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「ダンス」には認知機能を改善する効果がある 認知症予防の運動プログラムを開発

キーワード: 一無・二少・三多 三多(多動・多休・多接) 「多動」身体を活発に動かす 認知症 身体活動・運動不足

 運動は高齢者にとって、認知症リスクを減らす効果的な方法と考えられている。
 多くの研究で、手や足の運動をコーディネートする運動法である「コーディネーション・エクササイズ」が効果的であることが示されている。
 ダンスは代表的な「コーディネーション・エクササイズ」だ。ダンスが高齢者の認知機能の向上に効果的という研究も発表されている。
体と心に同時に働きかけるコーディネーション・エクササイズ
 「コーディネーション・エクササイズ(Coordination Exercises)」は、手や足の運動をコーディネート(組み合わせて調整)し、コントロールする運動法。身体に加えて神経系にも働きかけられると考えられている。

 リズムに合わせて左右手足で異なる動きしたり、身体活動に複雑な動きを取入れることで、▼筋力、▼柔軟性、▼識別や定位、▼反応、▼バランス、▼リズム、▼スピードなど多くの能力を刺激できる。

 さまざまな動きを体験して、その感覚を組み合わせ、状況に応じて体の動きや力の加減などを調整することで、効果的な動作ができるようになる。

 日本では「コーディネーション・エクササイズ」が、小児期の子供の運動能力と知能の発達を促す効果があるとして注目されてきたが、最近の研究では高齢者にとっても有用と考えられている。
ダンスは代表的なコーディネーション・エクササイズ
 運動は高齢者にとって、認知症リスクを減らす効果的な方法であることが知られている。しかし、認知症の発症や進行を抑えるためには、運動プログラムを調整する必要がある。

 高齢者に有酸素運動や筋力トレーニングのみを行ってもらった英オックスフォード大学などの研究は、週2回の運動を4ヵ月続けることで、高齢者の体力は向上するものの、思考スキルや行動の改善は得られないという結果になった。

 一方、ダンスは代表的なコーディネーション・エクササイズと考えられている。ダンスには、外部から得た情報を素早く反応・判断し、それに対して適切に体を動かす能力が必要とされる。さらに観客がいる前でダンスをすることは、社会的交流の要素も多く含む。
ダンスは認知機能の改善により効果的
 メタボリックシンドロームは認知障害のリスクを上昇させることが知られている。韓国のカトリック大学校などが、メタボリックシンドロームのある38人の高齢者を対象に行った研究で、ダンスに週に2回、6ヵ月取り組んだ群は、ダンスを行わなかった群に比べ、認知機能がより改善していた。

 とく言葉の流暢さ、単語リストの想起遅延、単語リストの認識、認知症テストのスコアの向上がみられた。「ダンスを取り入れた運動プログラムが認知障害の予防と治療に効果的である可能性がある」と研究者は述べている。

 また、ドイツ神経変性疾患センターの研究では、26人の平均年齢68歳の高齢者に運動に毎週18ヵ月取り組んでもらった。参加者を、主にサイクリングやノルディックウォーキングなどの反復運動を行う群と、ダンスを中心とする運動を行う群に分けて比較した。

 ダンス群には毎週新しいことに挑戦してもらった。研究クループは、身体活動にもとづきメロディーやリズムを生成するセンサーベースのシステムを開発した。ステップや腕のパターン、構成、スピード、リズムなどが毎回変化するようにプログラムを組んだ。

 その結果、どちらの群も記憶、学習、バランスを制御する脳の海馬領域が増加したが、ダンス群ではとくに行動面での大きな改善がみられ、脳のアンチエイジング効果が高いことが示された。

 ニュージーランドのオタゴ大学の研究でも、運動プログラムにダンスを取り入れることで、記憶や気分に改善がみられ、社会的相互作用が向上し、認知症の高齢者の生活の質を向上させる効果を得られることが判明している。
認知機能を改善させる運動プログラムを開発
 筑波大学教育推進部の紙上敬太准教授らの研究では、「コーディネーション・トレーニング」は認知機能の改善効果が高いことが示されている。研究成果は、科学誌「Nature Human Behaviour」に掲載された。

 ウォーキングや筋力トレーニングなどの運動を習慣として行うことで、認知機能を改善できることは、過去30年間の多くの研究で確かめられている。

 しかし、「どのような運動が認知機能の改善に効果的なのか?」「どれくらいの運動が必要なのか?」「性別や年齢によって、運動が認知機能に与える効果は異なるのか?」などは不明だった。

 そこで研究グループは、この疑問点に応えるため、過去30年間に行われた健常者に焦点を当てた80件のランダム化比較試験を対象にメタ分析を行った。
コーディネーション・トレーニングは認知機能の改善効果が高い
 その結果、以下のことが明らかになった――。

(1)運動の種類にかかわらず、運動を習慣として行うと、認知機能を改善できるが、その効果は有酸素トレーニングや筋力トレーニングよりも、「コーディネーション・トレーニング」で大きい。

(2)比較的長時間(60〜90分)の運動を長期間(22週間以上)継続すると、運動が認知機能に与える効果は高まる。

(3)認知機能の改善には、男性の場合は、徐々に強度を上げていく漸進性トレーニングが適しており、女性の場合は、漸進性をない低強度〜中強度のトレーニングが適している。

(4)運動が認知機能に与えるポジティブな効果は、年齢にかかわらず認められる。

 この研究では、「コーディネーション・トレーニング」の効果が大きいことが示されたが、これは研究間の比較から得られた結果だ。「コーディネーション・トレーニング」に注目した研究はまだ少ないという現状がある。そのため「複数の種類のトレーニング効果を直接比較するランダム化比較試験が必要」と、研究者は述べている。

 「認知機能は身体的・精神的健康、QOL(生活の質)、学力、キャリアなど、我々の生活のあらゆる側面に関わる重要なものです。今後、本研究成果をもとに、認知機能を改善させる運動プログラムが開発されることが期待されます」としている。

運動の種類の違いによる効果量
コーディネーショントレーニングの効果が他のトレーニングの効果よりも大きいことが示された。平均効果量(真ん中の線)と95%信頼区間(上と下の線)を示している。円はそれぞれの研究を示しており、円の大きさはそれぞれの研究における実験参加者数を示している。「ミックス」は2種類以上のトレーニングを組み合わせたトレーニングを意味する。
出典:筑波大学、2020年

Exercise 'doesn't slow' progression of dementia(国民保健サービス 2018年5月17日)
Effect of Dance Exercise on Cognitive Function in Elderly Patients with Metabolic Syndrome: A Pilot Study(Journal of Sports Science and Medicine 2011年12月1日)
Dancing can reverse the signs of aging in the brain(ドイツ神経変性疾患センター 2017年8月25日)
Dancing or Fitness Sport? The Effects of Two Training Programs on Hippocampal Plasticity and Balance Abilities in Healthy Seniors(Frontiers in Human Neuroscience 2017年6月15日)
Positive effect of music and dance on dementia proven by New Zealand study(オタゴ大学 2019年8月8日)
The Effects of Intuitive Movement Reembodiment on the Quality of Life of Older Adults With Dementia: A Pilot Study(American Journal of Alzheimer's Disease & Other Dementias 2019年7月14日)
New study suggests exercise is good for the aging brain(アイオワ大学 2019年8月26日)
Acute Exercise Effects Predict Training Change in Cognition and Connectivity(Medicine & Science in Sports & Exercise 2020年1月)
Systematic review and meta-analysis investigating moderators of long-term effects of exercise on cognition in healthy individuals(Nature Human Behaviour 2020年3月30日)
[Terahata]

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