このコーナーは2003年4月より産経新聞に連載されたものを転載しています。
2003年11月掲載
29.一過性脳虚血発作
 「脳卒中」の最終回は、予防の最後のチャンス「一過性脳虚血発作(TIA)」について、日本脳卒中協会の山口武典会長に聞きました。
TIA とは?
 「簡単に言うと一時的な脳卒中で、脳梗塞の前触れともいわれます。急に片方の手足が動かない、ろれつが回らなくなる、片目だけ見えにくくなるなど、症状は脳梗塞と同じですが、多くは10〜15分、長くても24時間以内に完全に治まります。原因も脳梗塞と同じで、頸部の動脈などに動脈硬化があり、そこの血栓がはがれて脳の動脈に引っ掛かって起きます。TIA は血栓が小さく、詰まってもすぐに溶けるため、短い時間内に症状がとれるのです」
すぐに治るなら、心配はいりませんね
 「TIA が起こるということは、脳動脈が狭くなっていたり、次には大きい血栓がはがれる可能性もあり、放っておくと数年以内に本格的な脳梗塞が起こりやすくなります。TIA を経験して脳梗塞になった人を振り返ってみると、約2割は1カ月以内に、半数は1年以内に脳梗塞が起こっています。TIA でも安心せず、できるだけ早くストロークユニット(脳卒中専門集中治療室)のある専門病院に行ってください。専門の医療スタッフの下で治療すると、死亡率も寝たきりになる確率も、明らかに低くなります」
脳梗塞の最新の治療について、教えてください
 「言葉が出なかったり、片麻痺が起きているような脳梗塞でも、ごく早い時期に詰まった箇所まで動脈カテーテルを通し、血栓を溶かす『ウロキナーゼ』などの薬を直接投与すれば、血管が通って、治る可能性が高くなります。また、点滴を静脈注射すればよい「t−PA」という血栓溶解薬も近い将来使えるようになります。発症3時間以内にこれを使えば、非常によく回復する人が約5割も増えるので、少しでも早く受診することを覚えておいてください」
症状が出る前に、脳梗塞かどうか調べられますか
 「脳専門検査の『脳ドック』があります。MRA(磁気共鳴血管撮影)では、動脈硬化や小さな梗塞を発見できます。超音波検査では、頚動脈が動脈硬化で狭くなっているか分かり、70%以上狭くなっていれば血栓内膜切除術で予防できます。特に、高血圧、高脂血症、糖尿病の危険因子をもつ人は、一つでも減らし、検査をして、脳卒中を予防してください」

(取材/文 (株)エフシージー総合研究所 大戸一恵)

目 次
1.治療から予防へ
2.食習慣と寿命
3.健康日本21と栄養
4.「一無、二少、三多」の
  ライフスタイル

5.健康と運動
6.健康と休養
7.健康とアルコール
8.健康とたばこ
肥 満
9.肥満とは
10.肥満のメカニズム
11.肥満と病気
12.肥満の予防
糖尿病
13.糖尿病とは
14.2型糖尿病と生活習慣
15.糖尿病予備軍
16.血糖コントロールと食事
17.合併症・小児糖尿病
  ・妊娠糖尿病

高脂血症
18.高脂血症と生活習慣
19.高脂血症と動脈硬化
20.動脈硬化になりやすい場合
21.中性脂肪と動脈硬化の関係
高血圧
22.血圧とは
23.高血圧とは
24.高血圧と生活習慣
25.高血圧と高脂血症
脳卒中
26.脳卒中とは
27.危険因子
28.予防法
29.一過性脳虚血発作
虚血性心疾患
30.狭心症と心筋梗塞
31.危険因子
32.アルコールは毒?薬?
33.虚血性心疾患と生活習慣
が ん
34.がんの現状
35.がん予防と生活習慣
36.健康情報の信頼性
37.野菜と果物、
  何をどれだけ食べれはよい?

38.サプリメントは有効?
39.肺がん 禁煙と果物の勧め
40.胃がん 減塩と検診の勧め
41.大腸がん 原因の半分は
  たばことアルコール!

42.乳がん(1)肥満とアルコール
43.乳がん(2)
  女性のがん予防と検診

44.がんの再発や二次がん
  がんになってからの食事

45.がんの健康情報
高尿酸血症
46.尿酸とは
47.動脈硬化との関係
48.食生活のポイント
49.生活習慣のポイント
50.読者からの質問に答えて