このコーナーは2003年4月より産経新聞に連載されたものを転載しています。
2004年01月掲載
38.サプリメントは有効?
 野菜や果物の栄養成分を、手軽にサプリメントでとってもがんが予防できる・・・。そう思っていたら大間違いです。その理由を、東北大学医学部の坪野吉孝助教授に聞きました。
サプリメントでは、がん予防できないのですか
 「緑黄色野菜の成分で有名な“β-カロチン”の研究では、予防どころかがんが増えてしまったのです。フィンランドの男性喫煙者約3万人の『ATBC スタディ』研究です。β-カロチンのサプリメントで喫煙者の肺がんを予防しようとしたのですが、発生率が18%も上昇しました。その後、アメリカの喫煙者約2万人の『CARET』研究でも、28%も上がったと報告されています」
β-カロチンのサプリメントは、飲まない方がよいということですか
 「β-カロチンが注目されたのは、野菜や果物を多く食べている人たちに、がんの発生率が低いということから。実際に食事からβ-カロチンを多くとって、血中濃度が高い人たちでも、がんの発生率や死亡率が低いと確認されています。それなのにサプリメントは逆効果だったので、1997(平成9)年に世界がん研究基金とアメリカがん研究機関は『がん予防のための14か条』で、野菜や果物を食べたり、肥満に気をつけていれば、がん予防のためにサプリメントを飲むことは恐らく不要だと提言しています」
さらに悪い研究結果がでたそうですね
 「昨年報告された、先進国8か国計約14万人の臨床試験のまとめでは、がん発生率だけでなく、総死亡率も高くなっていました。言い換えれば、寿命が短くなったということです。それでアメリカの厚生省は、昨年7月に『サプリメントについてのガイドライン』で、『がんや循環器疾患のために、β-カロチンを飲むべきではない』という方針を打ち出したのです」
β-カロチンはとらない方がよいのですか
 「いいえ違います。サプリメントではなく、食事からとってほしいということです。サプリメントは健康によく、食品だから害はないというイメージがありますが、簡単に食事の10倍以上もとれてしまうので危険なのです。サプリメントを飲んで、健康に気を配っているつもりでも、実は命を縮める可能性があることを忘れないでほしいですね。そして、健康を考えるのなら、有効性だけでなく安全性を重視してください」

(取材/文 (株)エフシージー総合研究所 大戸一恵)

目 次
1.治療から予防へ
2.食習慣と寿命
3.健康日本21と栄養
4.「一無、二少、三多」の
  ライフスタイル

5.健康と運動
6.健康と休養
7.健康とアルコール
8.健康とたばこ
肥 満
9.肥満とは
10.肥満のメカニズム
11.肥満と病気
12.肥満の予防
糖尿病
13.糖尿病とは
14.2型糖尿病と生活習慣
15.糖尿病予備軍
16.血糖コントロールと食事
17.合併症・小児糖尿病
  ・妊娠糖尿病

高脂血症
18.高脂血症と生活習慣
19.高脂血症と動脈硬化
20.動脈硬化になりやすい場合
21.中性脂肪と動脈硬化の関係
高血圧
22.血圧とは
23.高血圧とは
24.高血圧と生活習慣
25.高血圧と高脂血症
脳卒中
26.脳卒中とは
27.危険因子
28.予防法
29.一過性脳虚血発作
虚血性心疾患
30.狭心症と心筋梗塞
31.危険因子
32.アルコールは毒?薬?
33.虚血性心疾患と生活習慣
が ん
34.がんの現状
35.がん予防と生活習慣
36.健康情報の信頼性
37.野菜と果物、
  何をどれだけ食べれはよい?

38.サプリメントは有効?
39.肺がん 禁煙と果物の勧め
40.胃がん 減塩と検診の勧め
41.大腸がん 原因の半分は
  たばことアルコール!

42.乳がん(1)肥満とアルコール
43.乳がん(2)
  女性のがん予防と検診

44.がんの再発や二次がん
  がんになってからの食事

45.がんの健康情報
高尿酸血症
46.尿酸とは
47.動脈硬化との関係
48.食生活のポイント
49.生活習慣のポイント
50.読者からの質問に答えて