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「食べ過ぎ」が糖尿病の原因ではない 米国栄養学会が「炭水化物−インスリンモデル」を提唱

キーワード: 生活習慣 食生活 糖尿病

 「肥満の原因はカロリーの摂り過ぎだけではない」という研究報告が米国で発表された。
 血糖を上げやすい食品の食べ過ぎ、とくに加工食品の食べ過ぎを特徴とする現代の食事スタイルが原因としている。
 研究者は、従来の「エネルギーバランスモデル」に代わるものとして、「炭水化物−インスリンモデル」を提唱している。
 「グリセミック インデックス(GI)」の低い食事は、糖尿病の人にも有用という研究も発表された。
「食べ過ぎ」だけが糖尿病や肥満の原因ではない
 米国疾病予防管理センター(CDC)の調査によると、米国成人の40%以上が肥満で、20年間で1.4倍に増えている。肥満によって、心疾患、脳卒中、2型糖尿病、がんなどのリスクが高まる。

 肥満は日本でも問題になっている。体格指数(BMI)が25以上の肥満の成人の割合は、男性33.0%、女性22.3%で、とくに40代〜50代の男性ではほぼ4割に上る(日本ではBMIが25以上を肥満と判定している)。

 米国の食事ガイドラインでは、体重を適正にコントロールするために、「食事で摂るエネルギーを減らし、身体活動により消費するエネルギーを増やす」ことが推奨されている。

 日本の2型糖尿病の食事療法でも、基本となるのは、食事のエネルギー摂取量を適切にコントロールし、目標となる体重を維持することだ。肥満のある人は、食事制限などにより、まず体重の3%の体重減少を目指すことが勧められている。

 これは、体重が増えるのは、エネルギー摂取量がエネルギー消費量を上回っている、つまり"食べ過ぎ"が原因となっているという、100年前に提唱された「エネルギーバランスモデル」にもとづいている。

 確かに、炭水化物や脂肪の多い、おいしく安価で高カロリーの加工食品が簡単に手に入る現代社会では、多くの人がエネルギーを必要以上に摂取している。これに、座ったままの時間が長い運動不足の生活スタイルが加わると、体重のバランスは簡単に崩れてしまう。

 しかし、「食事のエネルギー摂取量を減らして、運動や身体活動を増やすべきだと、医療や公衆衛生の分野で繰り返し唱えているにもかかわらず、肥満は着実に増えています。これには、何か別の原因があるはすです」と、ハーバード公衆衛生大学院栄養学部のデビッド ラディック教授は言う。
食事の量を制限するだけでは食事療法は長続きしない
 ラディック教授らは、糖尿病や肥満などの食事療法で長年支持されてきた「エネルギーバランスモデル」に加えて、「炭水化物−インスリンモデル」を提唱している。この研究は、米国栄養学会誌に発表された。

 「食べ過ぎだけが肥満の原因ではありません」と、ラディック教授は言う。肥満を予防・改善し、効果的な体重コントロールを長期にわたり実現するために、「炭水化物−インスリンモデル」が必要だという。

 現代社会で肥満が増えてしまっているのは、血糖負荷の高い食品、つまり血糖を上げやすい食品が多過ぎることが一因になっているという。精製された早く消化・吸収されやすい炭水化物を含む加工食品を食べ過ぎている現代の食事パターンが影響している。

 こうした血糖負荷の高い食品により、代謝が悪くなり、脂肪の蓄積や体重の増加が促され、さらには肥満を促進するホルモン反応が高まっている。

 とくに高度に精製された炭水化物を食べ過ぎると、消化・吸収が早いため、血糖を下げるインスリンの分泌を増やし、血糖を上げるグルカゴン分泌を抑制する。脂肪細胞から分泌される食欲をコントロールするホルモンの作用は不足し、脳は体が十分なエネルギーを得ていないと誤解し、空腹感を高めてしまう。

 さらには、血糖を上げやすい食品を食べ過ぎると、燃料を節約しようと体の代謝が遅くなってしまい、過剰な脂肪や炭水化物を摂っていても満腹感を得られにくくなるという。

 「肥満を改善するためには、ふだんどんな食品を食べているかだけでなく、食べている食品がホルモンと代謝にどのように影響するかを考える必要があります」と、ラディック教授は言う。

 「食事の量を制限するという戦略だけでは、食事療法は長続きせず、肥満や2型糖尿病を改善するのは難しくなります。現代社会では、消化・吸収の早い精製された炭水化物の摂取が多く、これを見直すことも必要です」としている。

「グリセミック インデックス(GI)」が糖尿病の食事療法を改善?

 一般的に、血糖値が上がりやすいのは、すぐエネルギーになりやすい白米や白パン、お菓子、高カロリーの清涼飲料などの糖質の多い食品とされている。

 それに対し、玄米、発芽玄米、ふすまを取っていない麦、全粒粉の小麦、オートミールなどの全粒穀物や、野菜、大豆、ナッツ、マメ類など、食物繊維が多く含まれる食品は、低GIで、吸収がゆっくりとしている。

 「グリセミック インデックス(GI)」は、炭水化物がどれだけ血糖値を上げるかを示す尺度。

 糖質が多く食物繊維の少ない食品や飲料はGIが高いことが多く、たとえば、白米などの精製穀物は玄米などの全粒穀物よりもGIが高いことが知られている。

 カナダのトロント大学は、低GIの食事が糖尿病患者の血糖値や体重のコントロールを改善するという研究を発表した。研究成果は、医学誌「ブリティッシュ メディカル ジャーナル」に発表された。

 研究グループは、低GIの食事スタイルが糖尿病にもたらす影響を調べた20件以上のランダム化比較試験を検討。1,600人以上の1型糖尿病と2型糖尿病の患者が対象で、多くは肥満や過体重だった。

 低GIの食事により、1〜2ヵ月の血糖値の平均を示すHbA1cは平均して0.31%下がったが、血中インスリン値には影響しなかった。体重、空腹時血糖値、悪玉のLDLコレステロール、中性脂肪、血圧、炎症に関連するC反応性タンパク(CRP)などにも改善がみられた。

 「炭水化物は決して悪い栄養素ではありません。ただし、すべての炭水化物が同じというわけではありません。カロリーは同じでも、血糖の上がりやすさに違いがあります」と、トロント大学医学部栄養科学科のジョン シーヴァンパイパー氏は言う。

 「血糖を上げにくい食事を追加することは、飲み薬やインスリンで治療をしている糖尿病患者さんにも有用である可能性があります」としている。

Scientists claim that overeating is not the primary cause of obesity(米国栄養学会 2021年9月13日)
The carbohydrate-insulin model: a physiological perspective on the obesity pandemic(American Journal of Clinical Nutrition 2021年9月13日)
Low-glycemic diet reduces cardiometabolic risks for people with diabetes: U of T study(トロント大学 2021年8月12日)
Effect of low glycaemic index or load dietary patterns on glycaemic control and cardiometabolic risk factors in diabetes: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials(British Medical Journal 2021年8月5日)
[mhlab]

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