このコーナーは2003年4月より産経新聞に連載されたものを転載しています。
2003年12月掲載
35.がん予防と生活習慣
 がんにならないためには予防が重要といわれますが、果たしてどの程度防げるのでしょうか。生活習慣との関係について、東北大学医学部の坪野吉孝助教授に聞きました。
まず、がんの原因について教えて下さい
 「『食事が30%、たばこが30%』といわれています。これは食事やたばこなどの要因が、発がんにどれくらい影響を与えるのかを、アメリカのハーバード大学が1996(平成8)年に推計したもの。詳しくみると、食事というのは「成人期の食事と肥満」のことで、これが原因でがんになるのが30%。喫煙の30%と合わせると60%も占めています。さらに、運動不足が5%、アルコールが3%で、個人の生活習慣ががんの原因の約70%にもなっているのです。それに比べ、遺伝はわずか5%程度で、いかに生活習慣が重要なのかがわかりますね」
生活習慣を改善すれば、予防できますか
 「イギリスの研究者が2001年に発表した『がんの原因を取り除いたら、どれだけ予防できるのか』を推計した研究があり、喫煙者と非喫煙者に分けて考えられています。まず、喫煙者ですが、たばこをやめればがんの60%は予防できるという結果でした。よく、たばこを吸いながら、食事に気を配ったり、サプリメントを飲む人がいますが、喫煙者の場合、食事の影響は4〜12%と少なく、あまり意味はありません。がんになりたくないのなら、まずはたばこをやめることです」
吸わない人の場合は?
 「食べ過ぎや運動不足による肥満が問題です。研究結果によると、生活習慣の改善でがんの約50%を予防でき、最も影響が大きいのは食生活で10〜30%でした。次は肥満の10%で、最近とても注目されています。2003年の世界保健機構(WHO)の報告書でも、「肥満と過体重」は確実に食道がん、大腸がん、閉経女性の乳がんなどのリスクを上げ、逆に運動は大腸がんのリスクを下げることがわかっています」
ほかに、気を付けたい生活習慣はありますか
 「飲酒ですね。少量飲酒が健康によいといわれますが、それは心筋梗塞の場合だけ。アルコールにはがんの予防効果は全くありません。しかも、“酒飲みのがん”として知られる食道がんや肝臓がんだけでなく、大腸がんや乳がんのリスクも上がると、さまざまな研究で報告されているので、注意してください」

(取材/文 (株)エフシージー総合研究所 大戸一恵)

目 次
1.治療から予防へ
2.食習慣と寿命
3.健康日本21と栄養
4.「一無、二少、三多」の
  ライフスタイル

5.健康と運動
6.健康と休養
7.健康とアルコール
8.健康とたばこ
肥 満
9.肥満とは
10.肥満のメカニズム
11.肥満と病気
12.肥満の予防
糖尿病
13.糖尿病とは
14.2型糖尿病と生活習慣
15.糖尿病予備軍
16.血糖コントロールと食事
17.合併症・小児糖尿病
  ・妊娠糖尿病

高脂血症
18.高脂血症と生活習慣
19.高脂血症と動脈硬化
20.動脈硬化になりやすい場合
21.中性脂肪と動脈硬化の関係
高血圧
22.血圧とは
23.高血圧とは
24.高血圧と生活習慣
25.高血圧と高脂血症
脳卒中
26.脳卒中とは
27.危険因子
28.予防法
29.一過性脳虚血発作
虚血性心疾患
30.狭心症と心筋梗塞
31.危険因子
32.アルコールは毒?薬?
33.虚血性心疾患と生活習慣
が ん
34.がんの現状
35.がん予防と生活習慣
36.健康情報の信頼性
37.野菜と果物、
  何をどれだけ食べれはよい?

38.サプリメントは有効?
39.肺がん 禁煙と果物の勧め
40.胃がん 減塩と検診の勧め
41.大腸がん 原因の半分は
  たばことアルコール!

42.乳がん(1)肥満とアルコール
43.乳がん(2)
  女性のがん予防と検診

44.がんの再発や二次がん
  がんになってからの食事

45.がんの健康情報
高尿酸血症
46.尿酸とは
47.動脈硬化との関係
48.食生活のポイント
49.生活習慣のポイント
50.読者からの質問に答えて