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2型糖尿病患者の半数がCKD未診断 腎臓病が進行してからでは手遅れ

キーワード: 糖尿病 CKD(慢性腎臓病)

 慢性腎臓病(CKD)を併発している2型糖尿病患者は多いが、そのほぼ半数がCKDと診断されておらず、治療も不十分という調査結果が、5月にボストンで開催された全米腎臓財団(NKF)の学術会議で発表された。
 「腎臓病を早期発見するための取り組みが、今後10年間の大きな仕事となります」と研究者は述べている。
腎臓がいったん壊れると、もとに戻せなくなる
 慢性腎臓病(CKD)は腎臓の働きが低下した状態の総称。糖尿病や高血圧を治療しないで放置しておくと、動脈硬化が進行し、CKDになりやすくなる。

 適切な治療をしないと、腎臓が機能しなくなる末期腎不全(ESKD)に進行してしまう危険性がある。CKDは脳卒中や心筋梗塞のリスクも上昇させる。

 CKDでは糸球体が少しずつ壊れていく。その結果、血液中の老廃物が十分に取り除けなくなったり、尿に漏れないはずのタンパクが尿に交じったりする。糸球体が一定以上に壊れてしまうと、正常に戻すことはできなくなる。CKDを早期発見し、治療を開始することが重要だ。

 一定程度以上に壊れてしまった糸球体は、正常に戻すことができないが、高血糖や高血圧を治療し適切にコントロールすれば、腎症の進行を抑えられ、安定した状態(寛解)を維持できることが分かっている。

 CKDにより腎機能が低下あるいは腎障害の状態にある米国人は13.6%に上り、2020年までに14.4%、2030年までに16.7%に増加すると予測されている。日本では成人の12.9%、1,330万人がCKDだと推測されている。

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腎臓病の検査を定期的に受ける必要が
 自覚症状の乏しい慢性腎臓病の発見に役立つのが、尿中のタンパク質の濃度を調べる尿検査と、血液中の「クレアチニン」を調べる血液検査だ。

 クレアチニンとは血液中の老廃物のひとつであり、通常であれば腎臓でろ過され、ほとんどが尿中に排出される。しかし、腎機能が低下していると、尿中に排出されずに血液中に蓄積される。この血液中のクレアチニンを「血清クレアチニン値」という。

 また、血清クレアチニン値、年齢、性別から推算されるのが「eGFR(推算糸球体濾過値)」で、多くの医療施設で腎臓の機能をあらわす値として使用されている。

 しかし、糖尿病が原因の慢性腎臓病は、上記の検査だけでは早期発見できない。多量のタンパク尿が検出される以前から糸球体が壊れはじめることが多いからだ。

 早期の段階では、タンパクの主成分であるアルブミンがごくわずか尿に混じる。その「微量アルブミン尿」の検査が早期発見には不可欠となる。アルブミン尿は通常の健康診断では検査されない。そこで糖尿病の人は、かかりつけの医療機関でアルブミン尿の検査を3ヵ月から1年に1回受けることが推奨されている。
腎臓病が進行してから発見される患者が多い
 シカゴ大学やカリフォルニア大学などの研究チームは今回の研究で、米国の一般診療医を対象とした全米外来診療調査(NAMCS)の2010〜2017年データを解析した。

 臨床検査を行った結果、糖尿病と慢性腎臓病(CKD)を合併症していると判定された12万3,169人の患者のうち、6万359人(49%)がCKDの診断を受けておらず、適切な治療を受けていないことが分かった。

 慢性腎臓病の進行具合は、老廃物を1分間にろ過できる量を示すeGFRの値で分けられる。eGFRの値が低いほどステージが進み、腎臓の機能が低下していることになる。

 ステージはG1〜ステージG5の5段階に分かれ、ステージG3はG3aとG3bの2つに分かれる。G5がもっとも重症で、末期腎不全(ESKD)という深刻な状態になる。

 糖尿病と慢性腎臓病(CKD)を診断されていない患者のうち、腎臓病のステージがG3aまで進行している割合は57%、G3bが30%、G4が11%、G5が4%だった。腎臓病がかなり進行してから発見される患者が多いことが示された。
高血圧や糖尿病があると心臓病のリスクは上昇
 CKDが進行するとむくみや貧血などのさまざまな症状が出てくるが、腎臓の働きかなり低下しないと目立った症状は出てこない。初期の段階でCKDを発見し、進行を抑えるために治療を開始することが重要だ。

 CKDの進行を抑えるためには、その原因が糖尿病であれば、糖尿病の治療をしっかり行うことが必要だ。加えて、CKDを進行される因子のうち改善できるものを組み合わせて良くしていくことが求められる。

 具体的には、(1)生活習慣の改善(肥満の解消や禁煙など)、(2)食事(食塩制限、低タンパク食など)、(3)高血圧の治療、(4)糖尿病の治療、(5)脂質異常症(血液中のコレステロールや中性脂肪が高い)の治療、(6)骨やミネラル代謝異常の治療、(7)高尿酸血症の治療などを行う。

 「高血圧や糖尿病などがあり、慢性的な炎症や障害にさらされていると、腎臓病は進行しやすくなります。腎臓を一定以上傷めてしまうと、もとに戻すことはできなくなります。腎臓病を早期から治療することが大切です」と、シカゴ大学医学部のジョージ バクリス氏は言う。

 「糖尿病を診ている医師と腎臓病の専門医との連携を行うことも大切です。CKDステージG3以降、遅くてもG4には、糖尿病に加えて腎臓病専門医の診察を受けることを考えるべきです」。
腎臓病を早期発見できる体制作り
 CKDの治療は複雑で、腎不全を予防し患者の健康を守るために、複合的な介入が必要となる。医師や、看護師、栄養士などの医療スタッフは患者の生活習慣改善を指導し、薬物療法で高血圧、高コレステロール、高血糖をコントロールする必要がある。

 「腎臓病の検査をもっと簡便に行えるよう、医療技術を進歩させる必要もあります。患者の生活習慣の改善と服薬遵守などをサポートするために多面的な取組みも必要です。より効率的でスケーラブルなシステムを構築することが、今後10年間の医療での大きな仕事となります」と、研究者は述べている。

Kidney Disease in Patients with Diabetes is Going Undiagnosed, Says Study Presented at 2019 Spring Clinical Meetings(全米腎臓財団 2019年5月9日)
Prevalence and Factors Associated with Undiagnosed Chronic Kidney Disease in Diabetes Mellitus(National Kidney Foundation's 2019 Spring Clinical Meetings)(全米腎臓財団 2019年5月9日)
Chronic Kidney Disease Patients Face Continual, Significant Gaps in Care(カリフォルニア大学サンフランシスコ校 2019年7月11日)
Trends in Quality of Care for Patients with CKD in the United States(Clinical Journal of the American Society of Nephrology 2019年7月)

(Terahata)

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