このコーナーは2003年4月より産経新聞に連載されたものを転載しています。
2003年08月掲載
21.中性脂肪と動脈硬化の関係
 今回は、中性脂肪と動脈硬化の関係について、防衛医科大学校名誉教授の中村治雄医学博士に聞きました。
中性脂肪が高いと、なぜ動脈硬化になりやすいのですか
 「中性脂肪値が150mg/dl を超えると、コレステロールを運ぶLDL粒子が小型化しやすくなります。すると抗酸化作用をもつ粒子中のビタミンEが少なくなって、悪玉LDL−コレステロールが酸化され、さらに悪質になり、動脈硬化が進むのです」
中性脂肪値を上下内方法は?
 「(1)食べ過ぎに注意する。(余分なエネルギーは中性脂肪の材料になり、合成が進む)(2)アルコールの飲み過ぎに注意する(材料ならないが、中性脂肪の合成を進める)(3)n−3系脂肪酸をとる(魚の油のEPA=エイコサペンタエン酸、DHA=ドコサヘキサエン酸や菜種油のα―リノレン酸などは合成を抑える)、などです」
n-3系脂肪酸は、ほかにも作用がありますか
 「抗炎症作用です。最近の研究では、動脈硬化は血管内皮細胞の炎症だと考えられています。慢性的に炎症が続くと、C反応性タンパク(CRP)という炎症マーカーが作用して動脈硬化が進み、診断の指標になっているほどです。n−3系脂肪酸には、このCRPを減らす作用があると注目されています。CRPを減少させるためには、運動も有効です。特に、ウォーキング、ジョギング、自転車など、大腿部の筋肉を使う運動がお勧めです。大腿部には、脂肪分解酵素が最も多くあるので、脂肪の分解を促進してくれるからです。1週間に20kmを目安に、早足で歩くとよいでしょう」
食事と運動だけで十分なのですか
 「基本はこの2つですが、効果が上がらないときは薬を使います。CRP値が高い人で、LDLコレステロール値も高い場合、または中性脂肪値が高く、HDLコレステロール値が低い場合といった、心臓病や脳卒中になりやすい人でも、薬で予防できます。また、遺伝的な受容体の欠損でコレステロールを分解できない人が、1%ほどいます。最近、こういう人たちでもコレステロールを分解できるような遺伝子治療が始まりました。数年後には確立されるので朗報ですね。ほかの99%は生活習慣病ですので、食事と運動を改善し、高脂血症にならないように気をつけてください」

(取材/文 (株)エフシージー総合研究所 大戸一恵)

目 次
1.治療から予防へ
2.食習慣と寿命
3.健康日本21と栄養
4.「一無、二少、三多」の
  ライフスタイル

5.健康と運動
6.健康と休養
7.健康とアルコール
8.健康とたばこ
肥 満
9.肥満とは
10.肥満のメカニズム
11.肥満と病気
12.肥満の予防
糖尿病
13.糖尿病とは
14.2型糖尿病と生活習慣
15.糖尿病予備軍
16.血糖コントロールと食事
17.合併症・小児糖尿病
  ・妊娠糖尿病

高脂血症
18.高脂血症と生活習慣
19.高脂血症と動脈硬化
20.動脈硬化になりやすい場合
21.中性脂肪と動脈硬化の関係
高血圧
22.血圧とは
23.高血圧とは
24.高血圧と生活習慣
25.高血圧と高脂血症
脳卒中
26.脳卒中とは
27.危険因子
28.予防法
29.一過性脳虚血発作
虚血性心疾患
30.狭心症と心筋梗塞
31.危険因子
32.アルコールは毒?薬?
33.虚血性心疾患と生活習慣
が ん
34.がんの現状
35.がん予防と生活習慣
36.健康情報の信頼性
37.野菜と果物、
  何をどれだけ食べれはよい?

38.サプリメントは有効?
39.肺がん 禁煙と果物の勧め
40.胃がん 減塩と検診の勧め
41.大腸がん 原因の半分は
  たばことアルコール!

42.乳がん(1)肥満とアルコール
43.乳がん(2)
  女性のがん予防と検診

44.がんの再発や二次がん
  がんになってからの食事

45.がんの健康情報
高尿酸血症
46.尿酸とは
47.動脈硬化との関係
48.食生活のポイント
49.生活習慣のポイント
50.読者からの質問に答えて