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「フレイル」のリスクは太り過ぎでもやせ過ぎでも上昇 低栄養を減らして予防

キーワード: 高血圧 脂質異常症(高脂血症) 二少(少食・少酒) 一無・二少・三多 糖尿病 CKD(慢性腎臓病) 肥満症/メタボリックシンドローム 骨粗鬆症/ロコモティブシンドローム/サルコペニア 「少食」食事は腹7~8分目 三多(多動・多休・多接) 「多動」身体を活発に動かす 飲酒 喫煙 食生活 身体活動・運動不足

 高齢者のフレイルのリスクは、太り過ぎでもやせ過ぎでも上昇する。
 とくに日本人の高齢者のやせは死亡リスクの上昇に関連していることが、いくつかの大規模研究で示されている。
 「タンパク質を中心に、いろいろな種類の食品を食べることが重要」と専門家は指摘している。
85歳以上の男性の15%、女性の28%が「低栄養」
 フレイルとは、加齢にともない筋肉などの身体機能の低下が進み、それによって健康障害を起こしやすくなっている状態のこと。

 運動機能や認知機能が衰えると、介護の必要な状態に陥るリスクも高まる。心身が衰え、疲れやすくなり、家に閉じこもりがちになることも少なくない。

 高齢者の健康指標として、「低栄養」の予防が新たに注目されている。「フレイルに対策し、介護が必要な人を減らすために、高齢者の低栄養を改善していく必要がある」と専門家は指摘している。

 肥満の判定は主にBMI(体格指数)で行われており、25〜29.9は過体重、30以上は肥満と判定される。

 厚生労働省が発表した2018年「国民健康・栄養調査」によると、65歳以上の高齢者の「低栄養傾向」(BMIが20以下)の割合は男性では10.3%、女性では20.3%で、男女とも85歳以上で高く、男性で15.1%、女性で27.5%に上る。

 国民の健康の増進を目的とした「健康づくり運動」を展開する「健康日本21」。その第2次運動「健康日本21(第2次)」では、要介護者を減らすための対策として、従来の認知症やロコモティブシンドローム(ロコモ)の啓発に加え、低栄養傾向(BMI 20以下)の高齢者の割合を22%に減らすことが掲げられている。
太り過ぎでもやせ過ぎでも死亡リスクは上昇
 「JACC Study」は、文部科学省科学研究費の助成を受け、約12万人が参加して実施されたコホート研究。日本人の生活習慣が2型糖尿病やがんなどの生活習慣病とどのように関連しているかが調査された。

 それによると、高齢者のやせは死亡リスクに関連しているが、高齢者では過体重はむしろ総死亡リスクにならないという。

 研究グループは、研究開始時点で65-79歳だった2万6,747人を対象に平均11.2年追跡して調査した。ベースライン時のBMIにより対象者を9つの群にわけ、20.0〜22.9を基準として、総死亡リスクを比較した。

 その結果、男性でも女性でも基準群よりBMIが低い群で死亡リスクが上昇しており、やせの程度が強くなるほどその傾向が強まった。

 もっとも低いBMI 16未満の群の総死亡リスクは男性で1.78倍、女性で2.55倍に上昇した。一方、BMIが高いことは男性では総死亡リスクと関連せず、女性ではもっともBMIが高い群(30以上)でのみ1.24倍に上昇した。

 これにより、日本の65歳以上の高齢者では、BMIが20から29.9の間で総死亡リスクが低く、それよりやせている場合、やせの程度が強くなるほど総死亡リスクが上昇することが明らかになった。
低体重と肥満という栄養障害の二重負荷が進行
 「亀岡スタディ」は、京都府亀岡市、京都府立医科大学、国立健康・栄養研究所などが2011年に開始したコホート研究。同市の高齢者を対象に、健康寿命の延伸・介護予防を目的に調査しており、得られたデータを介護予防プログラムの策定などに役立てている。

 そこでも、フレイルの有症率はBMIが低くても高くても上昇することが明らかになっている。研究グループは、平均年齢は73.4歳の市民7,191人を対象に調査した。平均BMIは22.7だった。

