2015年09月18日
歯周病リスクが受動喫煙で3倍に上昇 自分や家族のために禁煙を
たばこを吸わない人でも、ほかの人のたばこの副流煙にさらされると歯周病リスクが3倍以上高まるという調査結果を、国立がん研究センターと東京医科歯科大の研究グループが発表した。
男性の非喫煙者で、家庭と家庭以外で受動喫煙した人の場合、たばこを吸わない人でもリスクは約3.6倍となり、喫煙者のリスクを上回る結果になった。研究グループは喫煙者に対し、「自分や家族の健康のために禁煙を」と注意を呼び掛けている。
受動喫煙も歯周病のリスクを高める
研究は、生活習慣病の発症原因について追跡調査する多目的コホート研究「JPHC研究」の一環として行われた。1990年の生活習慣などのアンケート調査に答えた、秋田県在住の40~59歳の男女を対象に、歯科アンケート調査への回答と歯科検診を受けてもらい、そのうち1,164人(男性552人、女性612人)を対象に解析した。
対象者を男女別に「受動喫煙経験のない非喫煙者」「受動喫煙経験のある非喫煙者」「喫煙者」など6つのグループに分け、6mm以上の歯周病ポケットが1歯以上ある場合を重度の歯周病と定義したうえで解析した。
その結果、能動喫煙だけでなく受動喫煙も歯周病のリスクを高めることが明らかになった。
男性では、喫煙者の歯周病のリスクは受動喫煙経験のない非喫煙者の約3.3倍に跳ね上がった。また、家庭のみで受動喫煙経験のある非喫煙者では約3.1倍、家庭および家庭以外の場所で受動喫煙経験のある非喫煙者では約3.6倍、歯周病のリスクがそれぞれ上昇した。
また、喫煙状況と永久歯の数との関連をみたところ、男性では、喫煙者の残っている永久歯の数は受動喫煙経験のない非喫煙者より約2.5本少なく、奥歯のうち上下でかみ合っている永久歯のペア数は約1.6本少ないという結果になった。
歯周病は糖尿病など他の病気のリスク要因に
たばこのニコチンは、歯周病を引き起こす歯周病菌の発育を促進し、その病原性を高める働きがある。また、喫煙そのものが全身の免疫力を低下させ、歯を支える組織の破壊を助長するため、歯周病菌に感染しやすくなる。受動喫煙でも同様のメカニズムが働くと推察されるという。
今回の結果で、女性において受動喫煙と歯周病および永久歯の数との間に関連がみられなかった。女性では喫煙者の割合が少ないことや、男性よりもたばこをがんの原因ととらえている割合が多く、家族の中に喫煙者がいたとしても、たばこの煙を避けたために、実際の受動喫煙の機会が少ない可能性がある。
研究グループは、「喫煙は歯の健康を低下させるリスク要因で、受動喫煙者でも重度の歯周病のリスクが高まることが示された」とした上で、「歯周病は糖尿病など他の病気のリスク要因でもあるので、予防や治療を心掛ける必要がある」としている。
「喫煙者に対して、喫煙することが自分自身の健康を損なうだけでなく、たばこから出る煙によって他人の健康にも悪影響を与えていることを理解してもらう必要がある」と強調している。
多目的コホート研究(JPHC Study)(国立がん研究センター)The association of active and secondhand smoking with oral health in adults: Japan public health center-based study(Tobacco Induced Diseases 2015年7月29日)
(TERA)