2012年06月22日
食欲を抑えるペプチドを開発 肥満解消薬の開発に期待
カテゴリー: 肥満症/メタボリックシンドローム メタボリックシンドローム
埼玉大学理学部の坂井貴文教授(分子内分泌学)らのグループは、食欲を調節する受容体に結合するペプチドを人工的に効率良く作り出し、食欲を抑える手法を開発したと発表した。
ペプチドはアミノ酸がつながってできている構造をもつ分子。坂井教授らはペプチドのうち、胃から分泌される「グレリン」に注目。グレリンは、1999年に日本の研究で発見された。 グレリンには、細胞膜の「受容体」と呼ばれる物質に結合することで、脳に食欲を増進させる信号を送る機能がある。坂井教授らは、グレリン受容体に作用する別のペプチドをつくりだせば、グレリンがもたらす食欲増進の効果を抑えられるのではと考えた。 グレリン受容体の摂食促進作用を阻害し、食欲を抑制する。この手法により、肥満を解消する薬の開発などが期待できるという。 ペプチドを選別するために、埼玉大学で開発された「cDNAディスプレイ法」という技術を応用。アミノ酸を組合せ、グレリン受容体に結合する可能性のある256億種類の人工ペプチドを作製した。グレリン受容体のある細胞にふりかけて機能を解析した。 作業を繰り返し、強力に結合した数種のペプチドを選び出した。そのうち1種類のペプチドでグレリン受容体に結合しており、マウスを使った実験で食欲を抑える効果があることが確認された。グレリンの機能を抑制するペプチドを作製したのは、今回が世界ではじめてだという。 病気の原因となっている特定の分子を狙い撃ちし、その機能を抑えることで病気を治療する分子標的薬は、従来の薬剤に比べ副作用を低く抑えながら治療を行えると期待されている。抗体から作られる分子標的薬はコストが高いという課題があるが、ペプチドを標的とする治療薬を開発できれば、コストを低く抑えられ、患者の負担も軽減できる。 坂井教授は「この手法を用いれば、食欲を抑える抗肥満薬や研究用試薬を開発できる。さまざまな機能を促したり抑えたりするペプチドを効率的につくりだすことができ、分子標的薬の開発に役立つ」と話している。 この研究は米国科学アカデミー紀要の電子版に、現地時間の6月20日に発表された。 摂食抑制作用を持つペプチドの創出に成功−分子標的薬の探索に新たな手法を提案−(埼玉大学 平成24年6月21日)
(TERA)