このコーナーは2003年4月より産経新聞に連載されたものを転載しています。
2003年05月掲載
7.健康とアルコール
 酒は『百薬の長』といわれますが、徒然草では『よろずの病は酒よりこそ起これ』ともいわれています。果たして健康に良いのか、悪いのか。日本生活習慣病予防協会の池田義雄理事長に聞きました。日本人のがん死亡率第1位は肺がんで、1年間に男性約4万人、女性約1万5000人が亡くなっています。生活習慣との関係について、東北大学医学部の坪野吉孝助教授に聞きました。
アルコールと健康の関係を教えてください
 「例えば、食前酒を飲むのは、アルコールが胃壁を刺激し、膵臓からの膵液分泌を促し、吸収した食物の消化吸収を促進するから。これが『百薬の長』で、適量の飲酒は健康によいということです。適量とは一日平均純アルコールで約20gといわれ、日本酒1合、ビール中瓶1本、ウィスキーのダブル1杯程度です。しかも適量飲酒は、ほとんど飲まないという人より、善玉のHDLコレステロール値が高くなり、結果的に心筋梗塞の発症率が低くなることがわかっています」
では、健康に悪くはないのでしょうか
 「問題は大量飲酒です。純アルコールで約60g以上、日本酒換算で3合以上の大量飲酒は『よろずの病は…』のようにあらゆる病気のもとになり、心筋梗塞、脳卒中、脳梗塞のリスクが顕著にあがるのです。実は、アルコールは嗜好品として親しまれているものの、本来は通常の食品には存在しない、エタノールという薬物です。しかも、赤くなる、ドキドキする、頭が痛くなる…というのはアルコールの副作用で、きちんと解毒されていない証拠です。もし何かの薬を飲んで、このような副作用が出たとしたら、誰もが二度と口にしたくないと思うはずですね。アルコールとはそういう薬物だということを忘れないでください」
ほかにも、気をつけることはありますか
 「未成年の飲酒習慣が問題になっていて、中学3年生の男子の4分の1、女子で6分の1に飲酒習慣があり、高校3年生では倍増しています。厚生労働省による『健康日本21』でもこれをゼロにしようと目標を掲げています。なぜ悪いのかというと、飲酒開始年齢が若ければ若いほど、短期間に嗜癖を生じる、つまり無いと我慢できなくなり、やめようと思ってもどうしても飲みたくなり、大量飲酒につながるのです。すると、臓器がアルコール漬けになってさまざまな病気を引き起こすばかりか、脳をむしばみ、精神障害であるアルコール依存症に陥って、人格をも崩壊するのです。こうならないためにも、アルコールは恐ろしいものだと認識してください」

(取材/文 (株)エフシージー総合研究所 大戸一恵)

目 次
1.治療から予防へ
2.食習慣と寿命
3.健康日本21と栄養
4.「一無、二少、三多」の
  ライフスタイル

5.健康と運動
6.健康と休養
7.健康とアルコール
8.健康とたばこ
肥 満
9.肥満とは
10.肥満のメカニズム
11.肥満と病気
12.肥満の予防
糖尿病
13.糖尿病とは
14.2型糖尿病と生活習慣
15.糖尿病予備軍
16.血糖コントロールと食事
17.合併症・小児糖尿病
  ・妊娠糖尿病

高脂血症
18.高脂血症と生活習慣
19.高脂血症と動脈硬化
20.動脈硬化になりやすい場合
21.中性脂肪と動脈硬化の関係
高血圧
22.血圧とは
23.高血圧とは
24.高血圧と生活習慣
25.高血圧と高脂血症
脳卒中
26.脳卒中とは
27.危険因子
28.予防法
29.一過性脳虚血発作
虚血性心疾患
30.狭心症と心筋梗塞
31.危険因子
32.アルコールは毒?薬?
33.虚血性心疾患と生活習慣
が ん
34.がんの現状
35.がん予防と生活習慣
36.健康情報の信頼性
37.野菜と果物、
  何をどれだけ食べれはよい?

38.サプリメントは有効?
39.肺がん 禁煙と果物の勧め
40.胃がん 減塩と検診の勧め
41.大腸がん 原因の半分は
  たばことアルコール!

42.乳がん(1)肥満とアルコール
43.乳がん(2)
  女性のがん予防と検診

44.がんの再発や二次がん
  がんになってからの食事

45.がんの健康情報
高尿酸血症
46.尿酸とは
47.動脈硬化との関係
48.食生活のポイント
49.生活習慣のポイント
50.読者からの質問に答えて