このコーナーは2003年4月より産経新聞に連載されたものを転載しています。
2003年07月掲載
15.糖尿病予備軍
 現在、糖尿病予備軍といわれる人たちが約700万人います。発病しないための予防策はあるのでしょうか。日本生活習慣病予防協会理事長の池田義雄医学博士に聞きました。
まず、糖尿病予備軍とはどういう状態ですか
 「血液中のブドウ糖の値(血糖値)が、正常よりは高く、糖尿病と診断される値よりは低い状態です。具体的な日本糖尿病学会の診断基準では、空腹時の血糖値が110(mg/dl )未満で、ブドウ糖負荷試験という、糖液を飲んで2時間後の値が140未満だと正常型。空腹時が126以上、または糖負荷試験後が200以上だと糖尿病型と診断されます。そして、正常型にも糖尿病型にも属さないものを境界型といい、これが予備軍に当たります」
予備軍でも問題ですか
 「最近の研究では、予備軍の中でも肥満があり、血圧や中性脂肪値も高いと、動脈硬化の進行が早まって、脳卒中や心臓病を起こしやすいとされています。ですから予備軍でも安心できませんね。また、自覚症状が全くないので、予備軍だと気づかずに過ごしてしまうと、数年以内に本当の糖尿病になる恐れがあります。そしてその時には、網膜症、腎症、神経障害などの合併症が起きている可能性があるため、予備軍から糖尿病にならない努力が必要です」
では、どうすれば進行を止められますか
 「食事と運動、生活習慣の改善で予防できます。『フィンランド糖尿病予防研究』では、境界型の肥満者に、脂肪摂取量の減少、食物繊維を30g摂取、30分の運動という改善で、4年間での糖尿病発症率が半減しました。また、中国大慶市の『Da Qing 研究』でも、改善しない群での糖尿病発症率の約68%に対して、6年間の食事改善群で約44%、運動改善群は約41%、食事と運動改善群で約47%に減少しています」
日本ではどうでしょう
 「30〜50代の境界型の人たちでの『日本糖尿病予防プログラム』が進行中で、1日20分、週4日以上歩いて700kcalを消費し、適正体重の達成と維持を目標としています。2年経った中間報告では、何も改善しないと約26%が境界型から糖尿病に進みましたが、運動した人たちでは約11%に下がっていました。予備軍をその先の糖尿病に進ませないためには、生活習慣の改善、食事と特に運動が大切です。まずは歩くことから始めてください」

(取材/文 (株)エフシージー総合研究所 大戸一恵)

目 次
1.治療から予防へ
2.食習慣と寿命
3.健康日本21と栄養
4.「一無、二少、三多」の
  ライフスタイル

5.健康と運動
6.健康と休養
7.健康とアルコール
8.健康とたばこ
肥 満
9.肥満とは
10.肥満のメカニズム
11.肥満と病気
12.肥満の予防
糖尿病
13.糖尿病とは
14.2型糖尿病と生活習慣
15.糖尿病予備軍
16.血糖コントロールと食事
17.合併症・小児糖尿病
  ・妊娠糖尿病

高脂血症
18.高脂血症と生活習慣
19.高脂血症と動脈硬化
20.動脈硬化になりやすい場合
21.中性脂肪と動脈硬化の関係
高血圧
22.血圧とは
23.高血圧とは
24.高血圧と生活習慣
25.高血圧と高脂血症
脳卒中
26.脳卒中とは
27.危険因子
28.予防法
29.一過性脳虚血発作
虚血性心疾患
30.狭心症と心筋梗塞
31.危険因子
32.アルコールは毒?薬?
33.虚血性心疾患と生活習慣
が ん
34.がんの現状
35.がん予防と生活習慣
36.健康情報の信頼性
37.野菜と果物、
  何をどれだけ食べれはよい?

38.サプリメントは有効?
39.肺がん 禁煙と果物の勧め
40.胃がん 減塩と検診の勧め
41.大腸がん 原因の半分は
  たばことアルコール!

42.乳がん(1)肥満とアルコール
43.乳がん(2)
  女性のがん予防と検診

44.がんの再発や二次がん
  がんになってからの食事

45.がんの健康情報
高尿酸血症
46.尿酸とは
47.動脈硬化との関係
48.食生活のポイント
49.生活習慣のポイント
50.読者からの質問に答えて