 その結果、フレイルと判定された人の割合は、BMIが22.5〜24.9の群に比べ、BMI18.5未満で2.04倍、18.5〜19.9で1.69倍、20.0〜22.4で1.16倍、25.0〜27.4で1.00倍、27.5以上で1.54倍となり、低体重者と肥満者の双方でリスクが増大するというU字型の関係がみられた。フレイル有症率がもっとも低いBMIは24.7〜25.7であることが明らかになった。

 手段的日常生活動作(家事や買い物などの生活機能)や抑うつ症状とBMIの関連についても調べたところ、フレイルの有症率と同じように、BMIが低くても高くても低下し、うつ症状のスコアは上昇するというU字型関係がみられた。

 「低体重と肥満という栄養障害の二重負荷が進行している日本では、フレイルの増加を防ぐためにもその対策を推進することが必要です」と、研究者は述べている。

 国立健康・栄養研究所では現在、大阪府と連携し「働く世代からのフレイル予防」の実現を目指した取り組みを進めているという。
「粗食が大切」は間違い
 メタボリックシンドロームや肥満は、心臓病や2型糖尿病、高血圧などの生活習慣病の危険性を高めるので、「粗食が大切」といった健康法がメディアで紹介されいる。

 しかし、高齢者になるとそれが当てはまらない。むしろ高齢者では粗食による「低栄養」に注意した方が良いことが、さまざまな研究で明らかになっている。

 「低栄養の状態が続くと、体にはさまざまな問題が生じてきます。たとえば摂取エネルギーが不足すると、本来は体をつくるために使われるタンパク質で、エネルギーの不足分を補うようになります。その結果、タンパク質が不足し血管が弱くなり動脈硬化を起こしやすくなります」と、東京都健康長寿医療センター研究所では指摘している。

 同研究所の調査では、低栄養の状態は、心筋梗塞や狭心症など心血管病による死亡の危険度を高めることも示されている。低栄養群では高栄養群に比べ、心血管病による死亡の危険度が2.5倍に上昇した。

 では、高齢者の食事ではどんなことに気を付ければよいのだろうか。同研究所では「肉や魚介類、卵、大豆や大豆製品、牛乳や乳製品、緑黄色野菜、海藻類、イモ類、果物など、いろいろな種類の食品を日常的に食べることが望ましい」としている。
高齢者のタンパク質の目標量が引き上げられた
 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で示されている目標となるBMIは、18歳以上のどの年齢でも上限値は24.9と一定だが、BMIの下限値は18〜49歳よりも50〜69歳で高く、65歳以上では21.5ともっと高い値が推奨されている。

 つまり高齢者では、やせ、すなわち低栄養リスクの抑制を意識した目標値となっている。食事摂取基準では、高齢者のフレイル予防の観点から、高齢者のタンパク質の目標量が引き上げられた。

 総エネルギー量に占めるべきタンパク質由来エネルギー量の割合(%エネルギー)は、18〜49(歳)では13〜20%エネルギー、50〜64(歳)では14〜20%エネルギー、65歳以上では15〜20%エネルギーとされた。

 とくに高齢者でタンパク質の摂取は重視で、タンパク質が関わる重要な疾患として、フレイル(サルコペニアを含む)、慢性腎臓病を挙げている。

 腎臓病がありタンパク質の摂取に制限があるという場合でなければ、十分な量のタンパク質を摂取したい。

JACC Study
BMI and All-Cause Mortality Among Japanese Older Adults: Findings From the Japan Collaborative Cohort Study(Obesity 2009年6月18日)
亀岡スタディ(国立健康・栄養研究所)
A U-Shaped Relationship between the Prevalence of Frailty and Body Mass Index in Community-Dwelling Japanese Older Adults: The Kyoto-Kameoka Study(journal of clinical medicine 2020年5月6日)
「食べる」フレイル予防(東京都介護予防・フレイル予防ポータル)
東京都健康長寿医療センター研究所
高齢者の自立喪失に及ぼす生活習慣病、機能的健康の関連因子の影響:草津町研究(日本公衛誌 2020年2月15日)

(Terahata)

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