ぎ、動脈硬化を予防する働きをする。

 魚には、n-3系不飽和脂肪酸だけではなく、良質なタンパク質、ビタミンDやビタミンB、ミネラルも含まれている。日本が世界でトップの長寿国を誇る秘訣のひとつは、魚を中心とした健康的な日本食にあると考えられている。
魚を週に1〜3回食べる死亡リスクが減少
 ハーバード公衆衛生大学院が20件の研究を解析した研究によると、サケ、ニシン、サバ、イワシなどの脂肪の多い魚を週に1〜3回食べると、心臓病による死亡リスクが最大で36%減少する。

 研究グループは、食事では動物の肉を食べ過ぎないようにし、魚を増やすことを勧めている。脂肪の多い牛肉や豚肉、ハム、ソーセージなどの加工肉には飽和脂肪酸が多く含まれる。この脂肪を摂りすぎると血液中の悪玉(LDL)コレステロールが増えやすくなる。

 一方、魚に多く含まれる多価不飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを増やさない。週に1〜2回魚を食べることは、脳卒中、うつ病、アルツハイマー病、他の慢性疾患のリスクを減少する可能性も指摘されている。

 地中海沿岸でみられる「地中海ダイエット」という食事法は健康食として注目されているが、その特徴のひとつは魚をよく食べることだ。

 スペイン保健省の支援を受け実施されている多施設共同研究「PREDIMED」では、魚をよく食べる食事スタイルが糖尿病の危険性を低下させることが明らかになっている。地中海ダイエットは野菜や果物、魚、ナッツ類、オリーブオイルなどをふんだんにとる食事スタイルで世界的に有名だ。
魚を多く食べる日本人は糖尿病リスクが低下
 日本でも、「魚を多く食べる男性ほど、糖尿病の発症リスクは低下する」ことが、国立がん研究センター、国立国際医療研究センターなどが実施している多目的コホート研究(JPHC研究)で明らかになっている。

 40〜75歳の日本人5万2,680人を対象とした調査で、男性では魚介類摂取が多いほど糖尿病発症のリスクが低下する傾向がみられ、摂取量がもっとも多い群では、もっとも少ない群に比べ糖尿病のリスクが27%低下していた。

 もっとも多いグループは週に男性 172g、女性 163gの魚を食べていた。調理する前の魚の1切あたりの重量は、サバが40g、サケが90gくらいになる。魚を脂の量で分けたところ、糖尿病のリスクが低下するのは、脂の豊富なサケ、マス、アジ、イワシ、サンマ、サバ、ウナギ、タイ類などだった。

 日本人は世界的にみて魚をよく食べているが、欧米では魚のフライ(揚げ物)が好まれる地域もあり、魚の摂取と糖尿病予防が必ずしも結びつかないという研究も報告されている。魚の調理法は、焼く、煮る、蒸す、生など、調理油を使わない低カロリーのものが良さそうだ。
魚油のサプリメントは効果なし?
 魚油が健康に良いことはよく知られているが、サプリメントで摂取しても効果はあるのだろうか? これについて、魚油のサプリメントは糖尿病患者の心筋梗塞や脳卒中を予防しないという調査結果を、オックスフォード大学などの研究チームが発表した。

 研究グループは、糖尿病患者がn-3系脂肪酸のサプリメントを利用すると、心筋梗塞などの心血管疾患や脳卒中を予防できるかを調べる無作為化試験である「ASCEND」研究を実施した。研究成果は欧州心臓病学会(ESC)で発表された。

 魚を多く食べると心筋梗塞や脳卒中のリスクが減少することは多くの研究で報告されている。しかし、糖尿病患者が魚油のサプリメントを摂取すると、これらの深刻な疾患を予防できるかは分かっていなかった。

 試験には、1型および2型糖尿病の患者1万5,480人が参加した。全員年齢は40歳以上で、糖尿病ではあるが、試験開始時に心血管疾患を発症していなかった。

 参加者は、無作為に2つのグループに分けられ、片方はn-3系脂肪酸1gを含むサプリメントを1日1回服用し、もう片方はプラセボ(オリーブ油)を服用した。調査は平均7.4年間追跡して行われた。

 その結果、1,401人が心血管疾患を発症した。参加者の全員が糖尿病で、糖尿病でない人に比べ、心血管疾患のリスクは2〜3倍高くなった。深刻な血管イベントの発生率は、n-3系脂肪酸群が8.9%、プラセボ群が9.2%となり、有意差はなかった(率比:0.97)。

 初回の深刻な血管イベントまたは血行再建術の発生率も、n-3系脂肪酸群が11.4%、プラセボ群が11.5%となり、有意差はみられなかった(率比:1.00)。

 やはり魚油は実際に魚を食べて摂取した方が良さそうだ。「魚油のサプリメントは糖尿病患者の心血管疾患を低下させないことが分かりました。予防の観点からのサプリメントの利用は勧められません」と、研究者は述べている。
魚の環境汚染の心配は?
 一方で最近では、汚染された魚を食べることによる健康への影響を懸念する科学者も増えてきた。世界の地域によっては、捕獲されたニシンやサケなどの魚からダイオキシン、DDT、PCBなどの「残留性有機汚染物質(POP)」が検出されることもある。

 これらの化学物質が2型糖尿病のリスクを上昇させる可能性が指摘されている。これについては、スウェーデンのチャルマース工科大学の研究グループは、「現在までのところ、魚を食べるメリットが、魚を避けるデメリットを上回っている。汚染物質を含まないのであれば、魚は2型糖尿病のリスクを減少するのは明らかだ」という研究を発表した。

 研究グループはメタボロミクスという新しい技術を使い、血液サンプルに含まれる30のバイオマーカーから、魚の摂取量を正確に測定できる技術を開発した。この技術を使えば、どの魚が比較的危険であるか、あらかじめ判定できるという。

 スウェーデンでは、これはバルト海、ボスニア湾、ヴェネルンとヴェーネルン湖といった地域で捕獲された魚から微量の汚染物質が検出されたという。なお、POPの多くは脂溶性で、魚、肉、乳製品などの脂肪の多い動物性食品にも含まれる。

 自然環境における汚染物質については世界的な問題になっている。今後も注視が必要だが、必要以上に心配することなく、魚を食べる習慣を身につけるとよそさそうだ。

How Often Should You Be Eating Fish?(Consumer Reports 2018年5月17日)
Fish intake, contaminants, and human health: evaluating the risks and the benefits(Journal Of The American Medical Association 2006年10月18日)
Fish Consumption and Incidence of Diabetes(Diabetes Care 2012年3月13日)
Fish intake and type 2 diabetes in Japanese men and women: the Japan Public Health Center-based Prospective Study-(American Journal of Clinical Nutrition 2011年7月20日)
Meat, Dietary Heme Iron, and Risk of Type 2 Diabetes Mellitus(American Journal of Epidemiology 2017年5月23日)
Fish oils do not prevent heart attack or strokes in people with diabetes(欧州心臓病学会 2018年8月26日)
ASCEND: A Study of Cardiovascular Events iN Diabetes: Characteristics of a randomized trial of aspirin and of omega-3 fatty acid supplementation in 15,480 people with diabetes(American Heart Journal 2018年4月)
Fish without pollutants protect against diabetes type 2(チャルマース工科大学 2019年6月18日)

(Terahata)

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