2014年11月28日
ウェアラブル機器による脈拍・体温等のモニターは生活習慣管理に有用
カテゴリー: 高血圧 脂質異常症(高脂血症) 糖尿病 CKD(慢性腎臓病) 「多動」身体を活発に動かす 高尿酸血症/痛風 肥満症/メタボリックシンドローム 動脈硬化 心筋梗塞/狭心症 脳梗塞/脳出血 COPD(慢性閉塞性肺疾患)) がん 骨粗鬆症/ロコティブシンドローム/サルコペニア 歯周病 メタボリックシンドローム 運動 慢性肺疾患
血圧・心拍数やその変動および身体活動量などの日常生活下で得られる生体情報は、高血圧や糖尿病等、生活習慣病の予防や治療に重要ではあるが、測定機器の装着性やコスト負担などのため、現状ではそれらをモニター可能な対象・施設が限られている。一方、近年、ウェアラブルで装着性にすぐれた計測機器が開発されてきており、臨床への応用が期待され有用性の評価が進められている。さきごろ開催された第37回日本高血圧学会総会(10月17〜19日・横浜)においても、腕時計型の脈拍計や耳孔温度計による24時間連続計測の実用性・有用性に関する検討結果が報告された。
横浜市立大学大学院医学研究科疫学公衆衛生学の小野香奈子氏らは、ABPM(24時間自由行動下血圧測定)と腕時計型脈拍・加速度計および耳孔温度計を用いた計測を同一対象に施行し、日常生活状態での変動の関連性を検討した。ABPMはテルモ社のES-H531、腕時計型脈拍・加速度計は同氏らが開発にかかわったセイコーエプソン社製品、耳孔温度計はニプロ社のCEサーモを用いた。
非高血圧または未治療高血圧では脈拍が血圧と相関する
3機種による同時測定に先立ち、ファーストトライアルとして、健常者と高血圧患者、計142名を対象としたABPMによる血圧と脈拍数の関係を検討した。その結果、ABPMで血圧が正常であった群(n=98)ではその67.3%が、収縮期血圧・拡張期血圧と脈拍が有意に正相関していた。また高血圧患者であっても降圧薬を服薬していない群(n=37)では、その54.1%が両者に有意な正相関がみられた。しかし降圧薬による治療を受けている群(n=7)では有意な相関を認めた患者の割合が28.6%と低かった(表1)。このことから、高血圧発症前、または発症後であっても降圧薬未使用の段階では、日常生活下での脈拍計測により、血圧や血圧変動を推定できる可能性が示された。
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脈拍数から自律神経障害の有無やCPAPの治療効果を評価できる可能性
続いてセカンドトライアルとして、健常者5名、高血圧患者3名、糖尿病患者4名、計12名を対象に、ABPM、腕時計型脈拍・加速度計(wristwach-type pulsimeter with accelerometer.以下、WPAと省略)、耳孔体温計の3機種を同時装着し、これらについて、特に睡眠中の変動に注視し解析した。まず、ABPMによる血圧と脈拍の関連を検討すると、12名中7名が両者の間に有意な正の相関を認めたが、糖尿病患者に限ると有意な正相関を認めたのは1名のみで、ほか3名の糖尿病患者のうち2名は相関なし、1名は有意な負の相関がみられた(表2)。また、両者に負の相関を認めた高血圧患者は仮面高血圧、起立性高血圧であることが確認された。血圧と脈拍数は一般に交感神経系の支配を受けることから、これらが負の相関となる糖尿病患者や降圧薬未使用高血圧患者は、自律神経障害が関与している可能性が想定される。