このコーナーは2003年4月より産経新聞に連載されたものを転載しています。
2003年12月掲載
34.がんの現状
 日本人の死因第1位といえば、50年前までは結核、その後は脳卒中でしたが、この20年は「がん」が“独走”し続けています。その現状について、東北大学医学部の坪野吉孝助教授に聞きました。
がんで亡くなる人は、年間どれくらいですか
 「約30万人です。全死亡者数の約30%にも当たり、死因2位の心臓病が約15%、3位の脳卒中は約14%で、ほかの疾病を大きく引き離しています。30%というと、3人に1人ががんで亡くなっていることになるのですが、これは赤ちゃんからお年寄りまでを合わせた場合。40〜69歳の働き盛りの世代では、“2人に1人”にもなり、とても深刻な問題です」
どの部位のがんが多いのでしょう
 「全体では、肺と胃、大腸の順で多く、男性では、肺、胃、肝臓、女性では、胃、肺、結腸(大腸)です。1960〜2000年の40年間の変化を見ると、男性は胃が半分以下に減りましたが、直腸が2倍、肺、膵臓が3倍、結腸と前立腺が4倍にもなっています。また女性は、胃が3分の1、子宮が4分の1に減ったものの、乳房が2倍、肺2.5倍、結腸、膵臓が3倍になっています。40年で日本人のがんのパターンが急激に変化したということですね」
なぜですか
 「40年とはだいたい親から子への1世代ですが、遺伝子が大きく変化することはあり得ないでしょう。それなのに、増えるがん、減るがんがあるというのは、環境要因、特に食生活をはじめとする、生活習慣の変化が原因だと考えられます」
今後、がんの死亡率は変わると思われますか
 「実はこの40年で、それぞれのがんは増減していますが、がん全体の死亡率は、男性ではやや増加、女性では横ばいで、ほとんど変わっていません。これだけ医療が進歩しているのですから、死亡率はもっと下がってもよいはずです。このままだと、この先もがんとの戦いに負け続けていくことになりますね」
対策はありますか
 「予防が重要になります。実際にアメリカでは、予防を強化することで、90年代から死亡率が減り始めました。まずは、予防に有効とされる、がん検診を勧めます。日本では、まだ約2割の人しか受けていないのが現状です。そして、生活習慣の改善が大切。これについては、次回詳しくお話しましょう」

(取材/文 (株)エフシージー総合研究所 大戸一恵)

目 次
1.治療から予防へ
2.食習慣と寿命
3.健康日本21と栄養
4.「一無、二少、三多」の
  ライフスタイル

5.健康と運動
6.健康と休養
7.健康とアルコール
8.健康とたばこ
肥 満
9.肥満とは
10.肥満のメカニズム
11.肥満と病気
12.肥満の予防
糖尿病
13.糖尿病とは
14.2型糖尿病と生活習慣
15.糖尿病予備軍
16.血糖コントロールと食事
17.合併症・小児糖尿病
  ・妊娠糖尿病

高脂血症
18.高脂血症と生活習慣
19.高脂血症と動脈硬化
20.動脈硬化になりやすい場合
21.中性脂肪と動脈硬化の関係
高血圧
22.血圧とは
23.高血圧とは
24.高血圧と生活習慣
25.高血圧と高脂血症
脳卒中
26.脳卒中とは
27.危険因子
28.予防法
29.一過性脳虚血発作
虚血性心疾患
30.狭心症と心筋梗塞
31.危険因子
32.アルコールは毒?薬?
33.虚血性心疾患と生活習慣
が ん
34.がんの現状
35.がん予防と生活習慣
36.健康情報の信頼性
37.野菜と果物、
  何をどれだけ食べれはよい?

38.サプリメントは有効?
39.肺がん 禁煙と果物の勧め
40.胃がん 減塩と検診の勧め
41.大腸がん 原因の半分は
  たばことアルコール!

42.乳がん(1)肥満とアルコール
43.乳がん(2)
  女性のがん予防と検診

44.がんの再発や二次がん
  がんになってからの食事

45.がんの健康情報
高尿酸血症
46.尿酸とは
47.動脈硬化との関係
48.食生活のポイント
49.生活習慣のポイント
50.読者からの質問に答えて